「薬を始めてから、シャンプーのときの抜け毛が増えた」「むしろ薄くなった気がする」「このまま続けて大丈夫なのか不安」——AGA(男性型脱毛症)の治療を始めたあとに、こうした不安を感じることがあります。
治療を始めたあとの抜け毛には、治療の過程で一時的に起こるものと、別の原因によるものがあります。この記事では、初期脱毛の仕組み、どう受け止めて経過を見ればよいか、そして相談したほうがよいサインを整理します。
初期脱毛とは(なぜ抜け毛が増えるのか)
髪の毛は、伸び続ける「成長期」、成長が止まる「退行期」、次の毛に備えて休む「休止期」を繰り返しています(毛周期)。日本皮膚科学会の一般向け解説では、成長期はおおむね2〜6年、休止期は2〜3か月ほどとされ、休止期の毛は次の成長期の準備ができると抜けます。
AGAでは、男性ホルモンの影響で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包(毛をつくる袋状の組織)が多くなります。そのため、太く長く育つ前に抜ける細い毛が増えていきます。
治療の始めに、休止期の毛がまとまって抜けることがあると説明されています。なぜ起こるのかは、すべてが分かっているわけではありません。これが一般に「初期脱毛」と呼ばれるものです。正式な病名ではなく、治療の始めに抜け毛が増える状態を指す呼び方です。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、ミノキシジル外用の始めに、男女ともに休止期脱毛(休止期の毛がまとまって抜けること)がみられることがあり、それが外用をやめてしまうことにつながるおそれがあるため、患者さんへの説明が必要だとしています。
どの薬で起こる?時期と量の考え方
| 治療 | 初期脱毛との関係 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| ミノキシジル外用(塗り薬) | ガイドラインで、外用の始めに休止期脱毛がみられることがあると説明されています | 市販の発毛剤にも同じ成分のものがあります。塗った部分の赤み・かゆみは初期脱毛とは別の反応です |
| フィナステリド・デュタステリド(飲み薬) | 飲み始めに抜け毛が増えたと感じる方もいますが、ガイドラインで初期の休止期脱毛について説明しているのはミノキシジル外用です | 抜け毛が増えた場合も、自己判断でやめずに処方した医師に相談してください |
| ミノキシジルの内服(国内未承認) | 日本では脱毛症の治療薬として承認されておらず、ガイドラインでは推奨度D(「行うべきではない」)とされています | 動悸・むくみなどの副作用が知られています。抜け毛だけでなく体の症状にも注意が必要です |
抜け毛が増える期間は、休止期の長さ(2〜3か月ほど)を考えると、ある程度の期間続くことがあります。ただし、何週間・何か月で終わると一律に言えるものではなく、抜け方にも個人差があります。
抜け毛の量は、健康な状態でも1日100本程度までは抜けるとされ、季節や洗髪の間隔によっても変わります。毎日の本数を数えて一喜一憂するより、次の章の方法で経過を記録するほうが判断に役立ちます。
抜け毛の増減だけでは、効果は判断できません
「抜け毛が増えた=薬が効き始めた」とも、「抜け毛が増えた=薬が合っていない」とも、抜け毛だけでは言い切れません。初期脱毛が目立たないまま経過する方もいるため、起きなかったから効いていない、ということでもありません。
ガイドラインでは、フィナステリドについて「少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである」としています。効果は、抜け毛の本数ではなく、数か月単位での毛の太さや地肌の見え方の変化で見ていくのが基本です。
経過を見るときは、月に1回ほど、同じ照明・同じ角度・同じ髪の長さで頭頂部や生え際の写真を撮っておくと、変化を比べやすくなります。記憶や鏡の印象だけでは、不安なときほど悪く見えやすいためです。
また、ガイドラインはフィナステリドについて「内服を中止すると効果は消失する」としています。抜け毛が気になって自己判断でやめると、効果を確かめないままになってしまうため、飲み薬をやめる・減らす前に、処方した医師に相談してください。
