「庭仕事で、さびた釘を踏んでしまった」「畑で転んで、ひざに土が入った」「犬にかまれた」。傷そのものは小さくても、「破傷風は大丈夫だろうか」と気になる方は多いと思います。破傷風は、予防接種と傷の手当てで発症のリスクを下げられる病気です。どんなケガで受診すればよいかを知っておきましょう。
破傷風とは(仕組み)
破傷風は、土の中にふつうにいる破傷風菌が傷口から入り、菌が出す毒素が神経に作用して起こる病気です。人から人にはうつりません。
破傷風菌は、空気(酸素)の少ない場所で増える性質があります。そのため、浅く広いすり傷よりも、細く深い刺し傷や、泥や異物が入りこんだ傷のほうが注意が必要です。「さびた釘」がよく例に出されるのは、さびそのものが原因なのではなく、土に触れていた釘が深く刺さりやすいためです。
菌が入ってから症状が出るまでは、数日から3週間ほどとされています。ケガをしたことを忘れたころに症状が出ることもあります。
症状・見分け
破傷風の症状は、傷の周りではなく、全身の筋肉に出ます。最初に気づきやすいのは次のような変化です。
- 口が開けにくい、あごがこわばる
- 飲み込みにくい、話しにくい
- 首や背中がこわばる
進むと、全身の筋肉がつっぱり、けいれんを起こすことがあります。ケガのあとにこれらの症状が出たら、ためらわずに救急車(119)を呼んでください。
ケガをしたときに「受診して予防を考えたほうがよい傷か」は、次の表が目安になります。
| 傷の種類 | 破傷風の注意度 | 理由 |
|---|---|---|
| 台所での浅い切り傷、きれいな傷 | 低め | 土に触れておらず、洗えばきれいになる |
| 道路や校庭で転んだすり傷 | 中くらい | 砂や土が入りやすい。しっかり洗えるかがポイント |
| 釘・木の枝・トゲなどの深い刺し傷 | 高め | 奥まで洗えず、空気が届きにくい |
| 畑・庭・泥の中でのケガ | 高め | 土の中の菌が入りやすい |
| 動物にかまれた傷 | 高め | 深い傷になりやすく、ほかの細菌感染も起こりやすい |
| やけどの傷が汚れた | 中〜高め | 皮膚のバリアが広く失われている |
治療・セルフケア
ケガをしたら、まず水道水でしっかり洗い流すことが大切です。土や砂が残っていると、破傷風に限らず細菌感染の原因になります。流水で数分かけて、見える汚れがなくなるまで洗ってください。消毒液をたくさん使うことよりも、よく洗うことのほうが効果があります。
医療機関では、傷を洗浄し、残った異物や傷んだ組織を取り除きます。そのうえで、傷の汚れ具合と、これまでの予防接種の状況をもとに、次のような対応を考えます。
- 破傷風トキソイド(予防接種): 体に破傷風への抵抗力をつけるワクチン。最後の接種から時間がたっている方、接種歴が分からない方に行います
- 抗破傷風ヒト免疫グロブリン: 毒素をすぐに中和するための注射。汚れのひどい傷で、予防接種を十分に受けていない場合に検討します
予防接種は発症や重症化のリスクを下げるもので、傷の手当てとあわせて行うことで意味があります。
子どもの頃に定期接種(いまの4種混合・5種混合などに含まれます)を受けていても、効果は年月とともに弱まるため、10年ごとの追加接種がすすめられています。また、1968年より前に生まれた方は、定期接種を受けていない可能性があるとされています。畑仕事や庭いじり、アウトドアをよくする方は、ケガをする前に追加接種を相談しておくと安心です。
受診の目安
次のようなケガは、その日のうちに医療機関で相談してください。
- 釘・トゲ・枝などが深く刺さった
- 土や泥、砂が傷の中に入りこみ、洗っても取りきれない
- 動物(犬・猫など)にかまれた、ひっかかれて深い傷になった
- 最後の破傷風の予防接種から10年以上たっている、または分からない
- 傷が赤く腫れてきた、膿が出てきた
次の場合は、救急車(119)を呼ぶか、迷うときは救急安心センター(#7119)に相談してください。
- ケガのあとに、口が開けにくい、飲み込みにくい、首や背中がこわばる
- 体がつっぱる、けいれんが起きた
- 出血が止まらない、傷が大きく深い
診察室でよく聞かれる質問
小さなすり傷でも、予防接種を受けたほうがいいですか?
きれいに洗えた浅いすり傷であれば、ふつうは必要ありません。ただし、最後の予防接種から長い年月がたっている方は、この機会に追加接種を検討してもよいと思います。
母子手帳が見当たらず、子どもの頃に打ったか分かりません。
分からない場合は、受けていない可能性も考えて対応します。受診のときに「接種歴が分からない」と伝えてください。
ケガをしてから数日たっていますが、今からでも意味がありますか?
症状が出る前であれば、予防接種などの対応を考える意味があります。傷が汚れていた場合は、日にちがたっていても相談してください。
傷はふさいでおいたほうがいいですか?
しっかり洗ったあとは、傷を乾かさずに保護するほうがきれいに治りやすくなります。ただし、深い刺し傷や汚れの残る傷を自分でぴったりふさぐと、中で菌が増えやすくなることがあるため、そうした傷は先に受診してください。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-19)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

