「昼にはおでこと鼻がテカテカになる」「皮脂が気になって1日に何度も洗顔しているのに、かえってベタつく」「表面は脂っぽいのに、つっぱる感じもする」。こうした悩みは、皮膚科でもよく相談されます。皮脂が多いのは体質の面も大きいのですが、毎日のスキンケアの方向を少し変えるだけで、落ち着く方は少なくありません。脂性肌とインナードライの仕組みと、皮膚科的なケアの考え方をお伝えします。
脂性肌・インナードライとは(仕組み)
皮脂は、毛穴の奥にある皮脂腺(ひしせん)という小さな袋から出る油分です。肌の表面に薄い膜をつくり、水分の蒸発を防いだり、外からの刺激を和らげたりする大切な役目があります。皮脂そのものは悪者ではありません。
皮脂腺はおでこ・鼻・あごのいわゆるTゾーン、頭皮、胸や背中の中央に多く集まっています。皮脂の量は、男性ホルモンの働き、年齢(思春期から20〜30代に多い)、季節(気温の高い夏)、体質などで変わります。男性ホルモンは女性の体にもあり、生理前にテカりやニキビが増えるのもこのためです。
インナードライは医学用語ではありませんが、「表面は皮脂でテカるのに、角層(肌のいちばん外側の層)の水分は足りていない」状態を指して使われる言葉です。洗いすぎや、脂取り紙・ふき取りの使いすぎで角層の水分と保湿成分が失われると、肌はつっぱり、ごわつき、刺激に弱くなります。脂性肌と乾燥は正反対のようでいて、同じ人の肌で同時に起きていることが珍しくありません。
洗いすぎが逆効果になる理由
テカりが気になると、洗顔の回数を増やしたり、洗浄力の強い洗顔料でゴシゴシ洗ったりしがちです。しかし、これは逆効果になりやすいケアです。理由は2つあります。
1つ目は、洗いすぎで角層のバリアが傷むことです。皮脂と一緒に、角層の水分を抱え込む成分まで流れてしまうため、乾燥や赤み、ヒリヒリ感が出やすくなります。2つ目は、皮脂が一時的にゼロになっても、しばらくすると元の量に戻ることです。皮脂の量は主にホルモンや体質で決まるため、洗うことで皮脂腺の働きそのものを弱めることはできません。結局、洗うたびに肌だけが傷む、という状態になります。
「洗いすぎると皮脂がもっと出る」と言われることもありますが、そこまではっきりとは分かっていません。確かに言えるのは、洗いすぎても皮脂は減らず、肌荒れだけが増えるということです。
症状・見分け(脂性肌と関係の深い皮膚トラブル)
脂性肌そのものは病気ではありませんが、皮脂が多いことで起こりやすい皮膚の病気があります。次のような症状があれば、スキンケアだけでなく治療が役立ちます。
| 考えられるもの | 見た目・症状 | 出やすい場所 |
|---|---|---|
| ニキビ(尋常性ざ瘡) | 白・黒のポツポツ(毛穴の詰まり)、赤いブツブツ、膿をもったブツブツ | おでこ、頬、あご、胸・背中 |
| 毛穴の開き・黒ずみ | 毛穴が目立つ、角栓が黒く見える | 鼻、頬の内側 |
| 脂漏性皮膚炎 | 赤みと、黄色っぽいベタついたフケのような皮むけ。軽いかゆみ | 小鼻のわき、眉間、生え際、耳のまわり、頭皮 |
| マラセチア毛包炎 | 同じ大きさの小さな赤いブツブツが並ぶ。かゆみを伴うことも | 胸・背中・肩 |
特に、小鼻のわきや眉のあたりが赤くカサカサするのを「乾燥」と思って油分の多いクリームを重ねると、脂漏性皮膚炎が悪化することがあります。脂っぽい場所の赤みやフケは、乾燥ではなく炎症のことがあると覚えておいてください。
治療・セルフケア(洗顔と保湿の実際)
- 洗顔は朝晩の1日2回まで: 洗顔料をよく泡立て、泡を転がすように洗い、ぬるま湯で十分にすすぎます。熱いお湯は皮脂だけでなく保湿成分まで奪うため避けます。スクラブや毎日のピーリングはバリアを傷めやすいので控えめに。
- 日中のテカりは押さえるだけ: ティッシュや脂取り紙で軽く押さえる程度にし、何度もこすり取らないようにします。
- 保湿は「さっぱり」で続ける: 脂性肌でも保湿は必要です。油分の多いクリームより、化粧水と軽いジェル・乳液を選ぶと続けやすくなります。「ノンコメドジェニックテスト済み」(ニキビのもとになりにくいことを確かめた表示)の製品は選ぶ目安になります。
- 生活: 十分な睡眠をとり、髪の毛や手で顔を触る癖を減らすことも、肌への刺激を減らす助けになります。
皮膚科では、ニキビがあれば保険のニキビ治療薬(アダパレンや過酸化ベンゾイルの塗り薬など)で毛穴の詰まりから治療します。脂漏性皮膚炎には、カビ(真菌)を抑える塗り薬や弱めのステロイドを使います。皮脂の量そのものを大きく変える治療は限られているため、肌のトラブルを治しながら、スキンケアで状態を整えていくのが現実的な進め方です。
受診の目安
- ニキビが増えている、赤く腫れて痛いニキビがある、跡が残りはじめた
- 小鼻のわきや眉、生え際の赤み・フケのような皮むけが続く
- スキンケアを見直して1〜2か月たっても、赤み・ヒリヒリ・ブツブツが治まらない
- 急に皮脂やニキビが増え、生理不順や体毛の増加も気になる
最後の項目のように、ホルモンのバランスが関係していそうな場合は、婦人科や内科での相談が役立つこともあります。
よくある質問
脂性肌なら、保湿はしなくてもいいですか?
保湿はしてください。皮脂が多くても角層の水分が足りていないことがあり、保湿を抜くとつっぱりやごわつきが出やすくなります。べたつきが苦手なら、さっぱりした化粧水やジェルで十分です。
朝は水だけの洗顔でもいいですか?
夜にきちんと洗顔しているなら、乾燥しやすい方や季節は朝はぬるま湯だけでもかまいません。テカりやニキビが気になる方は、朝も洗顔料を使って問題ありません。大切なのは回数を増やしすぎないことです。
皮脂を減らす食べ物はありますか?
特定の食べ物で皮脂の量がはっきり減る、という根拠は乏しいのが現状です。脂っこいもの・甘いものを食べた後にニキビが増えると感じる方は、無理のない範囲で控えてみるとよいでしょう。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A にきび(確認日: 2026-09-29)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-29)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

