「手足のブツブツで皮膚科に通っているけれど、最近、胸の真ん中が痛む」「鎖骨のつけ根が腫れて、腕を上げると響く」。こうした痛みは、整形外科や内科を受診しても、皮膚の病気と結びつけて考えられないことがあります。掌蹠膿疱症の一部の方に起こる骨や関節の炎症について説明します。
掌蹠膿疱症性骨関節炎とは(仕組み)
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に、うつらない膿疱が繰り返しできる病気です。膿の中に細菌はおらず、免疫の働きが過剰になって起こる炎症と考えられています。扁桃炎や歯の根の炎症など、体のどこかにある慢性の炎症(病巣感染)や、喫煙が、発症や悪化にかかわるとされています。
この炎症が皮膚だけでなく、骨や関節、そのつけ根(腱が骨にくっつく部分)にも起こることがあります。これが掌蹠膿疱症性骨関節炎です。とくに起こりやすいのが、胸の前の真ん中(胸骨)と、鎖骨と胸骨のつなぎ目(胸鎖関節)、胸骨と肋骨のつなぎ目です。背骨や骨盤、手足の関節に起こることもあります。
症状と見分け方
次のような症状が典型です。皮膚の症状が悪くなる時期と、痛みが強くなる時期が重なる方もいます。
- 胸の前の真ん中や、鎖骨のつけ根の痛み・腫れ・押したときの痛み
- 腕を上げる、寝返りを打つ、せきをすると胸に響く
- 背中や腰の痛み、朝のこわばり
- 手足の指などの関節の痛み
胸の痛みには、急いで対応が必要な病気もあります。区別の目安は次のとおりです。
| 痛みの種類 | 特徴 | 対応 |
|---|---|---|
| 掌蹠膿疱症性骨関節炎 | 胸の前・鎖骨のつけ根を押すと痛む。腫れて盛り上がることがある。数週間〜月単位で続く | 皮膚科で相談し、必要に応じて整形外科・リウマチ科と連携 |
| 心臓の病気(狭心症・心筋梗塞など) | 胸を締めつけられる、押しつぶされる痛み。冷や汗、息苦しさ、肩やあごへの痛みを伴う | すぐに救急車(119番) |
| 帯状疱疹 | 胸の片側に、帯状にピリピリした痛み。数日後に水ぶくれが出る | 早めに皮膚科へ |
| 肋骨の骨折・打撲、肋間神経痛 | けがのきっかけがある、または肋骨に沿って痛む | 整形外科などへ |
胸の痛みが急に強くなった、締めつけられる、冷や汗や息苦しさを伴うときは、掌蹠膿疱症があっても心臓の病気を先に疑い、ためらわず救急車を呼んでください。判断に迷うときは救急安心センター(#7119)に相談できます。
治療
皮膚と骨・関節の炎症は同じ根から来ているため、治療も一緒に考えます。主に次のような治療を組み合わせます。
- 病巣感染の治療:扁桃炎を繰り返している、歯の根に炎症や歯周病がある場合は、耳鼻科・歯科での治療で、皮膚と関節の症状がともに軽くなることがあります。
- 禁煙:喫煙は掌蹠膿疱症の悪化要因とされています。禁煙外来も利用できます。
- 痛み止め(消炎鎮痛薬):関節の痛みを和らげます。
- 皮膚の治療:ステロイドや活性型ビタミンD3の塗り薬、光線療法など。
- 生物学的製剤など:皮膚や関節の症状が強い場合に、掌蹠膿疱症に対して保険で使える注射薬などが検討されます。
関節の評価にはレントゲンやCT、MRIなどの画像検査が役立つため、整形外科やリウマチ科と連携して診ていくことがあります。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 皮膚がよくなれば、胸の痛みも治りますか?
A. 一緒に軽くなることは多いですが、皮膚と痛みの経過が必ずしも同じとは限りません。皮膚がきれいになっても痛みが続くときは、その痛みのための治療が必要なので伝えてください。
Q. たばこを減らすだけではだめですか?
A. 減らすことにも意味はありますが、掌蹠膿疱症ではやめることが勧められています。自力で難しい場合は、禁煙外来の利用も考えてください。
Q. 歯医者で治療したほうがいいと言われました。本当に関係ありますか?
A. 歯の根の炎症や歯周病などの治療で、皮膚や関節の症状が改善する方がいます。すべての方に当てはまるわけではありませんが、思い当たる歯の不調があれば、一度歯科で診てもらうことを勧めます。
受診の目安
- 掌蹠膿疱症があり、胸の前や鎖骨のつけ根に痛み・腫れがある
- 背中や腰、手足の関節の痛みが続いている
- 手足の膿疱が何度も繰り返す、なかなか落ち着かない
- 扁桃炎を繰り返している、歯の不調がある(治療の相談のため)
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-27)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-27)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

