「山歩きのあと、足に虫刺されのような赤みが出て、日に日に大きくなっている」「マダニを取ったあとの場所が、輪のように赤くなってきた」。ふつうの虫刺されは数日で引いていきますが、時間がたってから広がる赤みは別の原因を考えます。そのひとつがライム病です。
ライム病とは(仕組み)
ライム病は、マダニが運ぶボレリアという細菌に感染して起こる病気です。マダニは山林や草むらにいて、人の皮膚に食いつくと数日間血を吸い続けます。その間に、細菌が体の中に入ります。
国内では北海道や本州の山間部での報告が多いとされています。人から人にうつることはありません。
感染すると、まず刺された場所の皮膚に症状が出ます。治療しないまま進むと、細菌が全身に広がり、神経(顔の麻痺など)・関節・心臓に症状が出ることがあります。だからこそ、皮膚に赤い輪が出た段階で気づいて治療することが大切です。
症状・見分け
典型的なのは、刺されて数日〜数週間後に、刺し口を中心に赤みが輪のように外へ広がっていく症状です(遊走性紅斑)。輪の中心が薄くなり、的のように見えることもあります。かゆみや痛みは強くないことが多く、気づかれにくいのが特徴です。熱っぽさ、だるさ、筋肉痛、頭痛を伴うことがあります。
| 見るポイント | ふつうの虫刺されの赤み | ライム病の赤い輪(遊走性紅斑) |
|---|---|---|
| 出るタイミング | 刺された直後〜翌日 | 刺されて数日〜数週間たってから |
| 経過 | 数日で小さくなる | 日ごとに外へ広がっていく |
| 形 | ふくらんだ赤いブツブツ | 輪のように広がる赤み。中心が薄いこともある |
| かゆみ | 強いことが多い | 少ないことが多い |
| 全身の症状 | ふつうはない | 発熱・だるさ・筋肉痛を伴うことがある |
マダニが運ぶ病気はライム病だけではありません。日本紅斑熱、つつが虫病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などは、高い熱が出て重くなることがあります。マダニに刺されたあとは、2週間程度は体調の変化に気をつけてください。
治療・セルフケア
ライム病の治療は、抗菌薬の飲み薬が基本です。皮膚の症状の段階で治療を始めると、多くは治療に反応し、全身へ広がるのを防げます。神経や心臓に症状が出ている場合は、点滴での治療や入院が必要になることがあります。
マダニが皮膚に付いたままのときは、無理に引き抜かないでください。マダニは口の部分を皮膚に深く差し込んでいるため、指でつまんで引っ張ると、頭や口の部分が皮膚の中に残りやすく、そこから炎症や感染が起こることがあります。また、体を押しつぶすと、病原体が体内に入りやすくなるとも言われます。皮膚科では、周りの皮膚ごと小さく切り取るなどして取り除きます。
予防として、山歩きや草むらに入るときは次のことを心がけてください。
- 肌を出さない: 長袖・長ズボン、ズボンのすそを靴下に入れる、首にタオルを巻く
- 虫よけを使う: マダニに効果のある成分の虫よけを、服の上からも使う
- 明るい色の服を着る: 付いたマダニを見つけやすくするため
- 帰宅後すぐに入浴して全身を確認する: わきの下、ひざの裏、足の付け根、耳の後ろ、髪の生え際など、やわらかい場所に付きやすいため
- 着ていた服はすぐに洗う: 服に付いたマダニを家の中に持ち込まないため
筑波山などの山歩き、キャンプ、畑仕事のあとは、とくに確認を習慣にしてください。
受診の目安
- マダニが皮膚に付いている、または付いていた
- 刺された場所の赤みが、日ごとに広がってくる
- 山や草むらに行ったあと、熱っぽさやだるさが続く
次の場合は、急いで医療機関を受診してください。夜間や休日で迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
- 高い熱が出た、全身に発疹が出た
- 意識がぼんやりする、強い頭痛、顔が動かしにくい
- 動悸や息苦しさがある
診察室でよく聞かれる質問
マダニに刺されたら、必ずライム病になりますか?
いいえ、刺されても多くの方は感染しません。ただ、マダニが病原体を持っているかは見た目では分からないため、刺されたあとは2週間程度、赤みの広がりや発熱がないかを見てください。
取れたマダニは捨ててしまっていいですか?
できれば、ビニール袋やテープに貼って保管し、受診のときに持ってきてください。どの種類のマダニかが分かると、診断の手がかりになります。
赤い輪がいつの間にか消えました。もう大丈夫ですか?
治療しなくても皮膚の赤みが消えることはありますが、細菌が体内に残っている可能性があります。マダニに刺された心当たりがあれば、赤みが消えていても受診して相談してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ダニ類による感染症(確認日: 2026-10-18)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 虫さされ(確認日: 2026-10-18)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

