「子猫を飼い始めてから、腕のひっかき傷が治ったあとに、わきの下にしこりができた」「首のしこりが痛いけれど、思い当たるのは猫くらい」。猫ひっかき病は、猫が持っている細菌が、引っかき傷やかみ傷から人に入って起こる感染症です。傷そのものは小さく、治ってから症状が出るので、猫との関係に気づかれにくいのが特徴です。
猫ひっかき病とは(どうしてうつるのか)
原因は、バルトネラ菌という細菌です。この菌は猫の血液の中や、猫についたノミにいて、猫自身はほとんど症状を出しません。ノミのふんに含まれた菌が猫の爪や口に付き、引っかかれたりかまれたりしたときに人の皮膚へ入ります。
子猫や、ノミのついた猫からうつることが多いとされます。野良猫だけでなく、家で飼っている猫でも起こります。夏から秋にかけて多くなる傾向があり、ノミが増える時期と重なります。人から人へうつることはありません。
症状と見分け方
典型的には、次の順番で症状が出ます。
- 傷の場所に小さな赤いブツブツ — 引っかかれて数日〜2週間ほどで、赤い盛り上がりや小さな水ぶくれ・膿をもったブツブツができます。痛みやかゆみは軽いことが多いです
- 近くのリンパ節の腫れ — その1〜数週間後、傷に近い「関所」にあたるリンパ節が腫れます。手や腕の傷ならわきの下やひじの内側、顔や首の傷なら首。押すと痛いしこりとして気づかれることが多いです
- 全身の症状 — 微熱、だるさ、頭痛が出ることがあります
| 考えられるもの | 特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 猫ひっかき病 | 傷のあとに赤いブツブツ → 数週間後にリンパ節が腫れる | 猫との接触、特に子猫。傷からしばらく経ってから腫れる |
| かみ傷・引っかき傷の細菌感染 | 傷のまわりが赤く腫れて痛む | 数時間〜1日で急に悪化する(関連記事: 動物にかまれたら) |
| 粉瘤などのできもの | 皮膚のすぐ下のしこり | 中央に小さな黒い点があることが多い。リンパ節の腫れとは場所と深さが違う(関連記事: 粉瘤とは) |
| そのほかのリンパ節の腫れ | 風邪や扁桃炎のあとの首の腫れなど | 猫との接触がない。長く続く・大きくなる・硬いしこりは詳しい検査が必要(関連記事: 首のしこり) |
治療と自分でできること
体の免疫がしっかりしている方では、多くは数週間〜数か月で自然に治まります。そのため、腫れが軽ければ、痛み止めなどで様子を見ることもあります。
リンパ節の腫れが大きい、痛みが強い、熱が続く、免疫の働きが弱くなる病気や薬がある場合は、抗菌薬の飲み薬を使います。リンパ節が膿をもって柔らかくなったときは、針で膿を抜くことがあります。診断のために、血液検査で菌への反応を調べることができます。
家庭でできることは次のとおりです。
- 引っかかれたら、すぐに石けんと流水で洗う — 傷に付いた菌をできるだけ早く洗い流すため
- 猫のノミ対策をする — 菌を運ぶのはノミなので、動物病院でノミの予防をすると、人への感染も減らせるため(関連記事: ネコノミ刺され)
- 子猫と遊ぶときは、爪を切っておく — 引っかき傷そのものを減らすため
- 傷やかさぶたを猫になめさせない — 唾液からも菌が入ることがあるため
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 猫を手放したほうがいいですか? | 手放す必要はありません。ノミ対策と、引っかかれたらすぐ洗うことで予防できます | 菌を運ぶのは主にノミで、対策でうつる機会を減らせるためです |
| しこりがなかなか小さくなりません。 | 数か月かかることはあります。ただし、大きくなり続ける・硬い場合は受診してください | 猫ひっかき病以外の原因によるリンパ節の腫れを確かめる必要があるためです |
| 一度かかったら、もうかかりませんか? | 多くは一度かかると、くり返しにくいとされています | 体が菌に対する抵抗力をつくるためです。ただし、引っかき傷の手当ては毎回きちんと行ってください |
受診の目安
- 受診を — 猫に引っかかれたあとに、わきの下や首、ひじの内側に押すと痛いしこりができた
- 早めの受診を — しこりが大きくなっている、膿をもって柔らかくなってきた、熱が1週間以上続く
- 早めの受診を — 免疫の働きを弱める病気や薬(抗がん剤・免疫抑制薬など)がある方が引っかかれた
- 当日中の受診を — かまれた・引っかかれた傷が、数時間〜1日で赤く腫れて痛む(別の細菌による感染の可能性)。高い熱でぐったりしている場合は、救急安心センター(#7119)、子どもは小児救急電話相談(#8000)に相談してください
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-27)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-27)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

