「マラソン大会のゴール後、シャツに血がついていて驚いた」「練習の距離を伸ばしたら、毎回乳首がしみる」「シャワーがしみて痛い」。長距離のランニングや登山、自転車など、上半身が長時間こすれるスポーツで起こりやすいトラブルです。その日の手当てと予防のコツを整理します。
ジョガーズニップルとは(仕組み)
走っている間、腕の振りと上下の揺れに合わせて、シャツが乳首を何千回もこすります。乳首はまわりの皮膚より出っ張っていて皮膚も薄いため、こすれの影響を受けやすい場所です。
さらに、汗でシャツが湿ると、布が皮膚に張りついて摩擦が大きくなります。とくに綿のシャツは汗を吸って重くなり、乾きにくいため起こりやすいとされます。冬は、寒さで乳首が硬く出っ張ることや、乾燥で皮膚のバリアが弱まることも影響します。
男性に多いトラブルですが、女性でもスポーツブラが合っていない場合に起こることがあります。
症状と見分け方
| 状態 | 特徴 | 考えられること |
|---|---|---|
| ジョガーズニップル | 運動の後にヒリヒリ・出血。両側に出ることが多い。運動しない日は良くなる | こすれによるすり傷 |
| 乳頭・乳輪の湿疹 | 運動と関係なくかゆい、カサカサ・ジュクジュクする。アトピーのある方に多い | 湿疹(保湿とステロイドで治療) |
| ウェアや洗剤によるかぶれ | ウェアの当たる範囲が広く赤くかゆい | かぶれ |
| 片側だけ治らない湿疹 | 中高年で、片側の乳首・乳輪の赤み・ただれが何か月も続く | まれに乳房パジェット病(乳がんの一種)のことがあり、早めに受診 |
運動の後だけ痛み、休むと治まるならジョガーズニップルの可能性が高いと考えます。運動と関係なく続く場合や、片側だけ治らない場合は、こすれ以外の原因を確かめる必要があります。
手当てとセルフケア
擦れてしまった日の手当て
- シャワーでやさしく洗い流す。汗と汚れを落とします。石けんは泡で軽くなでる程度にし、ゴシゴシこすらないでください。
- ワセリンを塗って、ガーゼや絆創膏で覆う。傷を乾かすより、潤った状態に保つほうが早く治り、服とのこすれも防げます。
- 傷が治るまでは、こすれる運動を控えるか、しっかり保護してから走る。同じ場所をこすり続けると治りが遅れます。
ジュクジュクして服にくっつく場合は、はがすときに傷が開かないよう、くっつきにくいタイプのガーゼや、傷を潤った状態に保つ絆創膏(ハイドロコロイドなど)が便利です。
次から防ぐ方法
- 走る前に、乳首にワセリンをたっぷり塗る。摩擦を減らす最も手軽な方法です
- 絆創膏や、乳首用の保護シールで覆う。長距離の大会では、ワセリンと合わせて使う方も多いです
- 汗が乾きやすい化学繊維のウェアを選ぶ。体にほどよくフィットし、縫い目が乳首に当たらないものがよいでしょう
- 女性は、サイズの合ったスポーツブラを選ぶ
- 雨の日や汗を多くかく日は、とくに念入りに予防する
診察室でよく聞かれる質問
Q. 消毒液を使ったほうがいいですか?
A. 小さなすり傷であれば、流水で洗えば十分です。消毒液は傷を治す細胞まで傷めることがあるため、何度も使う必要はありません。
Q. 絆創膏でかぶれてしまいます。
A. テープの粘着剤でかぶれる方は、肌にやさしいタイプのテープに替える、ワセリンを中心にする、といった方法があります。かぶれて赤くかゆい状態が続く場合は、相談してください。
Q. 大会の直前に傷ができてしまいました。
A. ワセリンを塗ったうえで、くっつきにくいガーゼや保護シールでしっかり覆えば、走れることが多いです。痛みが強い、膿が出ている場合は無理をしないでください。
受診の目安
- 傷のまわりが赤く腫れて熱をもつ、膿が出る(細菌感染の可能性)
- 運動をやめても、1〜2週間以上治らない
- 運動と関係なく、乳首や乳輪がかゆい・ジュクジュクする
- 片側だけ、赤みやただれが何か月も続く、しこりや分泌物がある
- テープや保護シールでかぶれて、赤くかゆい
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-24)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-24)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

