「がんの免疫治療を始めてから、体中がかゆい」「皮膚に白い斑点が増えてきた」。ニボルマブやペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬は、免疫の力でがんを攻撃する薬で、皮膚に副作用が出やすいことが知られています。どんな症状がいつ頃出るのか、治療を続けながらできる対処、そして急いで連絡すべき症状を説明します。
なぜ皮膚に副作用が出るのか
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃れるために使っている「ブレーキ」を外し、免疫ががんを攻撃できるようにする薬です。このときブレーキが外れた免疫が、がん以外の自分の体の組織にも向かうことがあり、これを免疫関連有害事象(irAE)と呼びます。皮膚は、この副作用がもっとも出やすい臓器です。
皮膚の副作用は、従来の抗がん剤の皮膚障害(手足のしびれや乾燥、脱毛など)とは仕組みが違い、免疫が皮膚を攻撃して起こる炎症です。そのため、治療にはステロイドなど免疫の働きを抑える薬を使います。
おもな症状と出る時期
| 症状 | 出やすい時期 | 特徴・程度 |
|---|---|---|
| かゆみ | 数週間〜 | 発疹がなくてもかゆくなることがある。もっとも多い |
| 赤い発疹(斑状丘疹状皮疹) | 開始から数週間〜2か月ほど | 体幹や手足に、赤い小さな盛り上がりや広い赤み。湿疹のように見える |
| 白斑(皮膚の色が抜ける) | 数か月〜 | メラノーマの治療で多い。治療が効いているサインとして報告されているが、色は戻りにくい |
| 乾癬様・扁平苔癬様の発疹 | 数か月〜 | もともと乾癬がある方は悪化することがある |
| 水疱性類天疱瘡 | 数か月〜、治療終了後にも | 皮膚に張りのある水ぶくれ。高齢の方に多い。皮膚科での診断と治療が必要 |
| 重症薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群など) | まれ。いつでも | 発熱、口・目・陰部のただれ、皮膚がむける。緊急 |
出る時期には幅があり、治療を終えてから数か月たって出ることもあります。「もう薬は終わったから関係ない」と思わず、新しい皮膚の症状が出たら、この治療を受けたことを皮膚科に伝えてください。
程度に応じた対処(治療は続けられることが多い)
皮膚の副作用は、範囲と生活への影響で程度(グレード)を分けて対応します。
- 軽い〜中くらい(体の一部〜広めの範囲、生活は可能): ステロイドの塗り薬、保湿剤、かゆみに対する抗ヒスタミン薬の内服で対応し、がんの治療はそのまま続けられることがほとんどです。
- 強い(広い範囲、かゆみで眠れない、日常生活に支障): ステロイドの飲み薬を使い、がんの治療をいったん休むことがあります。皮膚が落ち着けば再開できることが多いです。
- 重症(水ぶくれ・粘膜のただれ・発熱): 入院して集中的に治療します。がんの治療は中止します。
どの程度にあたるかは、主治医と皮膚科が診て判断します。「副作用が出たら治療が止まる」と心配して症状を隠す方がいますが、逆です。軽いうちに皮膚科で抑えるほど、がんの治療を止めずに済みます。
白斑について
メラノーマ(悪性黒色腫)の治療中に、皮膚の色が抜ける白斑が出ることがあります。これは、免疫がメラノーマだけでなく正常な色素細胞も攻撃するために起こる反応で、白斑が出た方は治療の効果が高い傾向があったという報告があります。一方で、抜けた色は戻りにくく、見た目の悩みにつながります。日焼け止めで色の差を目立ちにくくする、カバー用の化粧品を使う、といった対応をします。白斑そのものに強い治療をすることは、がん治療への影響を考えてあまり行いません。
自分でできること
- 保湿を毎日続ける。乾燥するとかゆみが強くなり、掻きこわしから発疹が広がります。
- 熱いお湯・長風呂・ナイロンタオルを避ける。かゆみが増します。
- 日焼けを避ける。発疹や白斑の部分は紫外線で悪化しやすくなります。
- 皮膚の写真を撮っておく。いつからどう広がったかが分かると、程度の判断が早くなります。
- 新しい症状は、次の受診を待たず連絡する。とくに下に挙げる症状はその日のうちに。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 市販のかゆみ止めを塗ってもいいですか?
A. 軽いかゆみに保湿剤や市販のかゆみ止めを使うこと自体は問題ありませんが、免疫による炎症には市販薬では力が足りないことが多いです。数日で改善しなければ、主治医か皮膚科に伝えてください。
Q. もともとアトピーや乾癬があります。治療を受けられますか?
A. 受けられることが多いですが、治療中にもとの皮膚の病気が悪化することがあります。治療を始める前に主治医に伝え、皮膚科と連携して経過を見ます。
Q. 皮膚の副作用は、がん治療が効いているサインですか?
A. 皮膚の副作用が出た方で治療効果が高かった、という報告はあります。ただし、副作用が出ない方に効かないという意味ではなく、また副作用を我慢する理由にもなりません。
すぐに主治医へ連絡する症状
- 皮膚に水ぶくれができた、皮膚がむける、押すとずれる
- 口の中・唇・目・陰部がただれて痛い
- 発疹とともに発熱、強いだるさ、のどの痛みがある
- 発疹が1〜2日で急に全身へ広がった
- 息苦しさ、顔や唇の腫れ(アレルギー反応の可能性があり、救急を利用してください)
夜間・休日で連絡がつかないときは、治療を受けている病院の救急外来に、この薬を使っていることを伝えて受診してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-28)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A メラノーマ(確認日: 2026-10-28)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

