乾燥やかゆみで受診された方に保湿剤をお出しすると、多くの場合よくなります。ですが「保湿しているのに追いつかない」という方の話をよく聞くと、洗い方で毎日ふりだしに戻していることがある。塗る話の前に、落としすぎていないかを見る。順番としてはこちらが先です。
なぜ洗いすぎると荒れるのか
皮膚のいちばん外側には、角層という厚さ0.02mmほどの層があり、細胞の隙間を脂(セラミドなど)が埋めて、水分を逃さず、刺激を通さない壁になっています。この壁の材料は、体が自分で作った皮脂と天然保湿因子です。
洗浄剤は油汚れを落とすものですから、汚れと一緒に、この壁の材料も持っていきます。さらにナイロンタオルでこすれば、角層そのものが物理的に削れます。壁が薄くなれば、水分は逃げ、外からの刺激は入り、かゆくなる。かいてさらに壁が壊れる、という循環に入ります。
特に、すね・腰まわり・背中・上腕の外側は、もともと皮脂腺が少なく乾きやすい場所です。ここを毎日ナイロンタオルで洗っている方は、冬になると必ず粉をふきます(関連記事: 乾燥肌・皮脂欠乏性湿疹)。
洗い方 — 場所で変える
| 部位 | 石けん・ボディソープ | 洗い方 | 理由 |
|---|---|---|---|
| わき・股・足の指の間・首 | 毎日使う | よく泡立てて手でなでる | 汗腺・皮脂腺が多く、においや菌の温床になるため |
| 顔・胸・背中の中央 | 毎日〜1日おき | 手でやさしく | 皮脂が多い一方、ニキビや脂漏性皮膚炎も起きやすい場所だから |
| 腕・脚・おなか | 週に数回でよい | お湯でなでるだけの日を作る | 皮脂が少なく、汚れも汗が主体で、お湯だけでほぼ落ちるため |
| すね・腰・高齢の方の全身 | 控えめに | お湯洗い中心。乾燥する季節は特に | もっとも乾燥しやすく、かゆみの出発点になりやすいため |
| 赤ちゃん | 1日1回 | 手のひらで、くびれの内側まで開いて | 皮膚が薄くこすれに弱い一方、くびれに汚れが残ると湿疹の原因になるため |
道具は手のひらがいちばんです。どうしても道具を使いたい場合は、やわらかい綿タオルを軽く滑らせる程度に。ナイロンタオルを長年強く使い続けると、背中や腰に茶色いさざ波状の色素沈着(摩擦黒皮症)が残ることがあります。これは治るのに年単位かかるので、予防のほうが確実です。
湯温・時間・入浴後
- 湯温は38〜40℃ — 42℃を超えると皮脂が急に溶け出し、かゆみの神経も刺激されます。「気持ちいいくらい熱い」は、皮膚には熱すぎます
- 浸かるのは10〜15分まで — 長湯は角層をふやけさせ、出たあとの乾燥を強めます
- 拭き方はこすらず、押さえる — タオルでゴシゴシ拭くのは、洗うときのこすりと同じことをしています
- 保湿は5分以内に — 入浴直後は角層に水分がある状態です。この水分の上から蓋をするのが、いちばん効率がいいタイミングです(関連記事: 保湿剤の種類と使い分け)
- 入浴剤 — 硫黄を含むものは乾燥を強めることがあります。乾燥が気になる時期は保湿系のものを
かゆみが強い方は、お風呂上がりにかゆくなるとよく言われます。これは体が温まって血流が増えることで起こるので、湯温を下げ、上がったらすぐ保湿し、部屋を暖めすぎないことで軽くできます(関連記事: 夜になるとかゆい)。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 石けんを使わないと不潔では? | 汗と汚れの大半はお湯で落ちます | 皮脂に溶けた汚れは洗浄剤が要りますが、腕や脚は皮脂自体が少ないためです。においの出る場所だけ石けんを使えば足ります |
| 固形石けんとボディソープ、どちらがいい? | どちらでも構いません。泡立てて使えるかどうかのほうが大事です | 泡が摩擦を減らすためで、原液を直接肌に塗ってこするのがいちばん負担になります |
| 殺菌成分入りのものは? | 常用はおすすめしません | 皮膚を守っている常在菌まで減らすためで、においが気になる部位に限って使うのが現実的です(関連記事: 足のにおい) |
| 汗をかいた日は何度も洗っていい? | シャワーで流すだけにしてください | 洗浄剤を1日に何度も使うと確実に乾きます。汗そのものはお湯で流せば十分だからです |
| アトピーでもお風呂に入っていい? | 入ってください | 皮膚を清潔に保つことは治療の一部で、じくじくした部位も泡でやさしく洗ったほうが治りが早いためです |
| 温泉やプールは? | 湿疹が落ち着いていれば構いません | ただし上がったあとに真水で流して保湿してください(関連記事: プール・温泉と皮膚) |
受診の目安
- 受診を — 洗い方を変えて保湿もしているのに、2週間たってもかゆみが続く
- 受診を — かき壊して赤くなっている、じくじくしている(湿疹になっており、保湿だけでは戻りません)
- 受診を — 背中や腰に茶色いさざ波状の色素沈着が出てきた
- 受診を — 発疹がないのに全身がかゆい(関連記事: 発疹がないのにかゆい)
- 早めに受診を — かゆみで眠れない日が続いている
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「アトピー性皮膚炎」(確認日: 2026-09-20)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

