「妊娠中に粉瘤が腫れてきた。手術してもいいの?」「授乳中だけど、ほくろが気になる」。お腹の赤ちゃんや母乳への影響を心配して、受診をためらう方は少なくありません。大切なのは、急ぐものと待てるものを分けて考えることです。
妊娠中・授乳中の皮膚の手術の考え方
皮膚のできものの手術は、多くが局所麻酔(手術する場所だけに効く麻酔)で行う、短時間の日帰り手術です。全身麻酔とは違い、麻酔薬の量も少なく、体全体への影響は限られます(関連記事: 局所麻酔とは)。
それでも妊娠中は、念のため「今やる必要があるか」を慎重に判断します。体勢や緊張による負担、手術後に使う痛み止めや抗菌薬の選択にも配慮が必要だからです。
妊娠中にできものが変化しやすい理由
妊娠中はホルモンの影響で、ほくろやシミが濃くなったり、血管が増えて赤いできもの(化膿性肉芽腫など)ができやすくなったりします。こうした変化の中には、出産後に自然に落ち着くものもあります。この点も「待てるかどうか」を判断する材料になります(関連記事: 妊娠中の肌トラブル)。
待つもの・待たないほうがよいものの見分け
| 状態 | 考え方 |
|---|---|
| 見た目が気になるほくろ、イボ、炎症のない粉瘤、脂肪腫 | 出産後まで待つのが基本 |
| 美容目的のレーザー治療 | 出産後、授乳が落ち着いてからが基本 |
| 炎症を起こして赤く腫れ、強く痛む粉瘤 | 切開して膿を出す処置を、妊娠中でも行うことがある |
| 出血をくり返す赤いできもの | 状態によって処置を検討する |
| 急に大きくなる、色や形がいびつなほくろ・できもの | 悪性の可能性を確かめるため、妊娠中でも検査(生検)や切除を行うことがある |
治療・セルフケア
妊娠中に手術や処置を行う場合
- 時期: 急ぐ必要がなければ、体調が比較的安定している妊娠中期に行うことが多いです
- 体勢: お腹が大きくなる時期は、長く仰向けになると気分が悪くなることがあります。横向きにする、背中にクッションを入れるなど、体勢を工夫します
- 術後の薬: 痛み止めや抗菌薬は、妊娠中に使いやすいものを選びます。市販の痛み止めを自己判断で飲まないでください
- 産科の主治医との連携: 妊娠週数と経過を伝え、必要に応じて産科と相談しながら進めます
出産後まで待つ場合のセルフケア
- 粉瘤を自分で押し出さない: 炎症を起こすきっかけになります(関連記事: 粉瘤を自分で潰してはいけない理由)
- 写真で大きさや色を記録しておく: 月1回ほど、同じ角度で撮っておくと、変化に気づきやすくなります
- 下着やベルトでこすれる場所は保護する: 刺激で炎症や出血が起こりにくくなります
授乳中の場合
皮膚の手術で使う局所麻酔は量が少なく、多くの場合、授乳を続けながら手術を受けられるとされています。術後の痛み止めや抗菌薬も、授乳中に使いやすいものを選べます。不安があれば、授乳中であることと、赤ちゃんの月齢を伝えてください(関連記事: 妊娠中・授乳中の皮膚の薬)。
受診の目安
- 粉瘤が赤く腫れて、ズキズキ痛む
- ほくろやできものが、短い期間で大きくなった、色や形が変わった
- できものから出血をくり返す
- しこりがあって、それが何なのかを確かめておきたい
受診するときは、妊娠中であること・妊娠週数・産科のかかりつけを、最初に伝えてください。診察だけで手術をしない場合でも、妊娠中に見ておくことで出産後の治療計画が立てやすくなります。
診察室でよく聞かれる質問
局所麻酔の注射は、お腹の赤ちゃんに影響しませんか?
皮膚の手術で使う局所麻酔は、手術する場所だけに効かせる少量の薬で、妊娠中にも使われている薬です。それでも不要な処置はしないのが原則なので、待てるものは出産後に回します。
出産後、いつから手術を受けられますか?
体調が回復し、通院の時間がとれるようになれば、時期に決まりはありません。傷の処置で何度か通院が必要になることがあるため、赤ちゃんを預けられる日程も含めて相談しましょう。
妊娠中にできた赤いできものは、出産後に消えますか?
妊娠中のホルモンの影響でできた赤いできものは、出産後に小さくなることがあります。ただし、出血をくり返す場合や消えない場合は、治療を検討します。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 粉瘤(確認日: 2026-10-14)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ホクロ(確認日: 2026-10-14)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

