「冬だけでなく一年中、下唇がガサガサしている」「唇と肌の境目がぼやけてきた」「同じところが何度もかさぶたになる」。唇の荒れはよくある悩みで、多くは乾燥や唇をなめるクセによるものです。ただ、屋外の仕事や趣味で長く日に当たってきた方の下唇に、なかなか治らない荒れが続く場合は、紫外線のダメージが積み重なった状態を考えます。
日光口唇炎とは(仕組み)
唇の皮膚はとても薄く、日焼けを防ぐメラニン(肌の色素)も少ないため、紫外線の影響を受けやすい場所です。とくに下唇は上を向いていて、日光が当たりやすいため、ほとんどが下唇に起こります。
何十年も紫外線を浴び続けると、唇の表面の細胞が少しずつ傷つき、形の乱れた細胞が増えてきます。これが日光口唇炎で、顔や手の甲にできる「日光角化症(紫外線による皮膚がんの手前の状態)」の唇版と考えられています。
なりやすいのは、農作業・屋外の仕事・ゴルフや釣りなど、長年屋外で過ごしてきた方、色白で日焼けすると赤くなりやすい方、喫煙習慣のある方です。年齢では中高年以降に多くみられます。
症状・見分け
はじめは「乾燥しやすい唇」と区別がつきにくいのですが、次のような変化が何か月も続くのが特徴です。
- 下唇がカサカサ・ガサガサし、薄い皮が何度もむける
- 唇の色が白っぽく、または赤くまだらになる
- 唇と肌の境目(赤い部分のふち)がぼやけてくる
- 同じ場所にかさぶたや小さなただれをくり返す
| 見るところ | よくある唇の荒れ(口唇炎) | 日光口唇炎 |
|---|---|---|
| 場所 | 上下の唇どちらも | ほとんどが下唇 |
| 経過 | 保湿やなめるクセをやめると数週間で良くなる | 保湿しても何か月も続く |
| 見た目 | 赤み・皮むけ・ひび割れ | 白っぽいざらつき、境目がぼやける、同じ所のかさぶた |
| きっかけ | 乾燥、なめる、リップ・化粧品のかぶれ | 長年の紫外線、喫煙 |
注意したいのは、硬いしこりになる・盛り上がってくる・ただれが治らず出血する場合です。これは唇の皮膚がん(有棘細胞がん)に進んでいるサインのことがあり、早めの受診が大切です。日光口唇炎の段階で見つけて治療すれば、がんに進むのを防ぐことが期待できます。
治療・セルフケア
診察では、唇をよく観察し、必要に応じてダーモスコピー(拡大鏡)で表面を確認します。がんとの区別が難しいときは、局所麻酔をして一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行います。
治療は、範囲や厚みに応じて選びます。範囲がせまく浅い場合は、液体窒素で凍らせる治療(凍結療法)が基本です。範囲が広い場合や、がんが疑われる部分がある場合は、その部分を手術で切り取ります。どの治療でも、治療後に唇の色や形が少し変わることがあるため、事前に説明を受けて選びます。
治療と同じくらい大切なのが、これ以上紫外線を当てないことです。理由は、紫外線のダメージが続くと、治療したあとも別の場所に同じ変化が出てくるためです。
- 外に出るときは、SPF入りのリップクリームをこまめに塗り直す(食事や飲み物で落ちるため)
- つばの広い帽子をかぶる
- 喫煙している方は禁煙を考える
- 唇をなめる・皮をむくクセを控える
受診の目安
- 下唇の荒れが、保湿を続けても2か月以上良くならない
- 同じ場所に、かさぶたやただれをくり返す
- 唇と肌の境目がぼやけてきた、白っぽい部分が広がってきた
- 硬いしこり・盛り上がり・出血がある(早めに受診)
診察室でよく聞かれる質問
普通のリップクリームを塗っていれば大丈夫ですか?
保湿だけでは、紫外線のダメージは防げません。日中はSPF入りのものを選び、こまめに塗り直してください。すでに何か月も治らない荒れがある場合は、塗り続けて様子を見るより、一度診察を受けてください。
唇の皮膚がんはよくある病気ですか?
多い病気ではありません。ただ、日光口唇炎の一部は年単位でがんに進むことが知られているため、「治らない荒れ」を見逃さないことが大切です。早い段階なら、治療も小さく済むことが多いです。
口唇ヘルペスとはどう違いますか?
口唇ヘルペスは、ピリピリした違和感のあとに小さな水ぶくれが集まって出て、1〜2週間で治ります。日光口唇炎は水ぶくれをつくらず、荒れた状態が長く続くのが違いです。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 皮膚悪性腫瘍(確認日: 2026-10-10)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-10)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

