傷ができたら、まず流水でしっかり洗い、異物を残さないことが大切です。浅い傷はワセリンなどで保護し、深い傷や出血が止まらない傷、異物が取れない傷は早めに受診しましょう。
転んで擦りむいた、包丁で指を切った、ぶつけて皮膚が裂けた――。日常生活で傷ができたとき、「消毒したほうがいい?」「何を塗ればいい?」「絆創膏を貼ったほうがいい?」と迷う方は多いと思います。傷の処置で特に大切なのは、傷を十分に洗浄し、砂や土などの異物を残さないことです。
この記事では、皮膚科医が「傷ができた直後に何をすればよいのか」「消毒は必要なのか」「傷あとを目立ちにくくするにはどうすればよいのか」を解説します。
傷ができたら、まず何をする?
傷ができたときに最も大切なのは、傷の状態を確認し、十分に洗浄することです。出血が多い場合は、清潔なガーゼや布を当てて傷を直接圧迫します。出血がある程度落ち着いたら、流水で傷を十分に洗います。
傷の中に砂、土、小石、アスファルトなどが残っている場合は、できる範囲で取り除きます。特に転倒による擦り傷では、細かな砂やアスファルトが皮膚の中に残ると、傷が治ったあとも黒っぽい色が残る「外傷性刺青」になることがあります。
ただし、痛みを我慢して強くこすったり、皮膚に食い込んだ異物を無理に掘り出したりする必要はありません。流水で洗っても取れない汚れがある場合や、痛くて十分に洗えない場合は、早めに医療機関を受診してください。
傷は消毒したほうがいい?
「傷ができたら、とりあえず消毒」と考える方も多いと思います。しかし、日常生活でできた浅い傷では、まず流水で十分に洗浄することが重要です。きれいに洗浄できている浅い傷に対して、毎日のように消毒薬を繰り返し使用する必要は通常ありません。
一方で、「消毒薬は傷に悪いから絶対に使ってはいけない」というほど単純でもありません。傷の状態や汚染の程度によって対応は異なります。「消毒するかどうか」だけにこだわるのではなく、次の点を確認することが大切です。
- 十分に洗浄できているか
- 砂や土などの異物が残っていないか
- 感染していないか
- 傷が深くないか
- 縫合などの処置が必要ではないか
傷には何を塗ればいい?
浅く、きれいに洗浄できた傷であれば、白色ワセリンを薄く塗って保護する方法があります。ワセリンには抗菌作用があるわけではありません。傷の表面を保護し、乾燥やガーゼとの固着を防ぐ目的で使用します。その上から、傷にくっつきにくいパッドやガーゼなどで覆います。
傷に直接ガーゼが張り付いてしまうと、交換するときに痛みや出血が生じたり、できかけた皮膚を傷つけたりすることがあります。傷にくっつきにくい被覆材を使用するか、ワセリンなどを利用して固着を防ぐとよいでしょう。
絆創膏やガーゼはいつ交換する?
基本的には、傷を清潔に保つことが大切です。ワセリンとパッドなどで処置している場合は、原則として毎日交換します。また、次のような場合はその都度交換してください。
- 血液や浸出液で汚れた
- 水で濡れた
- 汗などで蒸れた
- 被覆材がずれた
- 被覆材が剝がれた
- 傷の状態を確認する必要がある
交換するときは、傷を流水でやさしく洗い、必要に応じてワセリンなどを塗り直して、新しい被覆材で保護します。
傷から出る液体は膿?
傷から透明〜黄色っぽい液体が出ることがあります。これは「浸出液」と呼ばれるもので、傷が治る過程でもみられます。黄色い液体が出たからといって、必ずしも化膿しているわけではありません。感染を疑うときは、液体の色だけではなく、次のような変化に注意します。
- 傷の周囲の赤みが広がってくる
- 腫れが強くなる
- 痛みが強くなってくる
- 熱を持つ
- 膿が出る
- 悪臭がする
- 発熱する
このような症状がある場合は、感染している可能性があるため受診してください。
市販の傷用パッドは使ってもいい?
ハイドロコロイドなど、傷を覆って使用する市販の創傷被覆材もあります。浅く、十分に洗浄された傷では選択肢のひとつですが、すべての傷に適しているわけではありません。
特に、感染している傷、深い傷、異物が残っている傷、咬み傷などを自己判断で覆い続けることはおすすめしません。傷の状態に迷う場合は、無理に市販の創傷被覆材を使用せず、医療機関で相談してください。
こんな傷は早めに受診してください
- 傷が深い
- 傷口が大きく開いている
- 皮下脂肪などが見えている
- 圧迫しても出血が止まらない
- 砂、ガラス、木片などの異物が取れない
- 土や泥などで強く汚染されている
- 人や動物に咬まれた
- 釘などが深く刺さった
- 赤み、腫れ、痛みが悪化している
- 膿が出ている
- 発熱している
- 手指や関節付近に深い傷がある
- 顔など、傷あとが特に気になる場所に傷がある
また、糖尿病や血流障害などがあり傷が治りにくい方は、小さな傷でも悪化することがあるため注意が必要です。
切り傷は縫ったほうがいい?
