「移植を受けてから、手のイボがどんどん増える」「生物学的製剤を始めてから、帯状疱疹になった」「顔にできた小さなかさぶたが治らない」。免疫を抑える薬は、病気の治療に欠かせない一方で、皮膚の感染や腫瘍が起こりやすくなります。どんな皮膚トラブルが起こりやすいのか、気をつけるポイント、受診の目安を説明します。
免疫を抑える治療と皮膚の関係
次のような治療を受けている方が対象になります。
- 臓器移植後の免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸など)
- 関節リウマチ・炎症性腸疾患・乾癬・アトピー性皮膚炎などで使う生物学的製剤、JAK阻害薬、メトトレキサート
- ステロイドの飲み薬を長く使っている
- 抗がん剤治療中
免疫は、ウイルスや細菌、カビ(真菌)から体を守るだけでなく、紫外線で傷ついた皮膚の細胞ががん化するのを防ぐ働きもしています。免疫が抑えられると、この2つの守りが弱くなります。どの程度起こりやすくなるかは薬の種類や量、期間によって大きく違い、臓器移植後の方で特に注意が必要とされています。
起こりやすい皮膚トラブル
| トラブル | 特徴 | 気をつけるポイント |
|---|---|---|
| 帯状疱疹 | 体の片側にピリピリした痛みと帯状の水ぶくれ | 重くなりやすい、広い範囲に出ることがある。早く治療を始めるほどよい |
| ヘルペス(口唇・陰部) | 小さな水ぶくれが繰り返す | 治りにくい、範囲が広がることがある |
| イボ(ウイルス性) | 手足・顔に増える | 数が多く、治療に時間がかかる |
| 水虫・爪水虫・カンジダ | 足の皮むけ、爪の濁り、皮膚のこすれる場所の赤み | 広がりやすい。足の傷から細菌感染の入り口になる |
| 蜂窩織炎などの細菌感染 | 皮膚が赤く腫れて熱を持つ | 熱が出にくく、気づきにくいことがある |
| 皮膚がん(有棘細胞がん・基底細胞がんなど) | 顔・耳・手の甲などに、治らないかさぶた、盛り上がるできもの | 臓器移植後の方では特に起こりやすい。紫外線が大きく関わる |
| 薬による皮膚症状 | ニキビのような発疹、多毛、歯ぐきの腫れ、乾癬のような発疹など | 薬の種類で出方が違う |
免疫が抑えられていると、ふだんなら軽く済む皮膚の感染も、見た目が非典型的になったり、広がるのが早かったりします。「たいしたことはない」と自己判断せず、早めに相談することが大切です。
予防のためにできること
紫外線対策
皮膚がんを防ぐうえで、もっとも大切なのが紫外線対策です。日焼け止め、帽子、長袖を日常的に使い、日差しの強い時間帯の長時間の屋外活動を避けます。顔・耳・首の後ろ・手の甲・頭(髪の薄い部分)は特に注意が必要です。
定期的なセルフチェック
- 月に1回、明るい場所で全身の皮膚を見る(背中は鏡や家族の手を借りて)
- 新しいできもの、大きくなるできもの、治らない傷やかさぶたがないか
- 足の指の間や爪の色・形の変化
- 気になるものはスマートフォンで写真を撮り、変化を比べる
日常のケア
- 保湿を続ける:乾燥によるひび割れは感染の入り口になります
- 足を毎日洗って乾かす:水虫と、そこからの細菌感染を防ぎます
- 小さな傷もきれいに洗って保護する
ワクチン
帯状疱疹には、不活化(組換え)タイプのワクチンがあり、免疫を抑える治療中の方でも接種を検討できるとされています。一方、生ワクチンは使えない場合があります。接種の時期は、主治医と相談して決めてください。
治療の考え方
感染症は、早めに十分な量の薬で治療するのが基本です。帯状疱疹は抗ウイルス薬をできるだけ早く始めます。イボや水虫は、ふだんより治療期間が長くかかることがあります。皮膚がんは、早く見つけて小さいうちに切除すれば、治療の負担が小さく済みます。
皮膚トラブルがあっても、免疫を抑える薬を自己判断で減らしたりやめたりしないでください。移植した臓器や、もとの病気に影響することがあります。皮膚科から主治医へ情報を伝え、連携して治療します。
よくある質問
Q. 皮膚科には、どのくらいの間隔でかかればいいですか?
A. 臓器移植後の方では、皮膚の定期的な診察がすすめられています。それ以外の治療の方も、気になる変化があればその都度相談し、皮膚がんのリスクが高い方は定期的に診てもらうと安心です。間隔は治療内容や皮膚の状態に合わせて相談して決めます。
Q. 受診するとき、何を伝えればいいですか?
A. 使っている薬の名前(お薬手帳)、免疫を抑える治療を受けている理由、始めた時期を伝えてください。診断や治療の選び方が変わります。
受診の目安
- 体の片側にピリピリした痛みや水ぶくれが出た(帯状疱疹の可能性。早めの治療が大切です)
- イボや水虫が増える、治療しても広がる
- 顔・耳・手の甲などに、1か月以上治らないかさぶたや、大きくなるできものがある
- 新しい薬を始めてから発疹が出た
皮膚が急に赤く腫れて広がる、高い熱が出た、ぐったりしている場合は、その日のうちに受診してください。免疫を抑える治療中は重症化しやすいため、夜間や休日でも救急安心センター(#7119)に相談してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ヘルペスと帯状疱疹(確認日: 2026-10-31)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A イボ・ミズイボ(確認日: 2026-10-31)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 皮膚悪性腫瘍(確認日: 2026-10-31)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

