「子どもがいつも爪をかんでいて、深爪で痛そう」「大人になってもやめられず、指先がボロボロ」。爪かみは子どもに多い癖ですが、大人になっても続く方は少なくありません。爪の見た目だけでなく、指先の感染や爪の変形につながるので、皮膚科の立場からは「減らせるように手伝う」ことを大切にしています。
咬爪症とは(なぜやめられないのか)
爪をかむ癖は、医学的には咬爪症(こうそうしょう)と呼ばれます。退屈なとき、緊張や不安があるとき、集中しているときなど、特定の場面で無意識に手が口にいくのが特徴です。かむと一瞬落ち着く・すっきりするため、脳がその行動を覚えてしまい、くり返されます。
爪だけでなく、爪の周りの皮膚(ささくれ・甘皮)をかむ・むしる癖を伴うこともあります。髪の毛を抜く癖などと同じ「体に向かうくり返しの行動」の仲間と考えられています(関連記事: 抜毛症)。
爪と指先に起きるトラブル
| トラブル | 状態 | 理由 |
|---|---|---|
| 深爪・指先の痛み | 爪が短くなり、指先の皮膚が盛り上がる | 爪が指先を支えられなくなるため |
| 爪の周りの化膿(爪囲炎・ひょう疽) | 赤く腫れてズキズキ痛む、膿がたまる | 口の中の細菌が小さな傷から入る(関連記事: ひょう疽・爪囲炎) |
| ささくれ・出血 | 指先の皮膚がめくれて痛む | 皮膚までかんだり、むしったりするため(関連記事: ささくれ) |
| 爪の変形 | 爪が短く幅広になる、でこぼこ・横すじ | 爪をつくる根元(爪母)まで傷むと、長く続くことがある |
| イボが広がる | 指先や唇にイボができる | 指のイボをかむとウイルスが口の周りや別の指に広がる(関連記事: イボ) |
減らす方法(叱るより、仕組みで)
- 爪を短く、なめらかに整える — ギザギザや引っかかりがあると、かみたくなります。やすりで角を丸めておくと、かむ「きっかけ」が減ります
- かむ場面を知る — テレビを見ているとき、勉強中、車の中など、自分(子ども)がいつかむのかを数日観察します。場面が分かれば、そのときだけ手を使う工夫ができます
- 手を別の動きに置き換える — ボールを握る、指を組む、ペンを持つなど、かむのと同時にはできない動きを決めておきます
- 苦味のあるマニキュアを使う — 爪かみ防止用として市販されています。口に入れたときに「あ、かんでいた」と気づくきっかけになります
- 絆創膏や手袋で物理的に防ぐ — 特にかみやすい指だけに貼るのも効果的です
- 保湿で指先を整える — ささくれがあると、むしりたくなります(関連記事: 爪のケア)
子どもの場合、叱るのは逆効果になりやすいです。叱られる不安や緊張が、かむきっかけそのものになってしまうためです。かんでいないときにほめる、手を使う遊びを増やす、といった方法のほうがうまくいきます。多くの子どもは成長とともに自然に減っていくので、焦らず、指先のトラブルだけは早めに治す、という構えで大丈夫です。
皮膚科でできること
皮膚科では、爪と指先に起きているトラブルの治療をします。化膿していれば、抗菌薬の塗り薬・飲み薬や、膿を出す処置を行います。ささくれや指先の湿疹には外用薬と保湿を、イボがあれば治療を始めます。指先の痛みやかゆみがなくなると、それだけでかむ回数が減る方も多いです。
かむ回数が多く日常生活に支障がある、ほかにも抜毛などの癖がある、強い不安や気分の落ち込みを伴う場合は、小児科・心療内科・精神科など、心のケアの専門家への相談も選択肢になります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 爪の形は元に戻りますか? | かむのをやめれば、多くは時間をかけて戻っていきます | 手の爪は生え変わるのに数か月かかります。ただし根元まで傷んでいた場合は、変形が残ることもあります |
| 子どもにネイルの苦い液を塗っても大丈夫? | 製品の対象年齢と使い方を守れば使えます | 指先に傷やただれがある場合は、しみることがあるので先に治してください |
| ジェルネイルをすればかまなくなりますか? | かみにくくはなりますが、爪が薄く弱くなることがあります | ジェルの付け外しで爪が削られるためです(関連記事: ジェルネイルの爪トラブル) |
| 何科に行けばいいですか? | 指先の腫れ・痛み・爪の変形は皮膚科、癖そのものの相談は小児科や心療内科 | 爪と皮膚の治療と、癖の背景へのケアは担当が分かれるためです |
受診の目安
- 受診を — 深爪で指先が痛い、ささくれがくり返す
- 受診を — 爪の形が変わってきた(短く幅広・でこぼこ・横すじ)
- 受診を — 指先や唇の周りにイボができた
- 早めの受診を — 爪の周りが赤く腫れてズキズキ痛む、膿がたまっている
- すぐに受診を — 腫れが指全体や手の甲に広がる、発熱がある
- 小児科・心療内科などへの相談を — かむ回数が多く生活に支障がある、ほかの癖や強い不安を伴う
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 爪(確認日: 2026-09-23)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

