介護をしていると、「毎日きれいに拭いているのに、お尻の赤みが治らない」という場面に必ず出会います。実は、その「きれいに拭く」がかぶれを長引かせていることがあります。赤ちゃんのおむつかぶれと原因は似ていますが、大人では皮膚が薄く回復が遅いこと、寝ている時間が長いこと、便の性状が変わりやすいことが重なり、こじれやすくなります。医療や介護の現場では、この状態を失禁関連皮膚炎(IAD)と呼んで、床ずれとは区別して扱います。
なぜ起きるのか — 皮膚が「ふやけて」から傷む
順番があります。まずおむつの中の湿気で、皮膚の表面がふやけます。ふやけた皮膚は、乾いた皮膚の何分の1かの力で傷つくようになります。そこへ尿がアンモニアに分解されてアルカリに傾き、便に含まれる消化酵素が皮膚のたんぱく質を分解します。最後に、拭き取りの摩擦がとどめを刺します。
つまり原因の主役は、便>蒸れ>摩擦>尿の順です。とくに下痢のときは、たった数時間でただれます。「昨日まで何ともなかったのに朝には真っ赤」というのは、下痢が始まったサインであることが多いのです。
もうひとつ、抗菌薬を飲んだあとに悪化するケースがあります。腸内の細菌のバランスが崩れて下痢になることと、皮膚のカンジダ(カビの一種)が増えやすくなることが重なるためです。
床ずれ・カンジダ・間擦疹との見分け
| 場所 | 見た目 | 考え方 | |
|---|---|---|---|
| おむつかぶれ(IAD) | おむつが触れる面全体。お尻の丸み、股、太ももの付け根 | 境目のぼんやりした赤み、てかり、ひどいと皮がめくれる | 刺激から遠ざける。乾かして膜をつくる |
| 床ずれ(褥瘡) | 骨が出っ張る一点。尾てい骨、かかと、太ももの外側 | 押しても消えない赤み、硬い、紫がかる、くぼむ | 体位を変える。急ぐ(関連記事: 床ずれのはじまり) |
| 皮膚カンジダ症 | 股の溝、しわの奥、おむつの縁 | 赤みの外側に点々とした小さなブツブツ(衛星病変)、白いかす | 抗真菌薬。ステロイドだけでは悪化(関連記事: 皮膚カンジダ症) |
| 間擦疹 | 皮膚と皮膚が触れ合う面 | 左右が鏡のように赤い、ときにびらん | こすれと汗を減らす(関連記事: 間擦疹) |
| 蜂窩織炎 | 一部から広がる | 熱をもって腫れる、押すと痛い、発熱 | 早急に受診(関連記事: 蜂窩織炎) |
現場でいちばん多い取り違えが、カンジダをかぶれと思ってステロイドの軟膏を塗り続けてしまうことです。最初の数日は赤みが引いて良くなったように見え、その後じわじわ広がります。「赤みの縁の外に、ポツポツと小さな発疹が飛んでいる」ときはカンジダを疑ってください。ここは顕微鏡で見ればその場で判断できるところなので、迷ったら自己判断で薬を続けないほうが早いです。
今日から変えられる3つのこと
①ぬるま湯で流す。拭き取らない。便が付いたときは、洗浄ボトルやシャワーでぬるま湯をかけて浮かせ、押さえるように水分を取ります。理由は、ふやけた皮膚はこすった瞬間に表面がはがれるためです。おしりふきを使う場合は、ゴシゴシせず「置いて、押さえる」。アルコールや香料を含むものは避けます。
②乾かしてから、膜をつくる。水分が残ったまま覆うと蒸れが続きます。少し待って乾かしてから、白色ワセリンや亜鉛華軟膏、撥水性のクリームを薄く伸ばして、尿や便が直接皮膚に触れないようにします。亜鉛華軟膏は落とすときにこすりがちなので、オリーブオイルなどでゆるめてから拭うと皮膚を傷めません。
③当てている時間を短くする。交換の回数を増やす、サイズと吸収量を体に合わせる、重ね当てをやめる——これだけで数日後の赤みが変わります。重ね当ては吸収を妨げ、内側の一枚が湿ったまま張りつくので、かえって悪くなります。可能なら、日中に短時間でもおむつを外して風を通す時間をつくってください。
薬については、炎症が強いときに一時的にステロイドの外用を使うことはありますが、長く続けるものではありません。おむつの中は薬が効きやすく、皮膚が薄くなりやすい場所だからです。ただれて浸出液が出ているときは、軟膏の種類や被覆材の選び方が変わりますので、家庭にある薬で粘らず相談してください(関連記事: ジュクジュクする・滲出液が出るのはなぜ)。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 石けんで毎回洗ったほうがいい? | 便のときだけで十分です | 石けんは皮脂も一緒に落とすため、毎回使うと乾燥とバリアの低下を招くからです |
| ベビーパウダーは使える? | おすすめしません | 湿気と混ざって固まり、しわの奥で塊になってこすれるためです |
| 赤ちゃん用のおしりふきでいい? | 成分は問題ありませんが、使い方が問題です | 大人の皮膚は薄く弱っていることが多く、同じ力で拭くと傷になるためで、量を多めに使って滑らせるように |
| 市販のかゆみ止めを塗っていい? | 自己判断で続けないでください | カンジダが混じっていると悪化し、原因が見えなくなるためです(関連記事: 市販のかゆみ止め) |
| 何科にかかればいい? | 皮膚科で構いません | かぶれ・カンジダ・床ずれの区別がその場でつき、必要に応じて訪問看護や主治医と役割を分けられるためです |
受診の目安
- すぐに受診を — 熱が出た、赤みが広がって熱をもつ、押すと強く痛がる(皮膚の下の感染を考えます)
- すぐに受診を — 皮膚が黒っぽく変色した、深くえぐれた、骨の出っ張りの上が硬い(床ずれの進行)
- 早めに受診を — 赤みの外側に点々と小さな発疹が飛んでいる(カンジダの可能性)
- 早めに受診を — 1週間ケアを変えても赤みが引かない、皮がめくれて浸出液が出る
- 受診を — 下痢が続いていて、毎回ただれてしまう(皮膚の対策だけでは追いつきません)
- 受診を — 本人が痛みを訴えられない状態で、おむつ交換のたびに顔をしかめる
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「かぶれ(接触皮膚炎)」(確認日: 2026-09-20)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