初期脱毛以外の原因との見分け方
治療中の抜け毛が、すべて初期脱毛とは限りません。次のような原因が重なっていることもあります。
| 考えられる原因 | 抜け方・頭皮の様子 | 手がかり |
|---|---|---|
| 初期脱毛 | 治療を始めてから、頭全体やAGAで薄くなっている部分の抜け毛が増える。頭皮に赤みはない | 治療を始めた時期と重なる |
| 休止期脱毛 | 頭全体の抜け毛が増える | 数か月前の発熱・手術・急なダイエットなどがきっかけになることがある |
| 円形脱毛症 | 境目のはっきりした丸い脱毛や、まだらな抜け方 | AGAの薬では治らず、別の治療が必要 |
| 頭皮の炎症・かぶれ | 赤み・かゆみ・フケを伴う | 塗り薬を使い始めてから出た場合は、薬や基剤(薬を溶かしている液)による刺激のことがある |
| 体の病気に伴う脱毛 | 頭全体が薄くなる | 甲状腺の病気や亜鉛不足などで抜け毛が起こることがある。だるさや体重の変化も手がかりになる |
見た目だけでは区別しにくいこともあります。治療を始める前に、AGAかどうかを含めて診断を受けておくと、あとで抜け毛が増えたときにも原因を考えやすくなります。
相談・受診の目安
次のような場合は、自己判断で続けたりやめたりせず、処方を受けた医療機関に相談してください。
- 早めに相談を — 抜け毛の多い状態が長く続く、治療前よりはっきり薄くなってきた
- 早めに受診を — 丸く抜けた部分がある、まだらに抜ける、眉毛やひげも抜けてきた
- 受診を — 塗り薬を使い始めてから、頭皮の赤み・かゆみ・フケが出た
- 早めに相談を — 性欲の低下など、薬の副作用と思われる症状がある
- すぐに受診を — ミノキシジルの内服(国内未承認)を使っていて、動悸、息切れ、急なむくみや体重の増加がある
胸の痛みや強い息苦しさがあるときは、ためらわずに救急を受診してください。受診すべきか迷うときは、救急安心センター(#7119)などの相談窓口も利用できます。
※AGAの治療の多くは自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。主なリスクとして、飲み薬では性機能に関する症状や肝機能の変化、塗り薬では頭皮のかゆみ・かぶれなどが知られています。
よくある質問
初期脱毛のあいだは、薬を減らしたり休んだりしたほうがいいですか?
自己判断で量や間隔を変えないでください。量を変えると、効果がどの程度保たれているのか分からなくなるためです。抜け毛がつらいときは、その気持ちも含めて処方した医師に伝え、続け方を一緒に決めましょう。
市販の発毛剤でも、初期脱毛は起こりますか?
市販のミノキシジル配合の発毛剤でも、使い始めに抜け毛が増えることがあります。製品の説明書を確認し、抜け毛が長く続く、頭皮がかぶれるといった場合は、使用を続けるかどうかを医師や薬剤師に相談してください。
抜け毛が怖いので、シャンプーの回数を減らしてもいいですか?
洗う回数を減らしても、抜ける段階に入った毛が抜けなくなるわけではありません。洗わない日が続くと皮脂や汚れがたまり、頭皮のかゆみやフケの原因になることもあります。爪を立てず、自分の頭皮に合った頻度でやさしく洗いましょう。
治療を始める前に、初期脱毛を防ぐ方法はありますか?
初期脱毛を確実に防ぐ方法は知られていません。「起こることがある」と知ったうえで始めることと、始める前の写真を残しておくことが、途中で不安になったときの支えになります。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(日皮会誌 127巻13号 2763-2777頁・下の「ガイドライン一覧」から閲覧できます)(確認日: 2026-11-04)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 脱毛症(確認日: 2026-11-04)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-11-04)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

