「洗濯物に付いていたカメムシをつかんだら、指が茶色くなって落ちない」「靴の中にいたヤスデを踏んだあと、足が赤紫になった」。秋になると、こうした相談が増えます。カメムシは冬を越すために家の中へ入り込み、ヤスデは秋の雨のあとなどに大量に出てくることがあるためです。どちらも刺したりかんだりはしませんが、身を守るために出す体液が皮膚を刺激します。
体液で皮膚が荒れる仕組み
カメムシは、危険を感じると独特のにおいのある液を出します。この液には皮膚や粘膜を刺激する成分が含まれていて、つぶしたり、液が付いたまま長く置いたりすると、ヒリヒリした痛みや赤みが出ます。量が多いと、やけどに似た水ぶくれになることもあります。
ヤスデは、体の横にある穴から刺激のある液を出します。この液は皮膚を茶色〜赤紫色に染める性質があり、打ち身(あざ)のように見えることがあります。色は皮膚の表面に付いたもので、皮膚の浅いところが入れ替わるのに合わせて、数日〜数週間かけて薄くなっていきます。
どちらも、アレルギーではなく成分そのものによる刺激(刺激性の皮膚炎)が中心です。そのため、初めて触れた方にも起こり、触れた量と時間に比例して強くなります。
症状と見分け方
| 原因 | 主な症状 | 出るまで | 特徴 |
|---|---|---|---|
| カメムシの体液 | ヒリヒリ・赤み。指先が黄色〜茶色に染まることも | 触れてすぐ〜数時間 | 強いにおいが手に残る。量が多いと水ぶくれ |
| ヤスデの体液 | 茶色〜赤紫色の色づき・ヒリヒリ | 触れてすぐ〜数時間 | あざのように見える。色が数週間残ることも |
| やけど虫(アオバアリガタハネカクシ) | 線状の赤み・水ぶくれ | 半日〜1日ほど | 払った跡のような線状になる |
| ムカデ | 激しい痛み・腫れ | 咬まれた直後 | 咬み跡(2つの点)がある。体液ではなく毒による |
カメムシやヤスデの場合、症状は体液が付いた場所に一致します。つかんだ指先、踏んだ足の裏、服の中に入っていた場所(首・わき・腕)などです。逆に、触れていない場所に広がっていく、発熱を伴う、といった場合は、別の原因を考えます。
手当てとセルフケア
- すぐに石けんと流水で洗う。成分を早く落とすほど、症状が軽く済みます。こすらずに、泡でやさしく、くり返し洗います。
- 冷やす。ヒリヒリが強いときは、冷たいタオルなどで冷やすと楽になります。
- 体液が付いた服やタオルは洗う。付いたままにすると、ほかの場所にまた触れてしまいます。
- 水ぶくれはつぶさない。膜が下の皮膚を守っているためです。破れたら流水で洗い、ワセリンを塗ってガーゼなどで覆います。
茶色い色は、洗っても落ちないことがよくあります。色を取ろうとして強くこすったり、漂白剤やアルコールで拭いたりすると、かえって皮膚を傷めます。色は自然に薄くなるので、待ってください。
赤みやヒリヒリが続くときは、皮膚科で炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)を使います。水ぶくれが大きいときや化膿しているときは、処置や抗菌薬が必要になることもあります。
予防
- 見つけても素手でつかまない・つぶさない。ティッシュ越しでも体液は付くので、ほうきとちり取り、粘着テープなどで静かに取ります。
- 秋は洗濯物を取り込むときにはたいてから入れる。
- 玄関や外に置いた靴、長靴は、履く前に中を確かめる。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 目に入ってしまいました。
A. 目をこすらず、すぐにきれいな流水で十分に洗い流してから、眼科を受診してください。体液は目の表面(角膜や結膜)を傷めることがあり、皮膚よりも急ぐ状態です。夜間や休日で迷う場合は、救急安心センター(#7119)に相談できます。
Q. 茶色い色は、いつ消えますか?
A. 皮膚の浅いところに付いた色なので、多くは数日〜数週間で、皮膚の入れ替わりとともに薄くなります。炎症が強かった場所は、その後しばらく茶色い跡(炎症後色素沈着)が残ることもありますが、時間とともに薄くなっていきます。
Q. 子どもが触ってしまいました。
A. すぐに手を洗い、目や口を触らないよう見守ってください。口に入れてしまったときは、口をすすぎ、様子がおかしい・吐く・ぐったりしているときは医療機関へ相談してください。
Q. うつりますか?
A. うつる病気ではありません。ただし、体液が付いた手や服が別の場所に触れると、そこにも症状が出ることがあります。
受診の目安
- 洗っても翌日以降も痛みや赤みが強い、広がっている
- 水ぶくれができた、皮がむけてただれている
- 黄色い膿やかさぶたが広がってきた(化膿のサイン)
- 顔、とくに目の近くに付いた
- 目に入った、目が痛い・充血している(すぐ眼科へ)
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「虫さされ」(確認日: 2026-10-20)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-10-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

