「耳の前のしこりが、何年もかけて大きくなってきた」「しこりの上の皮膚がかゆい」「血液検査で、アレルギーの数値が高いと言われた」。耳の前や首のしこりにはさまざまな原因がありますが、その中に、日本の医師の名前がついた木村病という病気があります。アジアの若い男性に多いことが知られています。
木村病とは(仕組み)
木村病は、皮膚の下や近くのリンパ節に、白血球の一種である好酸球(こうさんきゅう)やリンパ球が集まり、しこりを作る病気です。原因ははっきり分かっていませんが、アレルギーに関わる免疫の働きが関係していると考えられています。
血液検査では、好酸球の数や、アレルギーに関わる抗体(IgE)の値が高くなるのが特徴です。しこり以外に、腎臓に影響が出て、尿にたんぱくが出る(ネフローゼ症候群など)ことがあります。
症状・見分け
よく見られる特徴を、多い順に並べます。
- 痛みのないしこり: 耳の前後、耳下腺(耳の下の唾液を作る腺)のまわり、首、あごの下に多く、ゆっくり大きくなります。複数できることもあります
- しこりの上の皮膚のかゆみ: かゆみがあり、かいて皮膚が厚くなったり、色が濃くなったりすることがあります
- 首などのリンパ節の腫れ
- むくみ: 腎臓に影響が出た場合に、顔や足がむくむことがあります
| 考えられるもの | 特徴 |
|---|---|
| 粉瘤 | 皮膚と一体になって動くしこり。真ん中に黒い点があることが多い。炎症で赤く腫れることがある |
| 脂肪腫 | やわらかく、ぷよぷよしたしこり。かゆみはない |
| リンパ節の腫れ(感染など) | 風邪やけがのあとに腫れ、押すと痛むことが多い。多くは数週間で小さくなる |
| 耳下腺の腫瘍 | 耳の下のかたいしこり。耳鼻咽喉科での検査が必要 |
| 木村病 | 耳の前後や首の、痛みのないやわらかいしこり。かゆみ、好酸球・IgEの上昇を伴う |
しこりの性質は触っただけでは区別できないことが多く、とくに大きくなり続けるしこりは、悪性のものとの区別も含めて検査が必要です。
治療・セルフケア
診断のための検査
- 血液検査: 好酸球の数、IgEの値などを調べます
- 画像検査: 超音波(エコー)やMRIなどで、しこりの広がりを確かめます
- 組織の検査(生検): しこりの一部、または全部を取って顕微鏡で調べ、診断を確定します
- 尿検査: 腎臓への影響がないかを確かめます
治療
しこりが小さく、症状が軽ければ、経過を見ることもあります。治療が必要な場合は、次の方法を組み合わせます。
- 手術: しこりを取り除きます。ただし、しこりの境目がはっきりしないことが多く、取りきれずに再発することもあります
- ステロイド: 飲み薬や、しこりへの注射でしこりを小さくします。減らしたり、やめたりすると再び大きくなることがあります
- 放射線治療: 手術や薬で繰り返す場合に検討されることがあります
木村病は再発しやすい病気のため、治療後も定期的に経過を見ていきます。かゆみには、かゆみ止めの飲み薬や塗り薬を使います。
受診の目安
- 耳の前後や首に、痛みのないしこりがあり、数週間たっても小さくならない
- しこりが少しずつ大きくなっている、数が増えている
- しこりの上の皮膚が、ずっとかゆい
- しこりがあり、顔や足のむくみ、尿の泡立ちが気になる(腎臓の検査が必要なことがあります)
- しこりが急に大きくなった、かたい、動かない(早めに受診してください)
診察室でよく聞かれる質問
木村病は、がんになりますか?
木村病は良性の病気で、がんに変わることはないと考えられています。ただし、しこりの段階ではほかの病気と区別がつかないため、診断を確定するための検査が大切です。
しこりがあるだけで、腎臓の検査まで必要ですか?
木村病と診断された場合は、必要です。腎臓に影響が出ても、初めは自覚症状がないことがあり、尿検査で早く気づけるためです。
何科を受診すればいいですか?
皮膚のしこりやかゆみであれば皮膚科で相談できます。耳の下の腺のしこりが疑われる場合は耳鼻咽喉科、腎臓への影響があれば腎臓内科と、必要に応じて連携して診ていきます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-13)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-13)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

