「部活の仲間が何人も、首に赤い丸ができている」「市販の塗り薬で治ったと思ったら、また出てきた」「監督から皮膚科で調べてくるように言われた」。トンズランス感染症は、格闘技の選手を中心に広がる、水虫と同じ仲間のカビ(白癬菌)による感染症です。本人が気づきにくく、チーム全体での対策が必要になるのが特徴です。
トンズランス感染症とは(仕組み)
原因は、白癬菌の一種であるトリコフィトン・トンズランスという菌です。足の水虫の菌とは種類が違い、肌と肌の接触や、マット・道着を介してうつります。日本では格闘技の選手の間で広がり、学校の部活やクラブ単位で集団発生することがあります。
この菌は皮膚の表面だけでなく、髪の毛の中や毛穴の奥にも入り込みます。頭に菌がいても症状がほとんど出ない「保菌者」がいて、知らないうちに仲間にうつしてしまうことが、広がりやすい理由です。
症状・見分け
- 体(首・顔・腕・胸など): 数mm〜数cmの、ふちが少し盛り上がった輪っか状の赤み。かゆみは軽いことが多い。組み合ったときに接触する場所にできやすい
- 頭: フケが増える、軽いかゆみ、毛が抜けて黒い点のように見える部分がある。まったく症状がないことも多い
| 考えられるもの | 見た目 | ポイント |
|---|---|---|
| トンズランス感染症 | 小さな輪っか状の赤み。首・顔・上半身 | 仲間にも同じ症状。格闘技をしている |
| 湿疹・あせも | 境目のぼんやりした赤み、細かいブツブツ | 輪っか状にはなりにくい |
| とびひ | 水ぶくれ・黄色いかさぶた | 細菌感染。急に広がる |
| ヘルペス(格闘家ヘルペス) | 小さな水ぶくれが集まる。ピリピリした痛み | ウイルス感染。発熱を伴うことも |
診断は、赤みの部分の皮膚を少し取って顕微鏡でカビを確認します。頭については、ヘアブラシで髪をとかして菌を集め、培養する検査(ヘアブラシ法)で、症状のない保菌者も見つけることができます。
治療
体の皮膚だけに出ている場合は、抗真菌薬(カビを退治する薬)の塗り薬で治療します。見た目がきれいになってからも、しばらく塗り続けます。
頭に菌がいる場合は、塗り薬だけでは治りません。菌が髪の毛の中にいて、塗り薬が届かないためです。この場合は飲み薬で治療し、あわせて抗真菌成分を含むシャンプーを使うことがあります。治療の終わりは、見た目ではなく、検査で菌が消えたことを確かめて決めます。
注意したいのは、ステロイドの塗り薬を自己判断で使わないことです。赤みが一時的に引いて見えても、菌は増えて広がります。
部活・チームでの予防
一人だけ治しても、チームに保菌者が残っていると再びうつります。チーム単位で取り組むことが大切です。
- 練習が終わったら、できるだけ早くシャワーを浴び、体と頭を洗う
- 道着・タオルは毎回洗濯し、共用しない
- 練習前後にマットを掃除する
- 症状のある人は、治療を始め、医師と相談して組み合う練習への参加を判断する
- 仲間に症状が出たら、症状のない人も含めて検査を検討する
受診の目安
- 格闘技をしていて、首・顔・上半身に輪っか状の赤みがある
- チームの仲間に同じような症状の人がいる
- 頭のフケが増えた、部分的に毛が抜けている
- 市販の塗り薬で治ったと思ったのに、また出てきた
診察室でよく聞かれる質問
試合や練習は休まないといけませんか?
一律に何日休むと決まっているわけではありません。治療を始めて、赤みのある部分を覆えるかどうか、大会の規定なども含めて医師と相談して決めます。治療を始めずに組み合うのは避けてください。
家族にもうつりますか?
家族にうつることもあります。タオルや枕、ヘアブラシは分けて使ってください。
治ったあと、また感染しますか?
一度治っても免疫ができるわけではないため、チームに菌が残っていれば再びうつります。チーム全体での対策を続けることが、再発を防ぐ近道です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(確認日: 2026-10-09)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-09)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

