どちらも「ヘルペスウイルス」の仲間が起こす病気で、名前が似ているために混同されます。しかし受診を急ぐ理由の大きさがまったく違うため、診察室では最初にここをはっきり分けて説明しています。原因ウイルスから整理します。
原因ウイルスが別物 — 「初めての水ぼうそう」の残りか、繰り返す常連か
帯状疱疹は、子どものころにかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが、そのまま神経の根元に潜んでいて、加齢や疲れ・病気などで免疫が落ちたときに再び暴れ出す病気です。神経に沿って出てくるので、体の片側に帯のように並ぶという特徴的な形になります。日本では3人に1人が80歳までに経験するとされており、決して珍しい病気ではありません(関連記事: 帯状疱疹の基本)。
単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによるもので、口のまわりに出る口唇ヘルペスと、陰部に出る性器ヘルペスが代表です。こちらも一度感染すると神経に潜みますが、疲れ・発熱・紫外線・生理前などをきっかけに、同じ場所に何度も出てくるのが特徴です。1回あたりの範囲は小さく、数日から10日ほどで治まります。
見分け方の表
| 帯状疱疹 | 単純ヘルペス | |
|---|---|---|
| 広がり方 | 体の片側だけに、帯状に広がる | 唇や陰部など一点に、小さくまとまって出る |
| 体の正中を越えるか | 越えない(背骨のラインで止まる) | もともと狭いので関係しない |
| 痛み | ピリピリ・ズキズキと強い。発疹より先に痛むことが多い | ムズムズ・チクチクする違和感が主。痛みは軽いことが多い |
| 繰り返すか | 基本的に一生に一度。ただし再発する人もいる | 同じ場所に繰り返す |
| 範囲 | 手のひらより広いことが多い | 10円玉以下のことが多い |
| 発熱・だるさ | 伴うことがある | 初めての感染時は強く出るが、再発時は軽い |
| 後遺症 | 痛みが数か月以上残ることがある(帯状疱疹後神経痛) | 基本的に残らない |
| 予防手段 | 50歳以上ではワクチンがある | ワクチンはない。繰り返す場合は再発を抑える内服がある |
いちばん大事な違いは「急ぎ方」です
帯状疱疹は、発疹が出てからできるだけ早く抗ウイルス薬の飲み薬を始めます。目安は3日以内で、これは薬がウイルスの増える途中にしか効かないためです。早く始めるほど、皮膚の治りが早くなるだけでなく、あとあとまで痛みが残る帯状疱疹後神経痛のリスクを下げることが期待できます。「痛いけれど発疹がまだ小さいから、もう少し様子を見よう」という判断が、いちばんもったいない選択です。
単純ヘルペスも抗ウイルス薬を使いますが、こちらは「早ければ早いほどよい」ものの、数日遅れたから重大な後遺症が残る、という性質の病気ではありません。ただし、アトピー性皮膚炎のある方が広範囲に広がる場合(カポジ水痘様発疹症)や、目のまわりに出た場合は別で、これは急ぎます。
治療と、周囲へのうつり方
帯状疱疹は抗ウイルス薬の内服が中心で、痛みに対しては痛み止めを併用します。痛みが強い場合や、顔・目のまわりに出た場合、水ぶくれが広い範囲に及ぶ場合は入院して点滴で治療することもあります。顔に出たときは、目や耳の神経に及んで視力や聴力、顔の動きに影響することがあるため、皮膚だけの問題として扱いません(関連記事: 顔の帯状疱疹)。
うつり方も違います。帯状疱疹が他人に「帯状疱疹として」うつることはありません。ただし水ぶくれの中にはウイルスがいるため、水ぼうそうにかかっていない乳幼児や、ワクチンを打っていない人には「水ぼうそう」としてうつる可能性があります。水ぶくれがかさぶたになるまでは、そうした方との濃厚な接触を避けてください。単純ヘルペスは、水ぶくれや唾液を介して直接うつります。口唇ヘルペスが出ている間は、タオルや食器の共用、キス、赤ちゃんへの接触は控えてください。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| お風呂に入っていいですか? | どちらも入って構いません。ただし帯状疱疹の急性期に長湯やサウナは避けてください | 清潔を保つほうが細菌の二次感染を防げます。一方で体力を消耗する入浴は回復の妨げになるためです |
| お酒は飲んでいいですか? | 治るまでは控えてください | 免疫が落ちている状態で悪化させる要因になり、抗ウイルス薬を飲んでいる期間でもあるためです |
| 痛いだけで発疹がありません。受診してもいいですか? | 受診してください | 帯状疱疹は発疹の数日前から痛みだけが出ることがあり、そこで受診歴があると、発疹が出た時点ですぐ治療に入れるためです |
| 帯状疱疹は再発しますか? | 基本的には一生に一度ですが、再発する方もいます | 免疫の状態によって再び活性化することがあるためです。繰り返す場合は背景を調べることがあります |
| 予防する方法はありますか? | 帯状疱疹には50歳以上で受けられるワクチンがあります | 発症と重症化のリスクを下げることが期待できます(関連記事: 帯状疱疹ワクチン)。単純ヘルペスにワクチンはありません |
受診の目安
- その日のうちに受診を — 体の片側だけにピリピリした痛みと赤い発疹・水ぶくれが出た
- その日のうちに受診を — 顔、特に額・まぶた・鼻の先に発疹が出た(目の合併症に注意が必要です)
- その日のうちに受診を — 耳の痛みと同時に、顔が動かしにくい・めまい・耳鳴りがある
- 受診を — 唇のヘルペスが年に何度も繰り返す(再発を抑える治療の相談ができます)
- 早めの受診を — アトピー性皮膚炎があり、湿疹の場所にヘルペスのような小さな水ぶくれが急に広がった
- 夜間・休日でも相談を — 痛みで眠れない、発疹が急速に広がる、高熱がある(判断に迷うときは #7119 に相談できます)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ヘルペスと帯状疱疹」(確認日: 2026-09-22)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-22)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

