皮膚に食いついたマダニは、つぶしたり無理に引き抜いたりせず、できるだけ早く皮膚科などで除去してもらいましょう。取った後も数週間は体調に注意し、発熱・強いだるさ・広がる赤みなどがあれば受診してください。
登山やキャンプ、草刈り、庭仕事、河川敷や草地での散歩。マダニに咬まれるのは、特別な場所に出かけたときだけではありません。民家の裏庭や田畑のあぜ道などにも生息しており、身近な野外活動がきっかけになります。
咬まれたからといって、必ず感染症になるわけではありません。ただし、マダニが皮膚に付いているときの対応と、取り除いた後の体調の確認は大切です。
マダニは、布団やカーペットにいるダニとは別のもの
マダニは、主に屋外の草むらや森林などに生息するダニです。草や葉の上で待ち構え、通りかかった人や動物の体・衣類に取りつきます。
成虫は数ミリほどですが、吸血すると腹部が大きく膨らみ、1センチを超えることもあります。口の部分を皮膚に差し込み、種類や成長段階によっては、数日から10日以上にわたって吸血します。
一方、布団やカーペットにいるヒョウヒダニは、主にアレルギーの原因になるダニで、人に食いついて吸血するマダニとは異なります。
マダニに咬まれても、痛みやかゆみをほとんど感じないことがあります。「気づいたら、ほくろのようなものが付いていた」「小さなできものだと思っていた」という見つかり方もあります。
マダニに咬まれたときの見え方
| 状況 | 見え方の例 | 対応 |
|---|---|---|
| マダニが付いている | 黒〜茶色の粒が皮膚に食い込んでいる。ほくろやかさぶたのように見える | つぶしたり無理に引っ張ったりせず、早めに受診 |
| 吸血して膨らんでいる | 灰色や褐色などの、豆のようなものが皮膚に付いている | 自然に落ちるのを待たず、早めに受診 |
| 自分で取ってしまった後 | 小さな傷、黒い点、赤み、硬いしこりなどが残る | 残った部分を針などでほじらず、皮膚科に相談 |
| 咬まれた後に赤みが拡大する | 数日〜数週間後、咬まれた場所の周囲の赤みが徐々に大きくなる | 感染症の可能性もあるため受診 |
黒い点が見えても、それだけで「マダニの口が残っている」とは断定できません。かさぶたなどの場合もあり、診察で確認します。
マダニは衣類で隠れた場所にも取りつきます。わきの下、足の付け根、ひざの裏、腰まわり、耳の後ろ、髪の生え際などを確認しましょう。乳幼児では、髪の毛の中や頭皮も見落とさないことが大切です。
無理に引き抜かないほうがよい理由
口の部分が皮膚に残ることがある
マダニは口の部分を皮膚に差し込み、しっかりと固定して吸血しています。胴体をつかんで無理に引っ張ると、口の部分がちぎれて皮膚に残ることがあります。
残った部分が異物となって、炎症や硬いしこり、チクチクした違和感につながる場合があります。
腹部をつぶすと、体液が皮膚内に入りやすくなるおそれがある
指や毛抜きで腹部を強くつまむと、マダニの体液が咬み口から皮膚内に流れ込むおそれがあります。
「とにかく虫を取ろう」と、つぶしたり引きちぎったりしないでください。
ワセリン・アルコール・火などで取ろうとしない
ワセリンを厚く塗る、アルコールをかける、火を近づけるといった方法で、マダニを離れさせようとするのは避けましょう。マダニを刺激するほか、皮膚の傷ややけどにつながるおそれもあります。
ここで避けたいのは、付いているマダニを取るために薬剤などを使うことです。除去後の傷の洗浄や、医療機関で行う処置とは区別してください。
医療機関では、どのように取り除くの?
