爪の周りが赤く腫れて痛むときは、爪囲炎が考えられます。急に起こる細菌感染と、水仕事などの刺激で長引く炎症では、治療が異なります。
膿や強い痛みがある場合は自分で潰さず受診してください。小さな水ぶくれが集まる場合は、切開を避けるべきヘルペス性ひょう疽の可能性もあります。
「ささくれを取ったら、爪の横が腫れてきた」「深爪のあとからズキズキ痛む」「水仕事をするたび、爪の根元が赤くなる」——同じような見た目でも、原因は一つではありません。この記事では、爪囲炎の見分け方、原因に応じた治療、受診までに気をつけたいことを解説します。
爪囲炎・ひょう疽とは
爪の根元や両わきの皮膚に炎症が起こった状態を、爪囲炎(そういえん)といいます。細菌感染だけでなく、水や洗剤による刺激、かぶれなどでも起こります。
細菌による急性爪囲炎は、一般にひょう疽(ひょうそ)とも呼ばれます。急に赤く腫れて痛み、進行すると膿がたまりますが、初期には膿が見えないこともあります。
急性爪囲炎: 小さな傷をきっかけに起こる細菌感染
ささくれ、深爪、甘皮の処理、爪かみなどで爪の周囲に傷ができると、黄色ブドウ球菌などが入り込むことがあります。数日のうちに赤み・腫れ・熱感が現れ、ズキズキする痛みや膿を伴います。足の爪では、爪の端が皮膚に食い込む陥入爪がきっかけになることもあります。
慢性爪囲炎: 「長引く=カンジダ」とは限らない
水仕事や洗剤への接触などで爪の周囲のバリアが傷み、炎症が続くタイプです。一般に、6週間を超えて続くものを慢性爪囲炎と呼びます。ただし、受診するまで6週間待つ必要はありません。
慢性爪囲炎の多くは、刺激や湿疹が中心となる病気です。カンジダなどの真菌が関わることもありますが、すべてが真菌感染というわけではありません。治療では感染の有無だけでなく、水仕事や洗剤などの刺激を減らし、炎症そのものを抑えることが重要です。
見分けの手がかり
| 考えられる状態 | 主な特徴 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 急性細菌性爪囲炎・ひょう疽 | 数日で赤く腫れ、押すと痛い。ズキズキする痛みや膿を伴うことがある | 膿がたまっている場合は、薬だけでなく排膿の処置が必要になることがある |
| 慢性爪囲炎 | 爪の根元や脇の腫れを繰り返す。甘皮が失われ、爪に横筋や変形が出ることがある | 複数の指に起こることもある。「長引く=真菌が原因」とは限らない |
| ヘルペス性ひょう疽 | 痛みを伴う小さな水ぶくれが集まる。同じ場所に繰り返すこともある | 細菌性の膿だまりとは治療が異なり、自分で潰したり切開したりしない |
これらは見分ける手がかりであり、見た目だけで確定できるとは限りません。感染が疑われる場合には、必要に応じて細菌やウイルスの検査を行います。
足の親指で、爪の端が皮膚に食い込んで痛む場合は陥入爪を考えます。深爪によって爪の角が残り、食い込みを悪化させることがあります。また、ネイル製品などによるかぶれ(接触皮膚炎)や、爪が白く濁って厚くなる爪白癬(爪水虫)が関係することもあります。爪の変色や変形だけで「水虫」と決めつけず、必要に応じて真菌検査などで確認します。
原因によって治療は異なります
赤み・軽い痛みだけの急性爪囲炎
患部を清潔にし、爪の周囲への刺激を避けます。感染の程度に応じて、抗菌薬の塗り薬や飲み薬を検討します。軽い症状でも、セルフケアで1〜2日たっても改善しない場合や、途中で痛み・腫れが強くなる場合は受診してください。
膿がたまっている場合
膿が袋状にたまった状態では、医療機関で膿を出す処置が必要になることがあります。膿がたまっているのに、抗菌薬だけで治そうとすると改善しにくい場合があります。
一方、十分に排膿できた軽症例では、飲み薬の抗菌薬が必ず必要とは限りません。周囲への感染の広がり、発熱、糖尿病や免疫の低下などを踏まえて判断します。
慢性爪囲炎の場合
治療の中心は、爪の周囲を刺激から守ることと、炎症を抑えることです。医師の判断でステロイドなどの外用薬を使い、手荒れや湿疹も一緒に治療します。カンジダなどの関与が疑われる場合には抗真菌薬を検討しますが、「長引いているから」と抗真菌薬だけを使い続けるのではなく、刺激やかぶれが残っていないかも見直します。
ヘルペス性ひょう疽の場合
単純ヘルペスウイルスによるもので、細菌性の膿だまりとは異なります。水ぶくれを潰したり、膿を出すつもりで針を刺したりしないでください。発症からの時間や症状などに応じて、抗ウイルス薬を検討します。早い段階での治療が有効な場合があるため、水ぶくれが集まって出てきたときは早めに受診しましょう。
受診までのケアと、避けたいこと
やさしく洗い、濡れたままにしない
汚れは石けんと流水でやさしく落とし、その後は水分を拭き取ります。爪の周りを強くこすったり、清潔にしようとして何度も刺激を加えたりしないようにしましょう。周囲の乾燥した皮膚には保湿も役立ちます。
