「頭のフケが止まらず、厚いかさぶたのようになる」「ひじやひざに、銀白色の粉をふいた赤い盛り上がりがある」「爪に小さなくぼみができて、ボロボロしてきた」——これらが同時に見られるとき、乾癬(かんせん・乾癬症)という疾患が考えられます。
名称の音から「感染症ではないか」と心配される方が非常に多いのですが、乾癬は感染症ではなく、人にうつりません。プール・温泉・タオルの共用・家族との接触で移ることはありません。この点は最初にはっきりお伝えしておきたい部分です。
乾癬とはどういう状態か
健康な皮膚では、表皮の細胞が生まれてから角層としてはがれ落ちるまでに、およそ4週間かかります。乾癬ではこのサイクルが数日にまで短縮され、未熟な角層が次々と積み上がっていきます。これが、白く厚く盛り上がった鱗屑(りんせつ)の正体です。
背景にあるのは免疫の働きの異常です。免疫細胞が出す物質が表皮の細胞を過剰に増やし、同時に真皮の血管が広がって赤みが生じます。体質(遺伝的な要素)に、環境の要因が重なって発症すると考えられています。
症状の特徴
- 境界のはっきりした赤い盛り上がりに、銀白色のフケ状の鱗屑が付着する
- 鱗屑をはがすと、点状の出血が見られることがあります(自分で剥がさないでください)
- 好発部位はひじ・ひざの外側、頭皮、腰やお尻、爪。こすれる部位に出やすい傾向があります
- 刺激を受けた場所に新しく出ることがあります(ケブネル現象。ひっかき傷・やけどのあと・下着の当たる線などに沿って出ます)
- かゆみは半数程度の方にあり、まったくない方もいます
- 爪の変化 — 表面の小さなくぼみ(点状陥凹)、爪が濁って厚くなる、爪の下に黄色い斑点が見える、爪が浮いてはがれる
- 関節の症状 — 一部の方では関節の痛みや腫れ、朝のこわばりを伴うことがあります(関節症性乾癬)
紛らわしい病気との見分け
| 疾患 | 見た目 | 手がかり |
|---|---|---|
| 乾癬 | 境界明瞭な赤い盛り上がり+銀白色の厚い鱗屑 | ひじ・ひざ・頭皮・腰。爪のくぼみを伴うことがある |
| 脂漏性皮膚炎 | 黄色っぽくべたつく細かなフケ | 小鼻のわき・眉・生え際。鱗屑が薄い |
| 湿疹・アトピー性皮膚炎 | 境界がぼやけた赤み、じくじく | ひじ・ひざの内側に出る。かゆみが強い |
| 体部白癬(たむし) | 輪状に広がり、辺縁が盛り上がる | 中心が治って見える。真菌検査で確認できる |
| 爪白癬(爪水虫) | 爪が白く濁り厚くなる | 足に多い。真菌検査で菌が確認できる |
| ジベル薔薇色粃糠疹 | 楕円形の淡い紅斑が体幹に多発 | 数週間〜数か月で自然に治まる |
とくに区別が必要なのが、頭皮では脂漏性皮膚炎、爪では爪水虫です。爪の変化については、真菌検査で菌の有無を確認することで整理できます。見た目だけでは判断が難しいことが多く、必要に応じて皮膚の一部を採って調べる検査(生検)が行われることもあります。
悪化させる要因
- 皮膚への刺激 — 掻く、こする、締めつける。鱗屑を無理にはがすのは逆効果です
- 感染症 — 扁桃炎などをきっかけに、小さな発疹が散らばるタイプが出ることがあります
- ストレス・睡眠不足
- 喫煙・過度の飲酒
- 肥満・メタボリックシンドローム — 乾癬は皮膚だけの問題ではなく、生活習慣病との関連が指摘されています
- 一部の薬 — 開始後に悪化した場合は処方元に相談してください
- 乾燥 — 冬に悪化しやすく、適度な日光で軽快する方もいます
治療の選択肢
乾癬の治療は近年大きく広がり、症状の範囲・部位・関節症状の有無・生活への影響の大きさに応じて段階的に選ばれます。
| 段階 | 方法 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 外用療法 | ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、両者の配合剤 | 基本の治療。範囲が限られる場合の中心 |
| 光線療法 | 紫外線を治療用に照射する | 範囲が広い場合。通院が必要 |
| 内服療法 | 免疫やシグナル伝達に働く内服薬 | 外用で不十分な場合。定期的な検査が必要 |
| 注射療法(生物学的製剤) | 炎症を起こす物質を狙って抑える | 中等症以上や関節症状がある場合。使用できる施設の要件がある |
いずれも、症状が落ち着いた状態を保つことを目標とする治療です。「一度で終わり」ではなく、良い状態を維持しながら、生活への影響を小さくしていく考え方になります。自己判断で外用薬を中断すると、悪化してから戻すのに時間がかかることがあるため、減らし方は医師と相談しながら進めてください。
保湿も土台として重要です。乾燥は鱗屑と刺激感を強めるため、外用薬と並行して保湿剤を続けることが勧められます。
日常生活での工夫
- 皮膚をこすらない。ナイロンタオルを使わず、手でやさしく洗う
- 鱗屑を無理にはがさない。保湿でふやかして自然にはがれるのを待つ
- 頭皮は爪を立てて洗わない
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 体重・血圧・血糖の管理を意識する
- 入浴はぬるめの湯で、長湯を避ける
- 関節の痛みやこわばりが出たら早めに伝える
周囲の誤解によるつらさを感じる方も少なくありません。繰り返しになりますが、乾癬は人にうつる病気ではありません。この点は、ご家族や職場に説明する際の土台になります。
受診の目安
- フケが厚く、赤い盛り上がりを伴う状態が1か月以上続いている
- ひじ・ひざ・腰・頭皮に、境界のはっきりした赤い皮疹がある
- 爪に小さなくぼみができた/爪が厚く濁ってきた
- 関節の痛み・腫れ・朝のこわばりがある(早めの評価が望まれます)
- 市販薬や保湿剤で1か月経っても変わらない
- 皮膚の症状が広い範囲に急速に広がった
全身が真っ赤になって皮がむける、膿を持った発疹が全身に多発して発熱をともなう、といった場合は入院が必要になることがある状態です。夜間・休日で判断に迷うときは、救急安心センター事業(#7119)などの相談窓口を利用してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン・指針一覧(確認日: 2026-08-30)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(一覧)(確認日: 2026-08-30)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「爪」(確認日: 2026-08-30)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

