「頬にできた赤いできものが、1か月でずいぶん大きくなった」「痛くもかゆくもないので様子を見ていた」「ニキビかと思ったけれど治らない」。皮膚のしこりの多くは、粉瘤や脂肪腫のような良性のものです。そのなかで、成長の速さだけは見逃してほしくないサインです。ここでは、まれな皮膚がんであるメルケル細胞がんを例に、受診を急ぐべきしこりの特徴を説明します。
メルケル細胞がんとは(仕組み)
皮膚の中で、触った感覚を伝える役割をもつ細胞の仲間から生じると考えられている、まれな皮膚がんです。主に70歳以上の高齢の方に見られます。
発症には、長年の紫外線と、多くの人がもっているウイルス(メルケル細胞ポリオーマウイルス)が関わっていると考えられています。臓器移植後や血液の病気などで免疫が弱くなっている方では、起こりやすいことが知られています。
ほかの皮膚がんに比べて進行が速く、リンパ節に転移しやすい性質があります。だからこそ、早い段階で見つけて治療を始めることが大切です。
症状・見分け
典型的には、顔・頭・首・腕など日に当たる場所に、表面がつるっとした、赤〜赤紫色のドーム状の硬いしこりができます。痛みやかゆみはほとんどありません。そのため「ただのできもの」と思われやすいのが特徴です。
海外では、特徴の頭文字をとった「AEIOU」という目安が知られています。
- 痛みなどの症状がない
- 急に大きくなる(3か月以内に目立って大きくなる)
- 免疫が弱くなっている
- 50歳以上
- 日に当たる場所にできている
このうち複数が当てはまるしこりは、念のため調べておく価値があります。
| 考えられるもの | 見た目 | 大きくなる速さ |
|---|---|---|
| 粉瘤 | 皮膚色。中央に小さな黒い点 | ゆっくり。炎症で急に腫れることも |
| 老人性血管腫 | 鮮やかな赤の小さな粒 | ほとんど変わらない |
| 化膿性肉芽腫 | 赤いぷよぷよした粒。出血しやすい | 数週間で大きくなる |
| メルケル細胞がん | 赤〜赤紫色の硬いドーム状のしこり | 数週間〜数か月で目立って大きくなる |
見た目だけでは見分けられないことも多く、確定には、しこりの一部または全部を取って顕微鏡で調べる病理検査が必要です。
治療
診断がついたら、CTなどで広がりを調べたうえで治療方針を決めます。基本は手術でしこりを周りの皮膚ごと取り除くことで、あわせてリンパ節への転移を調べる検査を行うことがあります。
手術のあとに放射線治療を加えることも多く、進行している場合には免疫の働きを利用する薬などによる治療が行われます。治療は、皮膚がんを専門に扱う病院で、複数の診療科が連携して行います。
受診の目安
- 顔や頭、首のしこりが、数週間〜数か月で目に見えて大きくなっている
- 痛みのない赤〜赤紫色の硬いしこりがある
- しこりの近く(首・わきの下など)のリンパ節が腫れている
- 免疫を抑える薬を飲んでいて、新しいしこりができた
受診の前に、しこりの写真を撮っておくと、大きくなる速さを医師と共有しやすくなります。
診察室でよく聞かれる質問
しこりが大きくなっていたら、がんなのでしょうか?
大きくなるしこりの多くは、粉瘤や化膿性肉芽腫などの良性のものです。ただ、良性か悪性かは見た目だけでは決められないため、急に大きくなるしこりは一度診察を受けてください。
高齢なので、手術は負担になりませんか?
多くの皮膚の手術は局所麻酔で行えます。年齢や持病、しこりの場所に合わせて、負担の少ない方法を相談して決めます。
日焼け止めで予防できますか?
紫外線はメルケル細胞がんを含む多くの皮膚がんに関わるため、日焼け止めや帽子で紫外線を避けることは、皮膚がんのリスクを下げるために役立ちます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 皮膚悪性腫瘍(確認日: 2026-10-09)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-09)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

