「糖尿病の新しい薬を飲み始めてから、陰部がかゆい」「おりものが増えて、外陰部が赤くヒリヒリする」「男性で、亀頭や陰嚢が赤くかゆい」。SGLT2阻害薬は、糖尿病のほか心臓や腎臓の病気でも使われる薬で、陰部の皮膚トラブルが起こりやすいことが知られています。原因と見分け方、薬を続けながらできる対策、急いで受診すべきサインを説明します。
なぜ陰部にトラブルが起きやすいのか(仕組み)
SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジンなど)は、腎臓で糖が体に戻るのを抑え、余分な糖を尿と一緒に体の外へ出すことで血糖を下げる薬です。
その結果、尿に含まれる糖が増え、尿が触れる陰部の皮膚や粘膜に、糖を栄養にするカンジダ(カビの一種)が増えやすくなります。陰部は湿りやすく蒸れやすい場所でもあるため、さらに増えやすい環境になります。女性の外陰部・腟、男性の亀頭や包皮に起こりやすく、飲み始めて比較的早い時期に出ることが多いとされています。
症状と見分け方
| 考えられる原因 | 症状の特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| カンジダ症(外陰腟・亀頭包皮・皮膚) | 赤み、かゆみ、ヒリヒリ感。女性は白い酒かすのようなおりもの。男性は亀頭の赤みと白いカス | もっとも多い。赤みの周りに小さな赤いブツブツや皮むけが点々と出ることがある |
| 股部白癬(いんきんたむし) | 太ももの付け根に、縁が赤く盛り上がった輪のような赤み | 陰嚢や外陰部の中心には出にくい。足の水虫があることが多い |
| かぶれ(接触皮膚炎) | ナプキン・おりものシート・洗浄剤が触れる場所に一致した赤み・かゆみ | 使うものを変えると良くなる |
| 尿路感染症 | 排尿時の痛み、頻尿、残尿感 | 皮膚ではなく尿の症状が中心 |
| 会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽) | 陰部・肛門・会陰の強い痛み、腫れ、赤紫色の変化、発熱、だるさ | まれだが命に関わる。見た目より痛みが強いのが特徴。すぐに救急受診 |
カンジダと白癬は見た目が似ていることがありますが、使う薬が違う場合があり、ステロイドの塗り薬を自己判断で使うと悪化することもあります。皮膚の一部を顕微鏡で調べる検査(真菌検査)で原因を確かめてから治療するのが確実です。
治療
カンジダ症は、抗真菌薬の塗り薬で治療します。女性の腟カンジダには腟錠を使うことがあり、婦人科で治療します。男性の亀頭包皮炎や、陰嚢・股の皮膚の症状は皮膚科や泌尿器科で診ます。
SGLT2阻害薬は、多くの場合そのまま続けながら治療できます。繰り返して生活に支障がある場合や、症状が重い場合は、糖尿病の主治医が薬を見直すことがあります。自己判断で薬をやめると血糖が上がるため、必ず主治医に相談してください。
予防のためにできること
- 排尿の後は、陰部をやさしく拭いて清潔に保つ。女性は前から後ろへ拭きます。男性は包皮の内側に尿や汚れが残らないようにします
- 入浴時は、ぬるま湯でやさしく洗う。石けんでのゴシゴシ洗いや、洗浄剤の使いすぎは刺激になります
- 通気性のよい綿の下着を選び、蒸れを避ける。汗をかいたら早めに着替えます
- 水分をこまめにとる。この薬は尿が増えるため、脱水にも注意が必要です
- 血糖の管理を続ける。血糖が高い状態が続くと、カンジダや細菌の感染全般が起こりやすくなります
- 足の水虫があれば治しておく。股の白癬の原因になります
よくある質問
Q. かゆみが出たら、薬をやめたほうがいいですか?
A. 自己判断でやめないでください。多くは塗り薬で治り、薬を続けられます。症状が出たことを主治医に伝え、皮膚科や婦人科で治療を受けてください。
Q. 市販のカンジダの薬を使ってもいいですか?
A. 以前に医師からカンジダと診断されたことがあり、同じ症状を繰り返している女性は、市販の腟カンジダの薬を使える場合があります。初めての症状、男性、糖尿病で治療中の方は、市販薬を使う前に受診して原因を確かめてください。
受診の目安
- SGLT2阻害薬を飲み始めてから、陰部のかゆみ・赤み・ヒリヒリが続く
- おりものの量や性状が変わった、亀頭に赤みと白いカスがある
- 市販薬を使っても数日で良くならない、繰り返す
- 排尿時に痛む、頻尿がある
陰部・肛門・会陰に強い痛みや腫れがあり、皮膚の色が赤紫に変わる、発熱やだるさを伴う場合は、まれでも命に関わる感染症の可能性があるため、すぐに救急外来を受診してください。判断に迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(確認日: 2026-10-31)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-31)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

