「DIYでコンクリートを練った後、ひざが赤くただれていた」「長靴の中に生コンが入ったまま作業を続けたら、夜になって足首が痛くなった」「左官の仕事を続けるうちに、手がかゆくてガサガサになった」。建設・土木の仕事の方だけでなく、庭や駐車場の手入れで自分でセメントを扱う方からも相談があります。セメントによる皮膚のトラブルと、応急処置、受診の目安を整理します。
セメントで皮膚が傷む仕組み
セメントは水と混ざると、強いアルカリ性になります。アルカリは皮膚のたんぱく質や脂を溶かしながら、ゆっくりと奥へしみ込んでいきます。酸によるやけどと比べて、痛みが出るのが遅く、気づいたときには深くまで傷んでいることがあるのが特徴です。
セメントによる皮膚のトラブルは、主に次の2つです。
- 化学やけど…濡れたセメントが長い時間皮膚についていると起きます。ひざをついて作業したとき、長靴や手袋の中にセメントが入ったときに多く見られます。
- セメントかぶれ(接触皮膚炎)…くり返し触れているうちに起きる湿疹です。アルカリや乾燥による刺激のほか、セメントに含まれるクロムという金属へのアレルギーで起きることがあります。
症状と見分け方
| 状態 | 見た目・特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 化学やけど | 赤み、ヒリヒリ、水ぶくれ、ただれ、黒っぽい変色 | セメントがついてから数時間後に出る。ひざ・すね・足首・手に多い |
| 刺激によるかぶれ | 赤み、カサカサ、ひび割れ | 作業を続けるうちに少しずつ悪くなる。休むと良くなる |
| クロムへのアレルギー性のかぶれ | 強いかゆみ、細かいブツブツ、ジュクジュク | 触れた所より広がる。革手袋や革靴でも出ることがある |
化学やけどは、見た目より深く傷んでいることがあります。水ぶくれ、ただれ、黒っぽい変色がある場合は、範囲が小さくても受診してください。
応急処置
- セメントのついた服・手袋・長靴をすぐに脱ぐ。しみ込んだままにすると、皮膚に触れ続けて傷みが進みます。
- 乾いたセメントは払い落としてから洗う。粉の状態のものは、まず手やブラシで払います。
- たっぷりの流水で十分に洗う。少なくとも15〜20分以上、痛みやぬるぬるした感じがなくなるまで洗い流します。アルカリは落ちにくいため、短時間で終わらせないことが大切です。
- 酢などで中和しようとしない。中和するときに熱が出て、かえって皮膚を傷めることがあります。水で洗い流すのが基本です。
- 目に入ったら、すぐに流水で洗いながら救急受診。アルカリは目を深く傷めます。こすらず、まぶたを開いて水で流し続けながら、119番に連絡してください。
皮膚科での治療
化学やけどは、ふつうのやけどと同じように、深さに応じて傷を守る塗り薬や被覆材で治療します。深いやけどでは治るまでに時間がかかり、範囲が広い場合は入院や手術が必要になることもあります。
セメントかぶれには、炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)と保湿剤を使います。クロムへのアレルギーが疑われる場合は、皮膚に貼って反応を見る検査(パッチテスト)で原因を確かめます。アレルギーが分かれば、作業の方法や手袋の選び方を見直すことが、再発を防ぐうえでいちばん大切になります。
作業するときの予防
- 耐アルカリ性のゴム手袋を使い、手首から入らないよう袖口を覆います。手袋の中が濡れたら、すぐに替えます。
- ひざをつく作業では、防水のひざ当てを使います。
- 長靴の中にセメントが入らないよう、ズボンを長靴の外にかぶせます。
- 目を守るため、保護めがねをかけます。
- 作業後は手を洗い、保湿剤で手を守ります。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 作業中は痛くなかったのに、なぜ後から痛くなるのですか?
A. アルカリによる化学やけどは、皮膚をゆっくりと傷めていくため、痛みを感じるまでに時間がかかります。痛くないからと作業を続けると、そのぶん傷が深くなります。セメントがついたと気づいたら、痛みがなくてもすぐに洗い流してください。
Q. 仕事を続けながら、かぶれを治せますか?
A. 刺激によるかぶれであれば、手袋の工夫と塗り薬で続けながら治せることが多いです。クロムへのアレルギーの場合は、触れるたびに悪くなるため、作業の内容や防護具を職場と相談することが必要になります。
受診の目安
- セメントがついた所に水ぶくれ、ただれ、黒っぽい変色がある
- 範囲が広い(手のひらより大きい)、痛みが強い
- 目に入った(洗いながら119番)
- セメントを扱うたびに、手や腕に湿疹が出る
- 赤みが広がり、熱をもって腫れる、発熱がある(感染の可能性)
夜間や休日に受診すべきか迷う場合は、#7119(救急安心センター)に相談できます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「かぶれ(接触皮膚炎)」(確認日: 2026-10-23)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

