「家族が次々にかゆがりだした」「保湿もステロイドも効かず、夜になるとかゆくて眠れない」「施設に入っている親の背中に発疹が出ている」——疥癬は、湿疹やあせもとして扱われて長引くことが少なくない病気です。清潔にしていないから起こるものではなく、接触があれば誰にでも起こります。診断がつけば治療の方針がはっきりするため、疑うこと自体に価値があります。
疥癬とは何か
原因はヒゼンダニ(疥癬虫)という0.4mmほどのダニです。メスの成虫が皮膚のいちばん外側(角層)にトンネル(疥癬トンネル)を掘り、卵を産みます。ダニそのものやその排泄物に対するアレルギー反応として、強いかゆみが起こります。
感染してから症状が出るまでには1か月ほどの潜伏期間があります。このずれがあるため、「心当たりがない」と感じても不思議ではありません。うつり方は次の通りです。
- 直接の肌の接触(同じ布団で寝る、介護・入浴介助、長時間の接触)
- 寝具・衣類・タオルの共用(通常疥癬では頻度は高くありませんが、角化型では起こりやすくなります)
疥癬には2つのタイプがあります。通常疥癬はダニの数が数十匹程度で、感染力は限られます。一方、免疫の働きが落ちている方などに起こる角化型疥癬(かつての「ノルウェー疥癬」)では、ダニが桁違いに多く、はがれ落ちた角質からも感染が広がるため、施設内で集団発生することがあります。
症状と、湿疹との見分け
- 夜間に強くなるかゆみ — 布団に入って体が温まると激しくなり、眠れないことがあります
- 好発部位 — 指の間、手首の内側、ひじ、わきの下、腹部、太ももの内側、外陰部。顔と頭は通常侵されません(乳幼児・高齢者では例外があります)
- 疥癬トンネル — 手のひら・指の間に、細く曲がりくねった線状の皮疹が見られます
- 小さな赤いブツブツ — 体幹や太ももに散らばります
- 陰部や腋のしこり — 男性では陰嚢に赤褐色の硬い結節ができることがあります
| 状態 | かゆみの出方 | 手がかり |
|---|---|---|
| 疥癬 | 夜間に強い。持続する | 指の間・手首のトンネル。周囲にも同じ症状の人がいる |
| 湿疹・皮膚炎 | 刺激や乾燥に応じて変動 | ステロイド外用で軽快することが多い |
| あせも | 汗をかいたとき | 汗のたまる場所。涼しくすると軽快 |
| じんましん | 数時間で出て消える | 皮疹があとを残さず移動する |
| 虫さされ | 刺された箇所のみ | 露出部に多い。数はかぎられる |
| 角化型疥癬 | かゆみが乏しいこともある | 厚い灰色のかさぶた状。感染力が非常に強い |
診断は、皮疹を採取して顕微鏡でダニや卵を確認する、ダーモスコープでトンネルを観察する、といった方法で行われます。ダニが見つからないこともあるため、症状の分布・周囲の発症状況を含めて総合的に判断されます。「周りにも同じかゆみの人がいる」という情報は診断に直結する重要な手がかりなので、受診時に必ず伝えてください。
治療と、家庭・施設での対応
- 治療薬 — 内服薬(イベルメクチン)や外用薬(フェノトリン、イオウ剤、クロタミトンなど)が用いられます。決められた間隔での再投与が必要になることがあり、自己判断で中断しないことが治療の要点です
- かゆみは治療後しばらく残る — ダニが駆除された後も、アレルギー反応として数週間かゆみが続くことがあります。かゆみが残る=治っていない、とは限りません
- 同居家族・接触者の確認 — 症状がなくても潜伏期の可能性があるため、同時期の確認や治療が勧められることがあります
- 寝具・衣類 — 通常疥癬では、通常の洗濯と乾燥で差し支えないとされています。角化型では、50度以上の湯に10分以上つけてから洗う、こまめに交換するといった対応がとられます
- 掃除 — 角化型では、はがれ落ちた角質にダニが含まれるため、床の清掃が重要になります
市販のかゆみ止めやステロイド外用だけでは治りません。むしろステロイドの単独使用で、皮疹が分かりにくくなったり、角化型に移行したりすることがあります。
受診の目安
- かゆみが2週間以上続き、夜に強くなる
- 家族や職場・施設に同じ症状の人がいる
- 湿疹の治療を受けているのに改善しない・広がっている
- 指の間や手首に線状の皮疹がある
- 介護・医療の現場で接触があり、かゆみが出てきた
- 厚いかさぶた状の皮膚がある(角化型が疑われ、周囲への対応が急がれます)
疥癬は診断がつけば方針が決まる病気です。周囲への広がりを止める意味でも、早めに確認することが本人にも家族にも負担が少なくなります。あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、開業後はかゆみの続く皮疹の診察に対応する予定です。
よくある質問
Q. 検査でダニが見つからなければ、疥癬ではありませんか?
一度の検査でダニが見つからなくても、疥癬を否定することはできません。通常疥癬ではダニの数が少なく、採取する場所によっては検出できないためです。かゆみが続く、発疹が増える、身近な人もかゆがっているといった場合は、別の部位を調べたり、日を変えて再検査したりします。
Q. 塗り薬は、かゆい部分だけに塗ればよいですか?
ダニを駆除するための塗り薬は、かゆみや発疹のある場所だけに塗る薬ではありません。一般には首から下の全身に、症状のない皮膚も含めて塗ります。指の間、足、外陰部、背中などにも塗り残しがないようにすることが大切です。
Q. 布団やソファを捨てたり、家中を消毒したりする必要はありますか?
通常疥癬では、布団や家具を処分したり、家全体を繰り返し消毒したりする必要はありません。基本は患者さんの治療と、指示された寝具・衣類の管理です。部屋に殺虫剤を使うだけでは、皮膚に寄生しているダニの治療にはなりません。
ただし、角化型疥癬では、はがれ落ちた皮膚にも多くのダニが含まれるため、清掃や寝具の取り扱いに追加の対策が必要です。
Q. かゆみがなくなるまで、仕事や学校を休まなければいけませんか?
かゆみが残っていることだけを理由に、休み続ける必要があるとは限りません。治療後もかゆみだけが続くことがあるため、復帰時期は病型、治療の進み具合、周囲との肌の接触の有無などを踏まえて判断します。特に医療・介護・保育など、肌に触れる機会の多い仕事では、職場の責任者や感染対策担当者に相談してください。角化型疥癬では通常疥癬より厳重な対応が必要で、同じ基準では判断できません。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ダニ類による感染症」(確認日: 2026-09-01)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン・指針一覧(確認日: 2026-09-01)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

