美容の相談のなかでも、期待と実際のずれが起きやすい治療です。効果は分かりやすく出ますし、その日から変化が見えます。だからこそ、何ができて何ができないか、どこに注意が要るかを先に知っておく価値があります。
どういう治療か
ヒアルロン酸は、もともと皮膚の中にあって水分を保っている成分です。美容で使われるのは、体内で分解されにくいように加工し、ゲル状にしたものです。これを皮膚の下に注射して、へこんだ部分を物理的に押し上げ、輪郭をつくります。
製剤には硬さ(粘度)の違いがあり、目もとのような薄い皮膚には柔らかいもの、あごや鼻など形をつくる場所には硬いものが選ばれます。どの製剤をどの層に入れるかで、仕上がりも持続も変わります。
向く悩み・向かない悩み
| 内容 | 理由 | |
|---|---|---|
| 向いている | ほうれい線、目の下のくぼみ、こめかみや頬のボリューム減少、あご先の形、唇の厚み | いずれも「足りない体積を足す」という構造だからです |
| 向いている | 影によるくま(くぼみが原因のもの) | 光の当たり方が変わるためです。ただし色素沈着や血行が原因のくまには効きません(関連記事: 目の下のくま) |
| 向かない | 皮膚がたるんで余っている状態 | 余っているものは、足しても解決しません。入れるほど重くなり、かえって下がって見えることがあります |
| 向かない | 表情でできる細かいしわ(眉間・目尻の動くしわ) | 筋肉の動きが原因なので、別の方法が検討されます(関連記事: しわ治療の比較) |
| 向かない | 肌質そのもの(きめ・毛穴・くすみ) | 体積の問題ではないためです |
「たるみをヒアルロン酸で何とかしたい」というご相談が最も多く、そして最もずれやすいところです。入れるべきかどうかは、鏡の前で皮膚を軽く上に引き上げてみると分かります。引き上げて改善するならたるみ、押し上げて改善するならへこみです。
効果はどのくらい続くか
製剤の種類と入れる場所によりますが、おおむね半年から1年半程度とされています。動きの多い場所ほど早く吸収され、動きの少ない場所では長く残ります。
永久に残るものではない、という点は不利にも有利にも働きます。気に入らなければ時間が解決するという意味では安心材料ですし、維持したければ繰り返す必要があるという意味では負担になります。繰り返すことを前提に、年単位でどう付き合っていくかを考えてから始めるほうが、途中でやめたときの落差に悩まされません。
リスク — 頻度の高いものと、まれだが重いもの
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
頻度が高く、多くは自然に治まるもの
- 内出血 — 1〜2週間で吸収されます。予定のある時期は避けてください
- 腫れ — 数日で落ち着くことが多いものの、部位によっては2週間ほど残ります
- 左右差・凹凸 — なじむまで判断を待つことがあります
- 触ると分かるしこり — 入れる層や量によって起こります
頻度は低いものの、重大なもの
- 血管の中に入ってしまうことによる障害 — 血流が止まり、皮膚が白くなってから黒く壊死することがあります。目の周囲では、まれに視力障害に至った報告があります。施術中や直後の強い痛み、皮膚が白くまだらになる、目の見え方の異常は、その場で伝えるべきサインです
- 遅れて出る腫れやしこり — 数か月後に、感染や免疫の反応として現れることがあります
- 感染 — 赤み、熱感、痛みを伴います
これらが起きたときにどう動けるかが、医療機関を選ぶ基準になります。ヒアルロン酸を分解する酵素(ヒアルロニダーゼ)を使って溶かす方法がありますが、国内では美容目的での使用が適応外にあたる場合があり、取り扱いは医療機関ごとに異なります。常備しているか、緊急時にどこへつなぐのかを、施術の前に確認してください。
受ける前に確認しておきたいこと
- どの製剤を、どこに、どれだけ入れるか — 製剤名まで説明されるかどうかは、ひとつの目安になります
- 担当する医師が誰か、合併症が起きたときに誰が対応するか
- 緊急時の連絡手段と、夜間・休日の対応
- 修正や追加の費用がどうなるか
- 過去に受けた注入の履歴 — 別の種類の充填剤が入っている場合、対応が変わるためです
費用は1本あたり数万円からが目安とされていますが、製剤や部位、必要量によって幅があり、医療機関ごとに異なります。複数本が必要になることもあるため、総額で確認してください。
※ヒアルロン酸注入は美容目的の自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。腫れ・内出血・しこり・感染のほか、まれに血流障害などの重い合併症が起こることがあります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| その日から普通に過ごせますか? | 日常生活は可能ですが、当日の激しい運動・飲酒・長風呂は避けてください | 血流が増えると腫れと内出血が強く出るためです |
| メイクはいつから? | 針の跡が落ち着いてから。当日は避けるのが無難です | 刺入部から細菌が入るのを防ぐためです |
| 痛みはありますか? | 麻酔のクリームや麻酔入りの製剤で和らげます | まったく無痛にはなりませんが、多くの方が耐えられる範囲です |
| やめたら元より悪くなりますか? | 基本的には元の状態に戻っていきます | 吸収される素材だからです。ただし大量に長期間入れた場合の変化については個人差があります |
| アレルギーは? | 頻度は低いとされています | ただしゼロではないため、過去の反応歴は必ず申告してください |
受診の目安(注入後に異変があったとき)
- すぐに施術先へ連絡を — 施術中・直後に強い痛みがある
- すぐに施術先へ連絡を — 皮膚が白く、あるいは紫にまだらになってきた
- すぐに受診を — 目の見え方に異常がある、目の奥が痛む
- 受診を — 赤く腫れて熱をもつ、押すと強く痛む(感染が疑われます)
- 受診を — 数週間〜数か月後にしこりや腫れが出てきた
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本美容外科学会(確認日: 2026-09-19)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-19)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

