「ふくらはぎの浮き出た血管が、急に赤く硬くなって痛い」「点滴をした腕の血管にそって、すじ状に赤く腫れた」。こうした症状は、皮膚の近くを通る静脈に血のかたまり(血栓)ができ、炎症を起こした状態かもしれません。原因と見分け方、自分でできること、急いで受診すべきサインを説明します。
表在性血栓性静脈炎とは(仕組み)
足の静脈には、皮膚のすぐ下を通る「表在静脈」と、筋肉の奥を通る「深部静脈」があります。表在性血栓性静脈炎は、皮膚に近い表在静脈の中に血栓ができ、その周りに炎症が起きた状態です。
起こりやすいのは、次のような場合です。
- 下肢静脈瘤がある:もっとも多い原因です。こぶ状にふくらんだ血管では血液がよどみ、固まりやすくなります
- 点滴や注射をした後:腕の血管に起こりやすくなります
- 長時間同じ姿勢:長距離の移動、手術後や病気で寝ている時間が長いとき
- 妊娠中・出産後、女性ホルモンを含む薬の使用中
- はっきりした原因がなく、場所を変えて繰り返す:ベーチェット病や、まれに体の中の病気が隠れていることがあります
症状と、似た病気との見分け方
典型的な症状は、血管の走る方向にそって、ひものように硬く触れるしこりと、その周りの赤み・熱っぽさ・押したときの痛みです。数日から数週間かけて赤みが引き、硬さは少し長く残ります。治った後に茶色い跡が残ることもあります。
| 病気 | 見た目・触った感じ | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 表在性血栓性静脈炎 | 血管にそったひも状の硬いしこり、周りが赤く痛む | 線のように伸びる。静脈瘤や点滴の跡に一致することが多い |
| 蜂窩織炎 | 境目のはっきりしない広い赤み・腫れ・熱感 | 面で広がる。発熱や寒気を伴いやすい。傷や水虫から始まることが多い |
| 結節性紅斑 | すねに、押すと痛い赤いしこりが数個 | 点在する丸いしこりで、ひも状ではない。両足に出やすい |
| 深部静脈血栓症 | ふくらはぎや足全体がむくむ、張って痛い | 皮膚の赤いすじは目立たないことが多い。足の太さに左右差が出る |
| リンパ管炎 | 傷から上に向かって伸びる赤い線 | 傷や感染が出発点。発熱を伴うことがある |
表在性血栓性静脈炎そのものは命に関わることは多くありませんが、一部では血栓が深部静脈まで伸びたり、深部静脈血栓症が同時に起きていたりすることが知られています。とくに太ももの内側を付け根に向かって上る血管(大伏在静脈)で、付け根に近い場所に出た場合は注意が必要です。
検査と治療
見た目と触った感じで多くは診断できますが、範囲や深い静脈への広がりを確かめるため、超音波(エコー)検査が行われます。
治療は範囲と場所で変わります。
- 範囲が小さく、付け根から離れている場合:痛み止め(消炎鎮痛薬)の飲み薬や塗り薬、弾性ストッキングでの圧迫を行い、できるだけふだん通り歩きます
- 範囲が広い、付け根に近い、深い静脈に近い場合:血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を一定期間使うことがあります
- 静脈瘤が原因で繰り返す場合:落ち着いた後に、静脈瘤そのものの治療を検討します
どの治療が必要かは超音波の結果で決まるため、皮膚科のほか、血管外科や循環器内科への紹介となることもあります。
自分でできること
- 安静にしすぎず、歩く。ふくらはぎの筋肉が動くと血液が流れ、血栓が広がるのを防ぎます。強い痛みがある時期は無理をしない範囲で
- 座っているときや寝るときは、足を少し高くする。むくみと痛みが軽くなります
- 長時間同じ姿勢を避け、こまめに足首を動かし、水分をとる
- 赤い部分をもんだり、強く押したりしない
よくある質問
Q. 冷やすのと温めるのはどちらがいいですか?
A. 赤みと熱っぽさが強い時期は、冷たいタオルなどで軽く冷やすと痛みが和らぎます。ただ、冷やしたり温めたりで治るわけではないため、範囲の確認のために受診してください。
Q. 一度なったら、また繰り返しますか?
A. 静脈瘤がある方は、同じ場所や近くで繰り返すことがあります。静脈瘤の治療で再発を減らせることがあります。静脈瘤がないのに場所を変えて繰り返す場合は、体の病気がないか検査を受けることをおすすめします。
受診の目安
- 血管にそって赤く硬く痛む部分がある(まずは受診して範囲を確認)
- 太ももの内側や付け根に近い場所まで赤みやしこりが伸びている
- 片方の足全体がむくむ、ふくらはぎが張って痛い
- 静脈瘤がないのに、場所を変えて繰り返す
- 発熱がある、赤みが面で広がっている(蜂窩織炎の可能性)
急に息苦しくなった、胸が痛い、血の混じった咳が出た場合は、血栓が肺に飛んだ可能性があるため、迷わず救急車(119番)を呼んでください。判断に迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-31)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-31)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

