「熱帯魚を飼っていて、指の小さな傷がなかなか治らない」「釣った魚をさばいたあと、指が紫っぽく腫れてきた」。手のけがは日常的によくあるものですが、水や魚に関係するけがには、特有の菌による感染が隠れていることがあります。見た目は普通の化膿と似ているため、きっかけを伝えることが診断の近道になります。
どんな病気か(仕組み)
水や魚に関係する手の感染症として、代表的なものが2つあります。臨床で相談されることの多い順に紹介します。
1. 皮膚非結核性抗酸菌症(マリヌム菌など)
結核菌の仲間ですが、人から人へはうつらない菌です。熱帯魚の水槽、池、プールなどの水の中にいて、指や手の小さな傷から入ります。菌が増えるのがゆっくりなため、けがから2〜3週間ほどたってから症状が出てくるのが特徴です。英語で「水槽肉芽腫(フィッシュタンク・グラニュローマ)」とも呼ばれます。
2. 類丹毒(るいたんどく)
魚や肉、とくに魚介類を扱う方に多い細菌の感染です。魚のトゲやウロコ、骨で手を傷つけたあと、数日以内に指が赤紫色に腫れ、ズキズキ痛んだりかゆくなったりします。
症状・見分け
| 見るところ | 皮膚非結核性抗酸菌症 | 類丹毒 | 普通の化膿・蜂窩織炎 |
|---|---|---|---|
| きっかけ | 水槽・池・プールの水 | 魚・魚介・肉の扱い | ささくれ、切り傷など |
| 出るまで | 2〜3週間 | 数日 | 1〜3日 |
| 見た目 | 赤いしこり、いぼ状・ただれ。腕に向かって点々と並ぶことも | 赤紫色の腫れ。境目がはっきり | 赤く熱をもった腫れ、膿 |
| 痛み | あまり痛くないことが多い | ズキズキ・かゆみ | 強い痛み |
| 経過 | 何週間〜何か月も治らない | 放っておくと広がる | 抗菌薬で数日〜1週間で良くなる |
皮膚非結核性抗酸菌症では、指のしこりから腕の方へ、リンパの流れに沿って新しいしこりが並んでできることがあります。同じような並び方をする病気に、土やバラのトゲから入るカビの感染(スポロトリコーシス)があります。
また、海水や生の魚介でけがをしたあと、急に腫れが広がって強く痛み、熱が出る場合は、ビブリオという細菌による重い感染のことがあります。とくに肝臓の病気や糖尿病がある方は重症化しやすいため、ためらわず救急を受診してください。迷うときは#7119、ぐったりしている場合は119番です。
治療・セルフケア
皮膚非結核性抗酸菌症の診断には、しこりの一部を取って調べる検査(皮膚生検)と、菌を育てて確かめる検査(培養)を行います。この菌は普通の培養の温度では育ちにくいため、検査をする側が疑っているかどうかが結果を左右します。だからこそ「水槽を触った」という情報が大切です。
治療は、抗菌薬の飲み薬を数か月続けるのが基本です。いくつかの種類を組み合わせることもあります。この菌は熱に弱い性質があるため、患部を温める治療(温熱療法)を組み合わせることもあります。しこりが小さく限られている場合は、手術で取り除くこともあります。
類丹毒は、ペニシリン系などの抗菌薬がよく効き、適切に治療すれば多くは1〜2週間で良くなります。
予防として、手に傷があるときは水槽の掃除や魚をさばく作業でゴム手袋を使うことをおすすめします。理由は、菌は傷口からしか入らないためです。作業のあとは石けんでよく手を洗ってください。
受診の目安
- 水槽・池・魚に関係するけがのあと、しこりやただれが2週間以上治らない
- 指のしこりから腕の方へ、新しいしこりが並んでできてきた
- 魚や肉を扱ったあと、指が赤紫に腫れて痛む・かゆい
- 腫れが急に広がる、強く痛む、熱が出た(すぐに受診・#7119)
診察室でよく聞かれる質問
水槽の魚は手放さないといけませんか?
手放す必要はありません。治療中と、治ってからも、手に傷があるときは手袋をして作業すれば、飼い続けられることがほとんどです。水を替えるときに水が跳ねる場所の傷にも気をつけてください。
家族にうつりますか?
皮膚非結核性抗酸菌症も類丹毒も、人から人へはうつりません。同じ水槽を触るご家族も、傷がなければ心配はいりません。
市販の抗菌の塗り薬で治りますか?
どちらも、市販の塗り薬だけで治すことは難しい病気です。何週間も塗って治らない場合は、自己判断で続けず受診してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-10)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-10)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

