「足の小さな傷が赤く腫れてきたけど、痛みが尋常ではない」「朝より赤い範囲がはっきり広がっている」。多くの場合、皮膚の赤み・腫れは蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の奥の細菌感染で、飲み薬や点滴で治ります。ただしごく一部に、より深いところで急激に広がる「壊死性筋膜炎」が混じります。ニュースで「人食いバクテリア」と呼ばれることがあるのがこの病気です。怖がりすぎる必要はありませんが、見分けのサインを知っておくことが、いちばんの備えになります。
壊死性筋膜炎とは(なぜ急いで治療が必要なのか)
皮膚の下には脂肪があり、その下に筋肉を包む膜(筋膜)があります。壊死性筋膜炎は、細菌がこの筋膜に沿って急速に広がり、周りの組織を壊死させていく(組織が死んでしまう)感染症です。
表面の皮膚は最初は目立った変化が少ないのに、深いところでは感染がどんどん進んでいます。そのため、「見た目の割に痛みが強すぎる」ことが早い段階の大きな手がかりになります。
原因になる細菌はいくつかあり、代表的なのは溶連菌(ようれんきん)の仲間です。小さな傷、虫刺され、水虫のただれ、手術の傷などから入ることがありますが、はっきりした傷が見つからないこともあります。糖尿病、肝臓や腎臓の病気、免疫の働きを弱める薬を使っている方、高齢の方では起こりやすく、重くなりやすいことが知られています。
症状と見分け方(蜂窩織炎との違い)
| 比べるところ | 蜂窩織炎(よくある皮膚の奥の感染) | 壊死性筋膜炎(まれだが緊急) |
|---|---|---|
| 痛み | 赤い範囲に見合った痛み | 見た目に比べて、明らかに強すぎる痛み |
| 広がる速さ | 日単位でゆっくり | 時間単位で広がる。ペンで印をつけると、数時間ではみ出す |
| 皮膚の色・見た目 | 赤く、熱をもって腫れる | 紫色〜黒っぽい変色、血の混じった水ぶくれ、触ると感覚が鈍い |
| 全身の状態 | 熱が出ることはあるが、動ける | 高い熱、ぐったりする、血圧が下がる、意識がぼんやりする |
進んでくると、逆に痛みを感じにくくなることがあります。神経まで傷んでしまうためで、「痛みが引いたから良くなった」とは限りません。
蜂窩織炎や丹毒(たんどく)の一般的な経過は(関連記事: 蜂窩織炎)(関連記事: 丹毒)で解説しています。
治療
治療の中心は、手術で壊死した組織を取り除くことと、点滴の抗菌薬です。抗菌薬だけでは、血の流れが途絶えた組織の奥まで薬が届きにくいため、手術を急ぐ必要があります。
入院のうえ、全身の状態を支える治療(点滴・血圧を保つ薬など)を並行して行います。病変の範囲によっては、手術を何度かに分けて行うこともあります。治療開始が早いほど、取り除く範囲が小さく済む可能性が高まります。
皮膚科のクリニックの役割は、疑わしい方をすぐに見分けて、手術と入院ができる病院へつなぐことです。
自分でできる予防
確実に防ぐ方法はありませんが、細菌の入り口を減らすことはできます。
- 小さな傷も洗って清潔に保つ — 細菌が入り込むきっかけを減らすため(関連記事: すり傷・切り傷の手当て)
- 足の水虫やひび割れを治療しておく — 皮膚の小さな裂け目が、細菌の入り口になるため
- 糖尿病などの持病をきちんと管理する — 感染に対する体の守りを保つため
- 傷のまわりの赤みにペンで印をつける — 広がる速さを客観的に確かめられるため
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 足が赤く腫れています。人食いバクテリアでしょうか? | ほとんどは蜂窩織炎などの、治療で治る感染症です | 壊死性筋膜炎はまれな病気です。ただし、上の表の「強すぎる痛み・速い広がり・変色」があれば、すぐに受診してください |
| 夜中に悪化しました。朝まで待ってもいいですか? | 痛みが強い・広がりが速い・ぐったりしているなら、待たずに救急へ | 時間単位で進むことがあり、朝まで待つ数時間が差になるためです |
| 人にうつりますか? | 日常生活で、ふつうに接してうつることはまずありません | 傷口や体の奥に細菌が入り込むことで起こる病気のためです。傷の手当てをする家族は、手洗いをしてください |
受診の目安
- すぐに救急へ — 見た目に比べて痛みが強すぎる、赤みが時間単位で広がる、紫色や黒っぽい変色、血の混じった水ぶくれ、高い熱でぐったりしている。迷うときは救急安心センター(#7119)に相談してください。意識がぼんやりしている、呼吸が苦しい場合は119番へ
- 当日中の受診を — 傷のまわりが赤く腫れて熱をもっている、熱がある
- 早めの受診を — 糖尿病があり、足の傷がなかなか治らない(関連記事: 治りにくい傷)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-27)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-27)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