自分で針を刺す、切る、強く絞ることは避ける
膿のように見えても、実際にはヘルペス性ひょう疽など別の病気である可能性があります。自己判断で針を刺したり切ったりすると、感染を悪化させることもあります。水ぶくれや滲出液がある場合は、清潔なガーゼなどで保護してください。
深爪や甘皮の処理をいったんやめる
痛いところを取り除こうとして爪の端を深く切ったり、甘皮を切除・押し上げたりすると、さらに傷をつくることがあります。ささくれも引きちぎらず、爪の周囲を触り続けないことが大切です。
受診の目安
その日のうちに受診したい症状
以下のような症状がある場合は、早めの評価が必要です。
- 痛みがかなり強い
- 赤みや腫れが急速に広がっている
- 指の腹や指全体まで腫れている
- 指を曲げ伸ばししにくい
- 発熱している
- 赤い筋が手や腕の方向へ伸びている
夜間・休日でも症状が強い場合は、救急医療機関への相談を検討してください。
悪化する前に相談したい状態
膿が見える場合や、小さな水ぶくれが集まっている場合は、原因に応じた治療が必要です。糖尿病、血流障害、免疫を抑える治療などがある方は、軽い腫れでも早めに受診してください。
長引く・繰り返す場合も受診を
爪の根元の赤みが数週間続く、治療しても同じ指だけ改善しない、じくじくや出血を繰り返す場合は、「いつもの爪囲炎」と決めつけず、ほかの病気がないか確認することが大切です。
よくある質問
Q. ジェルネイルを付けたまま受診しても大丈夫ですか?
痛みや腫れがあるときは、ネイルを外す予約が取れるまで受診を遅らせる必要はありません。まずは付けた状態であることを伝えて受診してください。診察や処置のために除去が必要になることはありますが、無理にはがしたり、爪を強く削ったりすると、さらに爪や周囲の皮膚を傷める可能性があります。
Q. 腫れは治ったのに、爪の横筋や変形が残っています。まだ治っていないのでしょうか?
爪の変形が残っているだけで、炎症や感染が続いているとは限りません。炎症が起きていた時期に爪を作る部分が影響を受けると、腫れが治まったあとも爪の横筋や凹凸などが残ることがあります。爪はゆっくり伸びるため、傷んだ部分が先端まで移動して切れるようになるまでには時間がかかります。赤みや痛みが再び出る場合や、根元から変形した爪が生え続ける場合は再診してください。
Q. 家族や、ほかの指にうつることはありますか?
水仕事や洗剤などの刺激による慢性爪囲炎は、それ自体が人にうつる病気ではありません。一方、ヘルペス性ひょう疽は、病変との直接接触によってウイルスを広げる可能性があります。患部を覆い、病変を触った手で目などを触らないようにしましょう。
Q. 水仕事では手袋をしているのに、繰り返します。どうすればよいですか?
手袋をしていても、中に水が入ったり汗で蒸れたりすると、爪の周囲が長時間湿った状態になります。防水性のある手袋の内側に綿の手袋を使い、湿ったら交換する方法もあります。「手袋をしているか」だけではなく、「手袋の中を長時間蒸れた状態にしていないか」まで見直すことが大切です。
Q. 薬を飲み始めてから、何本もの指の爪の周りが腫れました。副作用の可能性はありますか?
あります。一部の抗がん薬やレチノイド製剤などでは、爪囲炎が副作用として起こることがあります。複数の指に同じような症状が出ている場合は、使用している薬との関連も確認します。お薬手帳を持参して相談してください。治療に必要な薬を自己判断で中止せず、処方した医師と皮膚科で対応を相談することが大切です。
※現在は診療を行っておりません。開院・予約開始の時期はサイトでお知らせします。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「爪」(確認日: 2026-10-05)
- British Association of Dermatologists: Chronic paronychia
- Primary Care Dermatology Society: Paronychia
- NHS: Herpetic whitlow (whitlow finger)
- Tosti A, et al. Topical steroids versus systemic antifungals in the treatment of chronic paronychia. J Am Acad Dermatol. 2002;47(1):73-76
- Pierrart J, et al. Acute felon and paronychia: Antibiotics not necessary after surgical treatment. Hand Surg Rehabil. 2016;35(1):40-43
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

