「糖尿病の薬を飲み始めて1年ほどしてから、体がかゆくて、じんましんのような赤みが出てきた」「手足に大きな水ぶくれができた。虫刺されかと思っていた」。高齢の方に多い水疱性類天疱瘡は、DPP-4阻害薬との関連が知られるようになり、皮膚科と内科で連携して診ることが増えています。仕組みと、気づくためのポイントを説明します。
水疱性類天疱瘡とは(DPP-4阻害薬との関係)
水疱性類天疱瘡は、体の免疫が、皮膚の表皮と真皮をつなぎとめている部分を誤って攻撃してしまう病気です(自己免疫性水疱症)。つなぎ目がはがれることで、皮膚に水ぶくれができます。高齢の方に多い病気です。
DPP-4阻害薬は、血糖値を下げるホルモンの働きを助ける飲み薬で、糖尿病の治療で広く使われています。この薬を飲んでいる方に水疱性類天疱瘡が起こることが報告されており、薬との関連が考えられる例があることが分かっています。飲み始めてすぐではなく、数か月から年単位たってから起こることもあるため、薬との関係に気づきにくいのが特徴です。ただし、DPP-4阻害薬を飲んでいる方の多くには起こらず、また薬と関係なく起こる類天疱瘡もあります。
症状と見分け方
水疱性類天疱瘡は、最初から水ぶくれが出るとは限りません。初期は強いかゆみと、じんましんや湿疹のような赤みだけのことがあり、見逃されやすい時期です。
- 体や手足に、強いかゆみを伴う赤み、盛り上がった赤い斑点
- 赤みの上や正常に見える皮膚に、ぱんと張った、破れにくい水ぶくれ(数mm〜数cm)
- わきの下、太ももの内側、おなかなどに出やすい
- 口の中に水ぶくれやただれが出ることもある
| 病気 | 特徴 |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | 高齢の方に多い。強いかゆみ、赤み、張りのある水ぶくれが体のあちこちに出る。数週間以上続く |
| 虫刺され | 露出した場所に多い。数日〜1週間ほどで治まる |
| 湿疹・じんましん | かゆい赤み。水ぶくれは小さいか、できない。じんましんは数時間〜1日で消える |
| 薬疹 | 薬を飲み始めて数日〜数週間で、全身に赤い発疹が広がる。発熱を伴うこともある |
| 帯状疱疹 | 体の片側に、帯状にピリピリした痛みと小さな水ぶくれが集まる |
診断のためには、皮膚の一部を取って調べる検査(皮膚生検)や、血液の検査を行います。
治療と、薬の扱い
DPP-4阻害薬との関連が疑われる場合は、薬の中止や別の糖尿病薬への変更を検討します。ただし、自己判断で薬をやめると血糖が急に上がることがあるため、必ず糖尿病の主治医と相談し、代わりの薬を決めてから切り替えます。皮膚科を受診するときは、お薬手帳を持参してください。
皮膚の治療は、症状の広さや強さに合わせて組み合わせます。
- ステロイドの塗り薬:範囲が狭い、軽い場合に使います。
- 飲み薬:炎症を抑える抗菌薬(テトラサイクリン系)とニコチン酸アミドの組み合わせや、ステロイドの飲み薬などを使います。
- そのほかの治療:重い場合や、飲み薬で抑えきれない場合には、免疫を調整する治療を検討します。
ステロイドの飲み薬は血糖値を上げることがあるため、糖尿病の方では皮膚科と内科で血糖を見ながら量を調整します。
水ぶくれのケア
水ぶくれは、自分で破ったり皮をはがしたりしないでください。皮が残っていると、それが傷を守るふたの役割をします。大きく張って痛い、破れそうな水ぶくれは、医療機関で中の液だけを抜き、皮は残す処置をします。破れてしまったときは、やさしく洗ってワセリンを塗り、ガーゼなどで保護してください。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 同じDPP-4阻害薬の別の種類に替えれば大丈夫ですか?
A. 同じ種類の薬の中で替えても再び起こる可能性が考えられるため、別の仕組みの糖尿病薬への変更を検討することが多いです。どの薬にするかは主治医と相談します。
Q. 薬をやめれば治りますか?
A. 薬をやめるだけで落ち着いていく方もいますが、皮膚の治療が必要なことがほとんどです。治療を始めてから落ち着くまでには、ある程度の期間がかかります。
受診の目安
- DPP-4阻害薬などの糖尿病の薬を飲んでいて、体のかゆみや赤みが数週間続いている
- 張りのある水ぶくれが、体のあちこちにできる
- 市販のかゆみ止めや虫刺されの薬で治まらない
水ぶくれが急に全身に広がる、口の中や目にただれが出る、発熱があるときは、ほかの重い皮膚の病気(重症の薬疹など)のこともあるため、すぐに受診してください。夜間や休日で迷うときは救急安心センター(#7119)に相談できます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-27)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-27)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

