「抗がん剤を始めてから、手のひらがヒリヒリする」「足の裏が赤く硬くなって歩くと痛い」。手足症候群は、がん治療を続けるうえで生活の質に大きく関わる副作用です。早めに対処すれば、治療を続けながらつきあえることが多い症状です。仕組みと予防、悪化したときの対応を説明します。
手足症候群とは(仕組み)
手のひらや足の裏は、歩く・物を握るなど、日常的に圧力や摩擦がかかる場所です。一部の抗がん剤は、こうした場所の皮膚の細胞や細い血管に影響し、炎症や皮膚の厚み(角化)を起こすと考えられています。
手足症候群が起こりやすいとされる薬には、次のようなものがあります(いずれも一般名)。
- フッ化ピリミジン系の抗がん剤(カペシタビンなど):手のひら・足の裏全体が赤くなり、つやが出て、皮がむけるタイプが多い
- 複数のキナーゼを阻害する分子標的薬(ソラフェニブ、レゴラフェニブ、スニチニブなど):かかと・指の付け根など圧がかかる場所に、硬く厚い角化や水ぶくれが出るタイプが多い
同じ薬でも、出る時期や強さには個人差があります。多くは治療開始から数週間以内に始まります。
症状・見分け方(重症度の目安)
| 程度 | 症状 | 生活への影響 | 対応の目安 |
|---|---|---|---|
| 軽度 | しびれ・チクチク感、痛みのない赤み、軽いむくみ、皮膚の硬さ | ほとんどない | 保湿・摩擦を避けるケアを続け、次の受診時に伝える |
| 中等度 | 痛みを伴う赤み・腫れ、皮むけ、ひび割れ、水ぶくれ | 家事・ボタンかけ・長く歩くのがつらい | 早めに治療チームへ連絡。塗り薬の追加や薬の調整を相談 |
| 重度 | 強い痛み、ただれ、大きな水ぶくれ | 身の回りのことができない | すぐに連絡。治療の休止や減量が検討される |
手足の赤みは、ほかの薬疹や水虫、湿疹でも起こります。いつから、どこに、どんな症状が出たかを記録しておくと、原因の判断に役立ちます。
予防とセルフケア
手足症候群は、症状が出る前からケアを始めるほど悪化しにくいとされています。
保湿
- 尿素配合やヘパリン類似物質などの保湿剤を、1日数回、手のひら・足の裏・指の間まで塗ります
- 入浴後や手洗いの後など、皮膚が湿っているうちに塗ると効果的です
- 角化が出やすい薬では、かかとや指の付け根の厚くなった皮膚を、尿素配合の保湿剤でやわらかく保ちます。ただし、ひび割れやただれがある場所では尿素がしみることがあるため、その場合は別の保湿剤に切り替えます
摩擦・圧迫を減らす
- 足に合ったやわらかい靴と、厚手で締め付けの弱い靴下を選びます。中敷き(インソール)でかかとの圧を分散させるのも有効です
- 長時間の歩行・立ち仕事、ジョギングを控えます
- 重い荷物を持つ、ぞうきんを強く絞る、包丁を長時間使うといった、手のひらに圧がかかる作業を減らします
- 家事では綿の手袋の上からゴム手袋を使い、熱いお湯・洗剤に直接触れないようにします
熱と刺激を避ける
熱いお湯での長湯、手足を温めるカイロの直当ては、赤みや痛みを強めることがあります。ぬるめのお湯にし、ほてるときは冷たいタオルで冷やすと楽になります。
医療機関での治療
赤みや痛みが出たら、炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)を使います。厚い角化には、角質をやわらかくする塗り薬を使い、必要に応じて皮膚科で厚い部分を削ります。症状の程度によっては、がん治療を担当する医師が薬の量や間隔を調整します。自己判断で抗がん剤を中止・減量しないでください。
よくある質問
Q. 手足症候群が出たら、がん治療は続けられませんか?
A. 多くの場合、ケアと塗り薬、必要に応じた薬の量の調整で、治療を続けながら対処できます。我慢して悪化させるより、早めに伝えるほうが治療を続けやすくなります。
Q. 爪の周りも腫れてきました。同じ副作用ですか?
A. 薬によっては、爪の周りの炎症(爪囲炎)や爪の変形が起こることがあります。手足症候群とは対処が少し違うため、治療チームか皮膚科に相談してください。
Q. 治療が終われば元に戻りますか?
A. 多くは、原因の薬を中止・終了すると、数週間ほどで改善に向かいます。色素沈着が残る場合もありますが、時間とともに薄くなっていくことが一般的です。
受診の目安
- 手足の赤み・腫れに痛みが加わってきた
- 皮むけ・ひび割れ・水ぶくれが出てきた
- 痛みで歩く・物を持つ・ボタンをかけるのがつらい
- 傷から膿が出る、赤みが広がる、熱がある(感染の可能性)
がん治療中の体調の変化は、まず治療を受けている医療機関の連絡先に相談してください。皮膚の症状について、皮膚科と連携して対応することもできます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-11-01)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-11-01)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