切り傷の中には、縫合などの処置をしたほうがよいものがあります。特に、次のような傷は早めの受診をおすすめします。
- 傷が深い
- 傷口が大きく開いている
- 皮下脂肪などが見えている
- 圧迫しても出血が止まらない
- 顔など傷あとが問題になりやすい場所にある
- 手指や関節付近にある
傷を閉じることができるかどうかは、傷ができてからの時間だけではなく、傷の場所、深さ、汚染の程度、感染リスクなどを総合して判断します。「時間が経ってしまったから、もう受診しても意味がない」と自己判断する必要はありません。すぐに縫合しない場合でも、洗浄や異物除去などの処置が必要なことがあります。
手や指の傷は「傷の大きさ」だけで判断しない
手や指には、皮膚のすぐ下に腱、神経、血管など重要な組織があります。そのため、傷自体がそれほど大きく見えなくても注意が必要です。次のような症状がある場合は早めに受診してください。
- 指が曲げにくい
- 指が伸ばしにくい
- 指先がしびれる
- 感覚が鈍い
- 指先の血色が悪い
- 強い痛みがある
皮膚の傷だけではなく、腱・神経・血管などが損傷している可能性があります。
傷あとを目立ちにくくするには?
どんなに適切に処置しても、傷の深さによっては傷あとが残ることがあります。そのため、「絶対に傷あとを残さない方法」はありません。ただし、傷あとをできるだけ目立ちにくくするために重要なポイントがあります。
傷の中に異物を残さない
擦り傷では、砂やアスファルトなどが皮膚の中に残ると、外傷性刺青として黒っぽい色が残ることがあります。特に傷ができた直後の洗浄と異物除去が重要です。
感染させない
傷が感染すると炎症が強くなり、治るまでに時間がかかります。結果として傷あとが目立ちやすくなることがあります。赤み、腫れ、痛みなどが悪化してきた場合は、早めに受診してください。
傷が治った後は紫外線対策をする
傷が治った直後の皮膚は、紫外線の影響によって色素沈着が目立つことがあります。傷の表面がまだ開いていたり、ジュクジュクしていたりする間は、日焼け止めを傷に直接塗るのではなく、被覆材や衣類などで紫外線から守ります。傷の表面が新しい皮膚で覆われた後は、日焼け止めなどを使用して紫外線対策を行います。
傷あとが盛り上がってきたら相談する
傷が治った後に次のような変化がある場合は、肥厚性瘢痕やケロイドなどの可能性があります。
- 赤みがなかなか引かない
- 傷あとが硬くなる
- 盛り上がってくる
- かゆい
- 痛い
- 傷の範囲を超えて広がってくる
このような場合は皮膚科で相談してください。
破傷風にも注意
傷の種類によっては、破傷風の予防も重要です。特に次のような傷では注意が必要です。
- 土や泥で汚れた傷
- 深い刺し傷
- 動物に咬まれた傷
- 壊死組織を伴う傷
破傷風ワクチンが必要かどうかは、傷の種類だけではなく、これまでのワクチン接種歴によっても変わります。母子手帳などで接種歴を確認し、いつ接種したか分からない場合や、接種が完了しているか分からない場合は医療機関で相談してください。
よくある質問
Q. 傷にはオロナインを塗ったほうがいいですか?
すべての傷に塗る必要はありません。まず重要なのは、傷を流水で十分に洗うことです。浅く清潔な傷であれば、白色ワセリンなどで傷を保護する方法があります。深い傷や感染が疑われる傷は、何かを塗って様子を見るのではなく受診してください。
Q. 傷はお風呂で濡らしても大丈夫ですか?
多くの浅い傷では、流水で洗うこと自体は問題ありません。むしろ、傷を清潔に保つために洗浄することが大切です。ただし、長時間湯船につけたり、公衆浴場やプールに入ったりすることは、傷が閉じるまでは避けたほうがよいでしょう。
Q. 傷は乾かしたほうがいいですか?
傷をカラカラに乾燥させると、逆に治りが悪くなります。浅い傷であれば、洗浄したあとにワセリンを薄く塗り、傷にくっつきにくいパッドなどで保護する方法がベターです。
Q. かさぶたは剝がしたほうがいいですか?
無理に剝がす必要はありません。かさぶたを無理に剝がすと、再び出血したり、できかけた皮膚を傷つけたりすることがあります。自然に剝がれるまで無理に触らないようにしてください。
関連ページ
参考情報
- 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編「形成外科診療ガイドライン 2021年版 I 皮膚疾患・外傷・熱傷」金原出版
- 日本創傷外科学会 一般の皆様へ「傷についてもっと詳しく」
- American Academy of Dermatology Association: Proper wound care: How to minimize a scar / How to treat minor cuts
- Centers for Disease Control and Prevention: Clinical Guidance for Wound Management to Prevent Tetanus
- Royal Children’s Hospital Melbourne: Clinical Practice Guidelines: Lacerations / Wound dressings – acute traumatic wounds
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

