DERMATOLOGY GUIDE | AESTHETIC DERMATOLOGY
「昔は気にならなかったのに、あごやお腹の毛が目立つようになった」「家族に相談しにくい」——脱毛の相談として来られる方の中に、実は体の変化のサインが混じっていることがあります。毛は、体内のホルモンの状態がいちばん外に出やすい場所のひとつです。
目次
「多毛症」と「毛深い」は少し違います
医学的にいう多毛症(男性型多毛)は、本来は男性に濃く生える場所——口のまわり、あご、胸の中央、へその下、背中、太ももの内側——に、男性のような硬く太い毛が生えてくる状態を指します。
一方、腕や脚の毛が全体的に濃いのは体質的なもので、病気ではないことがほとんどです。「どこが濃くなったか」で意味が変わるため、気になる部位は受診時に具体的に伝えてください。
考えられる原因と、見分けの手がかり
| 原因 | 毛の出方 | あわせて出やすい症状 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 体質・遺伝(最も多い) | 思春期からゆっくり。家族にも似た傾向 | 特になし | 病的でなければ脱毛などの対処でよい |
| 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) | あご・口まわり・へその下が硬く太くなる | 生理不順・ニキビ・体重増加 | 婦人科での評価が先 |
| 薬によるもの | 薬を始めた時期と一致する | 薬ごとに異なる | 自己判断で中止せず処方医へ |
| 副腎・下垂体の病気 | 数か月で急に濃くなる | 声が低くなる、筋肉が増える、月経が止まる | 早めに内科・内分泌の受診を |
| 閉経前後の変化 | あご・口まわりに太い毛が数本 | ほてり、頭髪が細くなる | 対処してよい(関連記事: 更年期の肌の変化) |
いちばん重要な手がかりは「速さ」です。年単位でゆっくりなら体質のことが多く、数か月で明らかに変わったなら調べる価値があります。写真が残っていれば受診時に見せてください。記憶より正確です。
治療とセルフケア
- まず原因を確かめる — 生理不順やニキビの増加を伴う場合は、婦人科でホルモンの評価を受けてください。背景の病気を治療すると、毛の伸びが落ち着くことがあります
- 薬による治療 — 多毛に対しては、低用量ピルやスピロノラクトンなどが用いられることがあります。ただし、いずれも多毛症そのものを目的とした使い方は適応外(承認された効能・効果の範囲外)になります。使う場合は目的とリスクの説明を受けたうえで、処方医の管理のもとで行います
- 医療レーザー脱毛 — 毛を減らす手段としては現実的な選択肢です。黒く太い毛によく反応する一方、産毛や白い毛には反応しにくいという性質があります(関連記事: 医療脱毛)
- 自己処理は「抜かない」 — 毛抜きや脱毛テープで抜くと、毛穴の炎症(毛のう炎)や埋没毛、色素沈着を起こしやすくなります。剃るほうが皮膚には優しい方法です(関連記事: カミソリ負け)
- 背景の病気があるまま脱毛だけ進めない — 毛は減っても、生理不順や代謝の問題は残ります
※医療レーザー脱毛など美容目的の施術は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。主なリスクとして、やけど・毛のう炎・色素沈着・硬毛化などが挙げられます。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 剃ると濃くなる? | 濃くなりません | 切り口が太く見えるだけで、毛根の太さは変わらないためです |
| 何科に行けばいい? | 生理不順があれば婦人科、毛の処置は皮膚科 | 原因の評価と、毛への対処は担当が分かれるためです |
| 脱毛をすると毛が増えたように感じる | 硬毛化という反応が起こることがあります | 産毛に弱い出力の光が当たると、かえって太く育つことがあるため。施術者に伝えてください |
| ホルモンの薬はやめたら戻る? | 戻ることがあります | 薬は毛を作る刺激を抑えているだけで、毛根がなくなるわけではないため |
| 顔の毛を毎日剃っている。問題ある? | 剃り方次第 | 逆剃りと乾いた肌での剃毛は、皮膚を削ってヒリつきや色素沈着の原因になるため |
受診の目安
- 早めに受診 — 数か月で急に毛が濃くなった/声が低くなった/月経が止まった。ホルモンを作る臓器の評価が必要です
- 受診 — 生理不順とニキビが同時に増えた/薬を始めてから毛が濃くなった
- 相談を — 毛のことで人前に出るのがつらい、自己処理で肌が荒れている
- 皮膚科へ — 抜いた後に赤いブツブツ・しこりができた(関連記事: 毛のう炎)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 脱毛症(確認日: 2026-09-14)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

