「胸に、ぽつぽつと小さなしこりがいくつもある」「押すと黄色っぽい油のようなものが出てきた」「粉瘤と言われたことがあるけど、数が多すぎる気がする」。多発性脂腺嚢腫は、粉瘤と似ていますが、できる数と中身に違いがあるできものです。
多発性脂腺嚢腫とは(仕組み)
皮膚には、毛穴の中に皮脂を出す皮脂腺(ひしせん)があります。多発性脂腺嚢腫は、毛穴と皮脂腺のつなぎ目の部分が小さな袋(嚢腫:のうしゅ)になり、中に皮脂などがたまってできるしこりです。
- 思春期〜若い年代で気づくことが多い
- 胸・ワキ・首・背中・腕の付け根・陰部など、皮脂腺の多い場所にできやすい
- 家族にも同じようなしこりがあることがある(体質が関わる場合がある)
良性のできもので、がんに変わるものではありません。人にうつることもありません。
症状と粉瘤との見分け方
- 数mm〜1cmほどの、やわらかい〜ややかたいしこり
- 肌色〜黄色っぽく、数個〜数十個散らばってできる
- ふだんは痛みもかゆみもない
- 針で刺したり押したりすると、黄色っぽい油のような液体や白っぽい中身が出ることがある
- ときどき、赤く腫れて痛む(炎症を起こす)ことがある
| できもの | 数・大きさ | 中身・特徴 |
|---|---|---|
| 多発性脂腺嚢腫 | 小さいものが多数 | 油のような黄色い液体。中央の黒い点(へそ)ははっきりしないことが多い |
| 粉瘤 | 1個〜数個。大きくなるものもある | くさいドロッとした白い中身(垢)。中央に黒い点があることが多い(関連記事: 粉瘤とは) |
| 脂肪腫 | 1個〜数個。数cmになることもある | 皮膚の奥にある、やわらかく動くしこり(関連記事: 脂肪腫) |
| ニキビ | 多数 | 毛穴の炎症。数日〜数週間で変化する(関連記事: ニキビ) |
| 化膿性汗腺炎 | ワキ・股などにくり返す | 痛いしこりと膿がくり返し、つながって傷あとが残る(関連記事: 化膿性汗腺炎) |
治療
痛みや炎症がなく、見た目も気にならないなら、治療せずに様子を見てかまいません。良性のできものであり、数が多いため、すべてを取ろうとすると体への負担が大きくなるからです。そのうえで、次のような場合に治療を考えます。
- 赤く腫れて痛む(炎症)をくり返す
- 下着やベルトなどに当たって気になる
- 見た目が気になる
| 治療 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 小さな切開による摘出 | 局所麻酔をして小さく切開し、中身と袋を取り出す。1回にいくつか一緒に処置することもある | 袋が残ると再発しやすい。小さな傷あとが残る |
| 切除(手術) | 大きいもの・炎症をくり返すものを、周りの皮膚ごと切り取って縫う | 確実に取れるが、傷あとは線状になる |
| 炎症を起こしたとき | 腫れが強ければ切開して膿を出す。炎症を抑える薬を使うことがある | 炎症が落ち着いてから、改めて摘出を考える |
胸やワキは、体質によっては傷あとが盛り上がりやすい(ケロイドになりやすい)場所です。治療するかどうかは、傷あとのリスクも含めて医師と相談してください(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕)。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 自分で針で刺して中身を出してもいいですか? | やめてください | 袋が残るのですぐにたまり直すうえ、細菌が入って炎症を起こすことがあるためです(関連記事: 粉瘤を自分で潰していい?) |
| 放っておくと増えますか? | 少しずつ増えることはありますが、急に増えたり大きくなったりすることは多くありません | 体質によってできやすいものなので、時間をかけて新しいものが出てくることがあります |
| 手術は保険でできますか? | 多くの場合は保険診療で相談できます | 皮膚のできものの摘出として扱われることが多いためです。見た目だけを目的とした治療の扱いは医療機関に確認してください |
受診の目安
- 受診を — しこりが多発性脂腺嚢腫なのか、粉瘤などほかのできものなのか確かめたい
- 受診を — 赤く腫れて痛むことをくり返す、下着などに当たって気になる
- 早めの受診を — 急に大きく腫れて熱をもつ、膿が出る、発熱がある
- 受診を — 1つだけ急に大きくなる、硬くて動かない、色が変わるなど、ほかと違うしこりがある
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 粉瘤(確認日: 2026-09-25)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-25)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

