「何年も前から胸にある硬いしこりが、最近こぶのように盛り上がってきた」「ケロイドと言われていたけれど、少しずつ大きくなっている」「痛みはないので放っておいた」。隆起性皮膚線維肉腫は、進み方がとてもゆっくりなため、良性のしこりと思われて長く様子を見られていることがある病気です。
隆起性皮膚線維肉腫とは(仕組み)
皮膚の深いところ(真皮)には、皮膚の弾力を支える線維をつくる細胞があります。隆起性皮膚線維肉腫は、この線維をつくる細胞に近い細胞が、がんとして増える病気です。「肉腫」とは、皮膚の表面ではなく、皮膚の奥の支える組織から生じる悪性腫瘍を指す言葉です。
- 20〜50代に多く、比較的若い方にも起こります
- 胸・お腹・背中・肩・太ももなど、体幹に近い場所に多い
- 何年もかけてゆっくり大きくなります
- ほかの臓器への転移はまれですが、周りに根を張るように広がる性質があります
症状・見分け方
- はじめは、皮膚の中の硬く平らなしこりや、赤〜茶色・紫色の板のような硬さ
- 数年かけて、こぶのように盛り上がる部分が1つ〜いくつか出てくる
- 痛みやかゆみは、ほとんどない
- 大きくなると、表面がただれたり出血したりすることがある
| しこり | 性質 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 皮膚線維腫 | 良性 | 手足に多い。1cm前後で大きさがほぼ変わらない。つまむと中央がへこむ |
| ケロイド・肥厚性瘢痕 | 良性 | 傷やニキビのあとにできる。かゆみ・痛みがある |
| 粉瘤 | 良性 | 中央に黒い点。中身が出る。炎症で赤く腫れることがある |
| 隆起性皮膚線維肉腫 | 悪性(転移はまれ) | 体幹に多い。傷のきっかけがない。何年もかけて大きくなり、こぶが増える |
見た目だけでは良性のしこりと区別がつきにくいため、皮膚科では超音波(エコー)検査やMRIで広がりを確認し、皮膚の一部を取って調べる検査(皮膚生検)で診断します。
治療
治療の基本は手術で切り取ることです。この腫瘍は、目に見える部分の外側にも、細い根を伸ばすように広がっています。そのため、見た目の範囲より広め・深めに、周りの組織を含めて切除します。取り切れていないと、数年たってから同じ場所に再発することがあるためです。
- 切り取った部分の端に腫瘍が残っていないかを、病理検査でていねいに確認します
- 切除の範囲が広くなるため、皮膚を移植する・周りの皮膚を移動させるなどの方法で傷を閉じることがあります
- 手術が難しい場合には、飲み薬(分子標的薬。この病気に対しては国内では適応外)や放射線治療を検討することもあります
治療は、皮膚の悪性腫瘍の手術経験が多い専門施設で行われることが一般的です。皮膚科クリニックでは、疑いをもって検査し、適切な施設につなぐことが大切な役割になります。
受診の目安
- 胸・お腹・背中などに、硬いしこりがあり、少しずつ大きくなっている
- しこりの上に、こぶのような盛り上がりが増えてきた
- ケロイドと言われているが、傷のきっかけが思い当たらない
- 手術で取ったしこりが、同じ場所にまたできてきた
痛みがなく急に悪くなる病気ではありませんが、早い段階で取るほど切除の範囲を小さくできます。「何年も変わらないから大丈夫」ではなく、「少しずつ大きくなっている」ことに気づいたら受診してください。
よくある質問
命に関わる病気ですか?
多くの場合、ほかの臓器へ転移することはまれで、適切な範囲で切除できれば経過のよい病気とされています。一方で、取り残しがあると再発を繰り返すことがあるため、最初の手術でしっかり取り切ることが大切です。
手術のあと、どのくらい通院が必要ですか?
再発は数年たってから起こることもあるため、手術後も数年単位で定期的に診察を受けるのが一般的です。同じ場所にしこりを感じたら、次の予約を待たずに受診してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 皮膚悪性腫瘍(確認日: 2026-10-03)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-03)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

