「家にあったかゆみ止めを塗ったら、最初は良くなったのに、だんだん広がってきた」「ステロイドを塗っている間はおさまるのに、やめるとすぐ戻る」「顔の赤みが、塗り薬でむしろ大きくなった」。こうしたときに疑われるのが、カビ(真菌)の一種である白癬菌の感染が、ステロイドで見た目を変えてしまった状態です。
異型白癬とは(仕組み)
水虫と同じ白癬菌が、足以外の体や顔、股などに感染したものを「体部白癬(ぜにたむし)」「股部白癬(いんきんたむし)」「顔面白癬」と呼びます。本来は、ふちが赤く盛り上がって皮がむけ、中央が治りかけて見える輪の形が特徴です。
ところが、湿疹と思ってステロイドの塗り薬を使うと、ステロイドが皮膚の炎症(赤み・かゆみ)を抑える一方で、皮膚の免疫の働きも弱めるため、白癬菌はかえって増えやすくなります。その結果、典型的な輪の形がくずれ、ぼんやりした赤みとして広がる状態になります。本来の姿が分からなくなるので「異型(いけい)白癬」、英語では「正体を隠した白癬(tinea incognito)」と呼ばれます。
ステロイドそのものが悪いわけではありません。湿疹には正しく使えばよく効く薬です。問題は、診断がつかないまま塗った発疹が、実はカビだったという点にあります。
症状・見分け方
- ステロイドを塗ると少し良くなるが、やめるとすぐにぶり返す
- 塗っている場所が、少しずつ外側へ広がっていく
- ふちがはっきりしない赤み、または輪がいくつも重なったような形
- 小さなブツブツや膿をもった点が混ざることがある
- 家族に水虫の人がいる、犬や猫を飼っている、柔道やレスリングなど肌が触れ合う競技をしている
| 湿疹 | 異型白癬 | |
|---|---|---|
| ステロイドを塗ると | 良くなり、塗る回数を減らしてもおさまっていく | 一時的に軽くなるが、広がる・ぶり返す |
| 形 | ふちがはっきりしないことが多い | 輪の名残りがある、外側へ広がる |
| 顕微鏡検査 | カビは見つからない | カビが見つかる |
見た目だけでは湿疹と区別がつかないことも多く、決め手は顕微鏡で皮膚のカビを探す検査(真菌検査)です。皮膚の表面を少しこすり取るだけで、痛みはほとんどありません。
治療
- ステロイドを中止する: 医師の指示のもとで中止します。やめた直後は一時的に赤みやかゆみが強くなることがあります
- 抗真菌薬(カビの薬)の塗り薬: 見えている範囲より少し広めに、毎日塗ります。見た目が消えてもしばらく続けるのが大切です。途中でやめると再発しやすいためです
- 飲み薬の抗真菌薬: 範囲が広い、毛の生えている場所(頭・ひげ)に及んでいる、塗り薬で良くならない場合に使います
治るまでの期間は範囲によりますが、塗り薬でも数週間〜1か月以上かかることが一般的です。
受診の目安
- 市販や手持ちのステロイドを1〜2週間塗っても良くならない、広がる
- やめるとすぐに戻る、をくり返している
- 輪のような形の赤みがある
- 家族やペットに皮膚のカビの病気がある
受診の前に、使っていた薬の名前(箱や写真)を持っていくと診断に役立ちます。
よくある質問
検査の前に、薬はやめておいた方がいいですか?
カビの薬を塗っていると検査でカビが見つかりにくくなるため、受診前に市販の水虫薬などを塗り始めるのは避けてください。ステロイドについては、自己判断でやめるより、使っていたことをそのまま伝えていただければ大丈夫です。
市販の「かゆみ止め」にもステロイドは入っていますか?
入っているものが多くあります。かゆみ止めや虫刺されの薬、湿疹用の薬など、名前だけでは分からないことがあるため、成分表示を確認しましょう。
家族にうつりますか?
白癬菌は、タオル・バスマットの共用や、肌の接触でうつることがあります。治るまではタオルを分け、足に水虫がある家族も一緒に治療すると再発を防げます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(確認日: 2026-09-30)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-30)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

