「ライナーを外すと、断端に赤いブツブツがたくさんできている」「ソケットのふちが当たる所に、しこりができて痛い」「夏になると汗で蒸れて、かゆくて仕方がない」。義足・義手を使っている方から寄せられる相談です。断端の皮膚に起きやすいトラブルと、見分け方、毎日の手入れを整理します。
断端に皮膚トラブルが起きる仕組み
義足や義手は、断端をソケット(受け皿)やライナー(シリコーンなどでできた内張り)でぴったり包み込んで体を支えます。断端の皮膚は、本来は体重を支えたり、密閉されたりすることに慣れていない場所です。そこに次のような負担がかかります。
- 蒸れ…ライナーの中は汗が逃げず、皮膚がふやけます。ふやけた皮膚はこすれや細菌に弱くなります。
- こすれと圧迫…歩くたびにソケットのふちや骨の出っ張った所に力がかかり、水ぶくれや傷、皮膚の硬化が起きます。
- 素材へのかぶれ…ライナーの素材、洗浄剤、ローションなどに対するかぶれ(接触皮膚炎)が起きることがあります。
体重の増減や筋肉のやせ、むくみで断端の形が変わると、ソケットが合わなくなり、トラブルが起きやすくなります。
起きやすいトラブルと見分け方
| トラブル | 見た目・特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 毛穴の炎症(毛包炎) | 毛穴に一致した赤いブツブツ、膿をもつ | 蒸れやすい季節、毛を剃った後に増える |
| こすれ・水ぶくれ | 赤み、水ぶくれ、皮むけ、傷 | ソケットのふちや骨の出っ張りに一致する |
| かぶれ(接触皮膚炎) | 強いかゆみ、赤み、細かいブツブツ | ライナーが当たる範囲全体。新しい製品や洗浄剤の後 |
| あせも・汗による湿疹 | 小さな赤いブツブツ、チクチク | 夏や運動の後に増える |
| 粉瘤などのしこり | 皮膚の下の丸いしこり、腫れると痛む | ソケットのふちなど、こすれる所にできやすい |
| カビ(真菌)の感染 | 赤み、ふちに細かい皮むけ、かゆみ | ステロイドを塗っても良くならない |
断端の先が赤黒く厚くなり、表面がイボのようにざらざらしてくる場合は、ソケットの中で断端の先に圧がかかっていないこと(すき間)が原因のことがあります。ソケットの調整が必要になるため、義肢装具士に相談してください。
毎日の手入れとセルフケア
- 断端を毎日洗って、よく乾かす。夜、義肢を外したら、石けんで洗って汗や皮脂を落とし、完全に乾かします。湿ったままライナーを着けると、蒸れの原因になります。
- ライナーも毎日洗う。皮膚に触れる面を、製品の説明に従って洗い、乾かします。汗や皮脂が残ると、細菌が増えて毛包炎やにおいの原因になります。
- 毎日、断端の皮膚を見る。鏡を使って、赤み、傷、水ぶくれ、しこりがないか確認します。感覚が鈍くなっている場合は、目で見ることが特に大切です。
- 汗をかいたら外して拭く。暑い日や長く歩いた日は、途中で外して汗を拭き取ります。
- 保湿は寝る前に。保湿剤を塗ったすぐ後にライナーを着けるとすべりやすくなるため、夜、外したときに塗ります。
皮膚科での治療
かぶれや湿疹には炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)、毛包炎には抗菌薬の塗り薬や飲み薬、カビには抗真菌薬の塗り薬を使います。汗が多い場合は、汗を抑える塗り薬を使うこともあります。素材へのかぶれが疑われるときは、皮膚に貼って反応を見る検査(パッチテスト)で原因を確かめ、別の素材のライナーを選ぶ参考にします。
粉瘤などのしこりが腫れをくり返す場合は、手術で取り除くことを検討します。ソケットのふちに当たる場所では、傷あとの位置にも配慮が必要なため、義肢の使用状況を踏まえて相談しながら進めます。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 皮膚に傷があるときも、義足を着けていいですか?
A. 小さな赤みであれば、手入れを続けながら様子を見られることが多いです。ただし、水ぶくれ、ジュクジュクした傷、膿がある場合は、着け続けると悪くなることがあります。早めに受診し、着けてよいかどうかを相談してください。
Q. 皮膚科と義肢装具士、どちらに相談すればいいですか?
A. 両方に相談するのが理想です。皮膚の病気そのものは皮膚科で治療し、原因がソケットの合い方にある場合は、義肢装具士に調整してもらいます。皮膚の治療だけでは、原因が残ってくり返すことがあります。
受診の目安
- 赤み、かゆみ、ブツブツが2週間以上続く
- 水ぶくれ、傷、ジュクジュクがある
- しこりができた、腫れて痛む
- 赤みが広がり、熱をもって腫れる、発熱がある(感染の可能性があり、早めに受診)
- 皮膚のトラブルのために、義肢を着けられない日がある
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「かぶれ(接触皮膚炎)」(確認日: 2026-10-23)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「粉瘤」(確認日: 2026-10-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

