「虫刺されかと思っていたら、だんだん円く広がってきた」——この形で来られる方は、体部白癬(ぜにたむし)であることがかなり多いです。白癬は足だけの病気ではありません。お腹、背中、太もも、腕、どこにでもできます。逆に言えば、体の白癬が見つかった方は、ほぼ必ずご自身の足か爪を調べる価値があります。
体部白癬(ぜにたむし)とは何か
白癬菌というカビ(真菌)が、皮膚のいちばん外側にある角質層に住みついて増えた状態です。角質のケラチンというたんぱく質を栄養にするので、皮膚の浅いところだけで広がっていきます。血液に乗って全身に回るような病気ではありません。
どこからうつるのか。臨床で多い順に並べると、次のようになります。
- 自分の足白癬・爪白癬から、自分の体へ — これが最も多い経路です。足をさわった手で体をかく、バスマットや床に落ちた角質が体につく、といった形で移ります(関連記事: 足の水虫)
- ペットから — 犬・猫・ハムスター・ウサギが持つ白癬菌がうつることがあります。動物由来のものは炎症が強く出やすく、赤みもかゆみもはっきりするのが特徴です(関連記事: ペットからうつる皮膚の病気)
- 人から人へ — 柔道・レスリング・相撲など、肌が直接ふれあう競技で部内に広がることがあります。寝具やタオルの共用でも起こります
- 土から — 頻度としては多くありません
汗をかいて蒸れる場所、こすれる場所ほど増えやすく、夏から初秋にかけて相談が増えます。
見分け方 — 「フチ」を見る
体部白癬らしさは、形とフチに出ます。真ん中は治ったように見えて色が薄く、外側の輪だけが赤く盛り上がり、小さなブツブツや粉をふいている——これが典型です。カビが外側へ向かって陣地を広げていくので、こういう形になります。
| 体部白癬 | 湿疹・かぶれ | 乾癬 | |
|---|---|---|---|
| 形 | 円形・輪状。フチがはっきりしている | 輪郭がぼやけて広がる | 円形のこともあるが厚みが均一 |
| 中心 | 治ったように色が薄い | 中心もふちも同じ見た目 | 中心まで厚い赤 |
| フチ | 盛り上がり、粉をふく・小さな水ぶくれ | 段差が少ない | 銀白色の厚いフケ状 |
| かゆみ | あるが、湿疹ほど強くないことも | 強いことが多い | あったりなかったり |
| 左右差 | 片側・数か所に散らばる | 接触した部分に一致 | ひじ・ひざなど左右対称が多い |
| ステロイドの反応 | 一時的に軽くなり、その後広がる | よくなる | よくなる |
ただし、見た目だけで確実に決められるものではありません。わたしたちも顕微鏡で確認してから薬を決めます(関連記事: 皮膚の真菌検査)。
ステロイドを塗ると、なぜ悪化するのか
市販の「かゆみ止め」の多くにはステロイドが入っています。ステロイドは炎症を抑える薬なので、塗ると赤みもかゆみも数日で軽くなります。ここで「効いた」と思ってしまうのが落とし穴です。
炎症を抑えるということは、カビと戦っている免疫の働きも抑えるということです。その結果カビは増え、薬をやめたとたんに前より広い範囲が赤くなります。輪の形もぼやけ、湿疹との区別がつきにくい見た目に変わってしまいます。
この状態になると、顕微鏡検査でカビを見つけるのも難しくなります。ですから、受診される際はすでに塗った薬があれば現物を持ってきてください。薬をいったん数日休んでから検査をすることもあります。
検査と治療
検査は、赤い輪のフチの部分の皮膚をごく薄く採って、顕微鏡で菌を探します。痛みはほとんどなく、その場で結果が出ます。
治療は抗真菌薬の外用が基本です。ポイントは次の3つで、どれも「なぜそうするか」に理由があります。
- 見えている赤みより2〜3cm外側まで塗る — 菌は赤くなっている範囲の外側にもいるためです
- 赤みが消えても、そこからさらに2週間以上は続ける — 見た目が治っても角質の中に菌が残っており、ここでやめると高い確率で再発します
- 1日1回でよいものが多い — 回数を増やすより、続ける期間のほうが結果を左右します
範囲が広い場合、毛の生えている部分に深く入り込んでしまった場合(毛包に入ると外用薬が届きません)、頭部や顔の一部などでは、抗真菌薬の内服を使います。内服は肝機能や飲み合わせの確認が必要なため、自己判断では選べません。
なお、体部白癬は正しく治療すれば多くが治る病気です。治りにくいときは、診断が違うか、塗る範囲・期間が足りていないか、足や爪という「供給源」が残っているかのどれかであることがほとんどです。
家族やチームに広げないために
過剰に神経質になる必要はありませんが、接触する時間が長いものは分けてください。バスマット、タオル、寝具、柔道着やユニフォームが主な経路です。洗濯は通常の洗剤で問題ありません。熱湯消毒や特別な薬剤は必要ないと考えてよく、それより「共用しない」ことのほうが効きます。
そしてもう一度書きますが、体に白癬が出た方は、足の裏と爪を必ず確認してください。そこが治らない限り、体だけを治しても同じことが起こります(関連記事: 爪水虫)。ご家族に水虫の方がいる場合も同じです(関連記事: 水虫をうつさない・もらわないために)。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| お風呂やプールでうつる? | お湯の中でうつることはまずありません | 問題になるのは湯船ではなく、共用のバスマットや床に落ちた角質だからです |
| 市販の水虫の薬を体に塗ってもいい? | 自己判断はおすすめしません | 診断が違ったときに、かえって刺激でかぶれることがあるためです。まず何かを確かめてからのほうが早く治ります |
| お風呂に入っていい? | いつも通り入ってください | 清潔にすることは治療の妨げになりません。ゴシゴシ洗うのは避けてください |
| ペットが原因のとき、ペットも治療が要る? | 動物病院にご相談ください | ペット側が治っていないと、人だけ治しても繰り返すためです |
| 運動部の練習は休むべき? | 肌が直接ふれあう競技は、治療が始まって落ち着くまで相談を | 直接接触が主な感染経路であり、チーム内で広がると全員の治療期間が延びるためです |
受診の目安
- 受診を — 輪のように広がる赤みがある。フチが盛り上がっている
- 受診を — 市販のかゆみ止めを塗って、いったん良くなったのに広がった
- 受診を — 足や爪に水虫がある状態で、体にも赤みが出てきた
- 受診を — ペットを飼っていて、動物にも脱毛やかさぶたがある
- 早めに受診を — 頭・顔・ひげの部分にできた、赤みが強く腫れて膿をもってきた
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬」(確認日: 2026-09-19)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-19)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

