「新しい薬を飲み始めて2〜3か月したら、シャンプーのたびに髪がごっそり抜ける」「薬の説明書に脱毛と書いてあって不安になった」「薬のせいなのか、年齢のせいなのか分からない」。持病の治療中の方から、こうした相談を受けることがあります。薬による抜け毛の仕組みと、起きやすい時期、受診するときのポイントを整理します。
薬剤性脱毛とは(仕組み)
髪の毛は、伸びる時期(成長期)、伸びるのが止まる時期(退行期)、抜け落ちる準備をする時期(休止期)をくり返しています。ふだんは髪の大部分が成長期にあり、休止期の髪が少しずつ抜けて入れ替わっています。
薬の影響で、この周期が乱れると抜け毛が増えます。薬による抜け毛は、大きく2つの型に分かれます。
- 休止期脱毛型…薬の影響で、成長期の髪が早めに休止期へ移り、一度にたくさん抜けます。薬を飲み始めてから2〜4か月ほどたってから抜け毛が増えるのが特徴で、頭全体の髪が少しずつ薄くなります。
- 成長期脱毛型…抗がん剤など、細胞が分裂するのを抑える薬で起きます。成長期の髪が作られなくなり、治療を始めて数週間で多くの髪が抜けます。
抜け毛が起きることがある主な薬
抜け毛が報告されている薬は多くありますが、飲んでいる人のすべてに起きるわけではなく、起きる頻度は薬によって大きく異なります。
- 抗がん剤(成長期脱毛型)
- 血液をサラサラにする薬の一部(抗凝固薬)
- てんかんの薬の一部
- 甲状腺の働きを抑える薬
- 高血圧や心臓の薬の一部
- ビタミンAに似た作用を持つ薬
- 一部の気分の波を整える薬
また、低用量ピルなどのホルモン剤は、飲み始めだけでなく、やめた後に抜け毛が増えることもあります。
症状とほかの抜け毛との見分け方
| 考えられるもの | 抜け方の特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 薬剤性脱毛(休止期型) | 頭全体がまんべんなく薄くなる | 薬を始めて2〜4か月後に増える |
| 出産・高熱・手術などの後の休止期脱毛 | 頭全体がまんべんなく薄くなる | 出来事の2〜3か月後に増える |
| 男性型・女性型の薄毛 | 頭頂部や生え際から少しずつ | 何年もかけてゆっくり進む |
| 円形脱毛症 | 丸く、境目のはっきりした脱毛 | 突然、部分的に抜ける |
| 甲状腺の病気・鉄不足 | 頭全体が薄くなる | だるさ、むくみ、動悸などを伴うことがある |
抜け毛の原因はひとつとは限りません。薬を始めた時期と、出産や体調の変化、ダイエットなどが重なっていることもあります。
治療とセルフケア
薬が原因と考えられる場合、処方した医師と相談して、薬の量を調整したり、別の薬に替えたりすることを検討します。病気の治療を優先したほうがよい場合は、薬を続けながら経過を見ることもあります。休止期脱毛型であれば、原因がなくなってから数か月で抜け毛が落ち着き、半年〜1年ほどかけて髪が戻っていくことが多いです。
皮膚科では、頭皮と髪の状態を観察し、必要に応じて血液検査で甲状腺の働きや鉄不足などを確かめます。ほかの原因が見つかれば、その治療を行います。
日常生活では、洗髪のときに強くこすらない、きつく結ばない、無理な食事制限をしない、といった頭皮と髪への負担を減らすことが大切です。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 抜け毛が気になるので、薬をやめてもいいですか?
A. 自己判断でやめないでください。病気によっては、薬を急にやめると症状が悪くなったり、危険な状態になったりすることがあります。抜け毛が気になることを処方した医師に伝え、替えられる薬があるか相談してください。
Q. 受診するとき、何を持っていけばいいですか?
A. お薬手帳を必ず持ってきてください。いつから何を飲み始めたか、いつから抜け毛が増えたかが分かると、薬が原因かどうかを考える大きな手がかりになります。抜け毛が増えた時期の前後に、出産、発熱、手術、ダイエットなどがあれば、それも伝えてください。
Q. 抗がん剤で抜けた髪は、また生えてきますか?
A. 多くの場合、治療が終わってから数か月で生え始めます。生えてきた髪は、一時的に髪質や色が変わることがあります。治療中の頭皮のケアについては、治療を受けている医療機関に相談してください。
受診の目安
- 薬を飲み始めてから、抜け毛が明らかに増えた(お薬手帳を持って受診)
- 抜け毛が3か月以上続いている、地肌が目立ってきた
- 丸く抜けている部分がある
- だるさ、むくみ、動悸、体重の変化など、抜け毛以外の症状もある(内科も受診)
- 頭皮に赤み、かゆみ、痛み、フケが多いなどの変化がある
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」(確認日: 2026-10-23)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