皮膚科などでは、マダニの付き方や皮膚の状態を確認し、適切な器具で口の部分を含めて除去します。
付き方によっては器具だけで取れる場合もありますが、強く固定されている場合などは、局所麻酔をして周囲の皮膚ごと小さく切除することがあります。すべての方に切開や縫合が必要なわけではありません。
また、「無理に引き抜かない」ことと同じくらい、除去を遅らせないことも大切です。自然に落ちるまで何日も待つのではなく、できるだけ早く医療機関に相談してください。
夜間や休日などで受診先が分からない場合は、近くの医療機関や地域の救急相談窓口に連絡しましょう。
すでに自分で取ってしまった場合
慌てて傷を広げたり、残った黒い部分を針でほじったりしないでください。まずは咬まれた場所と手を石けんと流水で洗い、皮膚科で相談しましょう。
「きれいに取れたように見える」ことと、「感染症の心配がなくなった」ことは別です。反対に、口の部分が残っているからといって、必ず感染症になるわけでもありません。
傷の状態と、その後の体調を分けて確認することが大切です。
取った後に注意する感染症
マダニの一部は、ウイルスや細菌などを媒介します。日本で注意したい代表的な感染症には、次のようなものがあります。
| 感染症 | 咬まれてから症状が出るまでの目安 | 主な症状・注意点 |
|---|---|---|
| 重症熱性血小板減少症候群(SFTS) | 6日〜2週間程度 | 発熱、強いだるさ、食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢など。重症化することがある |
| 日本紅斑熱 | 2〜8日程度 | 発熱、頭痛、だるさ、全身の発疹など。咬まれた場所に黒いかさぶたを伴うことがある |
| ライム病 | 初期症状は3〜30日程度 | 咬まれた場所から徐々に広がる赤み。発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などを伴うことがある |
期間はあくまで目安です。すべての症状がそろうとは限らず、咬まれた記憶や、はっきりした咬み跡がない場合もあります。
また、SFTSは西日本だけで注意すればよい病気ではありません。厚生労働省は全国的に感染リスクがあると考えており、住んでいる地域だけで感染の可能性を否定しないことが大切です。
なお、つつが虫病も野外活動後に注意したい感染症ですが、媒介するのはマダニではなく、ツツガムシという別のダニの幼虫です。
「2週間何もなければ、すべて安心」とは言い切れない
マダニに咬まれた後は数週間、目安として約1か月は、発熱や発疹、体調の変化に注意しましょう。
ライム病の赤みは、咬まれてから時間がたって現れることがあります。赤みは輪のようになる場合もあれば、全体が赤いまま広がる場合もあり、「輪になっていないから違う」とは判断できません。
咬まれた直後の小さな赤みだけで感染症とは限りませんが、日ごとに範囲が広がる場合は受診してください。写真を撮っておくと、変化を伝えやすくなります。
約1か月という期間も、「それを過ぎればどんな症状も無関係」という意味ではありません。その後に気になる症状が出た場合も、マダニに咬まれたことを医師に伝えましょう。
山や草むらに入るときの予防
肌を出さず、衣類の隙間を減らす
長袖・長ズボンを着用し、シャツの裾はズボンの中へ、ズボンの裾は靴下や長靴の中へ入れます。足全体を覆う靴を選び、サンダルは避けましょう。
明るい色の服は、付着したマダニを見つけやすくなります。草むらに直接座ったり、むやみに藪へ入ったりすることも避けてください。
「マダニに有効」と表示された虫よけを使う
ディートやイカリジンを含む虫よけ剤のうち、マダニへの効果が表示されている製品を選びます。
使用できる年齢や回数、衣類にも使えるかどうかは製品によって異なります。特に子どもに使用する場合は、表示を確認してください。
虫よけだけで完全に防げるわけではありません。服装や帰宅後の確認と組み合わせましょう。
帰宅後は、衣類と全身を確認する
上着や荷物にマダニが付いていないか確認し、室内へ持ち込まないようにします。衣類に付いたマダニは、粘着テープなどで取り除く方法もあります。
シャワーや入浴の際には、わきの下、腰まわり、足の付け根、ひざの裏、耳の後ろ、頭皮などを確認してください。入浴は発見の機会になりますが、すでに食いついたマダニが、お湯や石けんで確実に落ちるわけではありません。
ペットにもマダニが付きます。散歩後に体を確認し、動物用の予防薬については獣医師に相談しましょう。
受診の目安
マダニが付いているときは、症状がなくても早めに相談
皮膚にマダニが食いついている場合は、痛みやかゆみがなくても、できるだけ早く皮膚科や外科などで除去してもらいましょう。
自分で取った後に黒い点やしこりが残る場合、赤み・腫れ・痛みが増す場合も、皮膚科で確認してください。
発熱や体調不良が出た場合は、その日のうちに受診
マダニに咬まれた後や、山・草むらで活動した後に、次のような症状が出た場合は早めの診察が必要です。
- 発熱、強いだるさ、頭痛、筋肉痛や関節痛
- 食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
- 全身に広がる発疹、咬まれた場所から拡大する赤み
発熱や全身症状があるときは、皮膚科だけにこだわらず、内科や救急外来などを受診してください。受診前に電話で「マダニに咬まれた後に発熱している」と伝えると、案内を受けやすくなります。
「咬まれた日、または発見した日」「活動した場所」「マダニを取り除いた日」「症状が始まった日」をメモしておきましょう。咬まれた記憶がなくても、野外活動の時期や場所は診断の手がかりになります。
意識がぼんやりする、息苦しい、立てないほどぐったりしている、出血が止まらないなどの場合は、119番で救急車を要請してください。
受診の必要性に迷うときは、茨城県では大人は「#7119」、子どもは「#8000」で救急電話相談を利用できます。
よくある質問
Q.症状がなくても、すぐに血液検査を受ければ安心できますか?
