DERMATOLOGY GUIDE | GENERAL DERMATOLOGY
「漢方も試してみたい」「体質から治したい」——皮膚のトラブルが長引いている方から、よく出る希望です。一方で「効くまで時間がかかるのでは」「まずいのでは」という不安もあります。漢方薬は皮膚科の日常診療でふつうに使われている薬です。どういう場面で、何を期待して出しているのかを知っておくと、飲み続ける意味が分かります。
目次
漢方薬が選ばれる場面
皮膚科で漢方薬を出すのは、おおむね次のような場面です。
- 塗り薬を続けても、かゆみだけが残る — 炎症は落ち着いているのにかゆい、という状態
- 治っては繰り返す — 湿疹やニキビが同じ場所に何度も戻ってくる
- 皮膚以外の不調も一緒にある — 冷え、のぼせ、月経に伴う悪化、胃腸の弱さ
- 西洋薬を増やしたくない、使いにくい — 眠気が困る、他の薬をたくさん飲んでいる
逆に、急に強く腫れた・広がっている・感染を起こしている状態には向きません。そこは塗り薬や抗菌薬の出番です。「まず炎症を抑える、そのうえで繰り返さない体調に整える」——この役割分担が実際の使い方です。
皮膚科でよく使われる処方
| 処方名 | 向いている状態 | イメージ |
|---|---|---|
| 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) | 化膿を繰り返す湿疹、ニキビ、じんましん | 赤みと膿を繰り返すタイプに |
| 消風散(しょうふうさん) | じくじくして、かゆみが強い湿疹。夏に悪化 | 分泌物が多く、熱感があるタイプに |
| 当帰飲子(とうきいんし) | 乾燥してかゆい。高齢の方・冬に悪化 | 発疹が乏しく、カサカサでかゆいタイプに |
| 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) | 赤みとほてりが強い。のぼせやすい | 熱をさます方向に |
| 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | 月経に伴って悪化するニキビ・しみ、冷えとのぼせ | 血のめぐりを整える方向に |
| 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう) | 顔の赤いニキビ | 顔の上部の炎症に |
| 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう) | 強く腫れてじくじくする湿疹、じんましん | むくみと熱感を伴うタイプに |
同じ病名でも、人によって出る処方は変わります。これは漢方が「病名」ではなく「その人の状態(証)」に合わせて選ぶ薬だからです。他の方に効いた処方が自分に合うとは限りません。
飲み方と、続ける期間
- 食前または食間(食事の2時間後)に — 空腹時のほうが吸収されやすいとされています。ただし胃にもたれる場合は食後でも構いません。飲めないより確実です
- お湯に溶かすと飲みやすいことがあります — 香りが苦手な場合は、オブラートやゼリー状のオブラートを使ってください
- 効果の判断は2週間〜1か月が目安 — 「何か月も飲まないと分からない」わけではありません。1か月使って変化が全くなければ、処方の見直しを相談してください
- 塗り薬はやめない — 漢方を始めたからといって外用をやめると、炎症が戻ります。足すのであって、置き換えるのではありません
注意すべき副作用
「自然由来だから副作用がない」というのは誤解です。皮膚科で使う処方でも、次のようなことが起こり得ます。
- 甘草(かんぞう)を含む処方 — むくみ、血圧上昇、体のだるさ、脱力(低カリウム血症による偽アルドステロン症)。多くの漢方に含まれるため、複数の漢方を併用すると重なります
- 山梔子(さんしし)を含む処方 — 長期に飲み続けた場合、腸の血管に変化が起こることがあります。年単位で続けるときは定期的な確認を
- まれに起こる重い副作用 — 息切れ・空咳・発熱(間質性肺炎)、白目や皮膚が黄色くなる(肝障害)。これらはすぐに中止して受診してください
- 飲み合わせ — 他の医療機関で漢方が出ている場合は必ず伝えてください。同じ生薬が二重になることがあります
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 保険で出せる? | 医療用の漢方製剤は保険で処方できます | 医薬品として承認されているためです |
| 市販の漢方と同じ? | 同じ名前でも量が違うことがあります | 市販薬は成分量が控えめに設定されていることがあるためです |
| ステロイドをやめたいから漢方に | 置き換えは勧めません | 炎症が強い時期に外用をやめると、元に戻るだけでなく悪化することがあるため |
| 妊娠中・授乳中でも飲める? | 処方によります。必ず申し出を | 使用を避ける生薬があるためです |
| 苦くて飲めない | 別の剤形・別の処方に変更できます | 飲めない薬は効きません。我慢して中断するより相談が早いためです |
受診の目安
- すぐに中止して受診 — 息切れ・空咳・発熱が出た/白目や皮膚が黄色い/手足に力が入らない
- 受診 — むくみが出てきた、血圧が上がった、飲み始めてから胃の調子が悪い
- 相談を — 1か月続けても変化がない/他の医療機関でも漢方をもらっている/自己判断で市販の漢方を足している
- 先に皮膚科へ — 赤く腫れて熱をもつ、膿が出ている。こうした状態は漢方より先に処置と外用が必要です
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-14)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