症状のない段階の検査だけで、「これから感染症を発症しない」と確認することはできません。
例えば、ライム病の抗体検査は感染直後には陽性にならないことがあり、症状のない方に一律に行う検査ではありません。検査の必要性や時期は、咬まれた地域や症状などから医師が判断します。
Q.予防のために、抗菌薬を飲んだほうがよいですか?
マダニに咬まれた方全員に、予防目的の抗菌薬が必要なわけではありません。また、SFTSはウイルスによる感染症なので、抗菌薬で予防することはできません。
北米のライム病流行地域では、マダニの種類や吸血時間など、一定の条件を満たす場合に予防投与が検討されます。ただし、その対応を日本でのすべてのマダニ刺咬に、そのまま当てはめることはできません。
旅行先を含め、どこで咬まれたかを伝え、処方の必要性を相談しましょう。手元に残っている抗菌薬を自己判断で飲むのは避けてください。
Q.取れたマダニは、捨てずに持って行ったほうがよいですか?
可能であれば、すでに取れた虫体を密閉できる容器や袋に入れて持参してください。素手でつぶさず、受診まで安全に保管しましょう。写真も参考になります。
ただし、虫体がなくても診察は受けられます。捨ててしまったからといって、探し直すために受診を遅らせる必要はありません。
Q.マダニに咬まれた人から、家族にうつりますか?
咬まれたという事実だけで、家族に感染が広がるわけではありません。
ただし、SFTSを発症した人の血液や体液との直接接触によって感染した事例があります。発熱などでSFTSが疑われる場合は、血液や嘔吐物などに素手で触れず、医療機関の指示に従ってください。
一緒に野外活動をした家族は、同じ場所でマダニに取りつかれている可能性があるため、それぞれの体も確認しましょう。
Q.ペットから、人が感染することはありますか?
ペットに付いたマダニが人を咬む場合に加え、SFTSに感染して発症した犬や猫の血液・唾液などとの接触が、人への感染につながることがあります。
ペットに元気がない、発熱や嘔吐があるといった場合は、動物病院へ事前に連絡して相談してください。体液に直接触れたり、咬まれたりしないように注意しましょう。
あび皮膚科クリニックは、2027年に茨城県つくば市での開業を予定しています。開業後は、マダニ刺症の診療や除去にも対応する予定です。
関連ページ
参考文献・参考情報
- 厚生労働省「ダニ媒介感染症」。マダニ刺咬時の対応、除去後の健康観察、予防について。
- 厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」第9版、2026年10月7日。症状、潜伏期間、国内の感染リスク、患者・動物からの感染について。
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:ダニ類による感染症」Q1・Q2・Q3。ダニの種類、マダニの生態、除去方法、口器の残存、虫体の持参について。
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:ダニ類による感染症」Q6・Q9。つつが虫病の媒介動物、虫よけ、野外活動後の確認について。
- 国立健康危機管理研究機構「マダニ対策、今できること」2025年8月改訂。生息環境、服装、ディート・イカリジンを用いた予防について。
- 国立健康危機管理研究機構「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」「日本紅斑熱とは(詳細版)」「ライム病(詳細版)」。各感染症の症状と特徴について。
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「What to Do After a Tick Bite」。早期除去の重要性、避けるべき除去方法、虫体の扱いと検査の限界について。
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「Signs and Symptoms of Untreated Lyme Disease」。初期症状の出現時期、遊走性紅斑の特徴について。
- Lantos PM, et al. AAN/ACR/IDSA 2020 Guidelines for the Prevention, Diagnosis and Treatment of Lyme Disease. Clinical Infectious Diseases. 2021;72:e1–e48. 無症状者の検査、感染リスクの評価、北米における予防投与について。
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」。茨城県の救急電話相談窓口について。
本記事は一般的な医療情報です。個別の症状や治療については、医療機関でご相談ください。

