「子どもの頬に、小さいけれど妙に硬いしこりがある」「痛がらないけれど、だんだん大きくなっている気がする」——診察室でよく聞く相談です。硬いと聞くと不安になりますが、石灰化上皮腫は良性のできもので、その日のうちに何とかしなければならない病気ではありません。まず、何ができているのかを知っておくと判断がしやすくなります。
石灰化上皮腫(毛母腫)とは
石灰化上皮腫は、毛穴の奥で毛をつくっている毛母細胞(もうぼさいぼう)という細胞から生じるできものです。「毛母腫(もうぼしゅ)」とも呼ばれます。
しこりの中では、細胞が硬い角のような成分に変わったあと、カルシウムが沈着して固まります。「石灰化」という名前はここから来ています。触ったときに小石や軟骨のように感じるのは、この変化のためです。やわらかい脂肪のかたまりとは、手ざわりがはっきり違います。
できる年齢には幅がありますが、10代までの子どもと、20〜30代に多く見られます。場所は顔・首・腕・肩が中心です。原因ははっきり分かっておらず、食生活やスキンケアのせいでできるものではありません。「ぶつけた後にできた」と言われることがありますが、多くはぶつけたときに初めて触って気づいたという順番です。
症状と、似たできものとの見分け
典型的なのは、直径5ミリから2センチほどの、硬く境界のはっきりしたしこりです。皮膚の色は変わらないこともあれば、青みがかって透けて見えることもあります。押しても痛みがないのが普通ですが、大きくなると上の皮膚が薄くなり、赤みや軽い痛みが出ることがあります。
| できもの | 手ざわり | 多い年齢・場所 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|---|
| 石灰化上皮腫 | 石のように硬い。角ばって感じることも | 子ども〜30代・顔、首、腕 | 中身が石灰化。皮膚に黒い点(開口部)はない |
| 粉瘤(アテローム) | 弾力のある硬さ | 成人・顔、背中、耳のまわり | 中央に黒い点。押すと臭いのある内容が出ることがある |
| 脂肪腫 | やわらかく、ぶよぶよする | 中年以降・背中、肩、腕 | 境界がぼんやりして、押すと逃げるように動く |
| リンパ節のはれ | ゴムのような弾力 | 全年齢・首、わき、脚のつけ根 | かぜや傷のあとに出て、数日〜数週で変化する |
見分けの手がかりは硬さと年齢です。子どもの顔にできた硬いしこりであれば、まず石灰化上皮腫を考えます。逆に、大人の背中にできたやわらかいしこりで石灰化上皮腫であることは多くありません。ただし手ざわりだけで確定はできないため、診察では拡大して観察したり、必要に応じて超音波で深さと中身を確認したりします。しこり全般の考え方は(関連記事: 皮膚の下のしこりの種類)もあわせてご覧ください。
放っておくとどうなるか
- 自然には消えません。中身が石灰化した固形物なので、体に吸収されにくいためです
- ゆっくり大きくなることが多く、年単位で少しずつ育ちます
- 大きくなると上の皮膚が薄くなり、赤く腫れたり、皮膚が破れて硬い内容が出てきたりすることがあります
- 悪性に変わることは、まれと考えられています。過度に心配する必要はありません
急いで手術しなければならないものではありませんが、小さいうちに取ったほうが、切る範囲も傷あとも小さく済みます。「様子を見る」も選べますが、待っている間に小さくなることは期待できない、という点は知っておいてください。
治療は手術。よく聞かれること
塗り薬や飲み薬で小さくすることはできません。石灰化した固形の塊なので、薬が効く対象ではないからです。治療は、局所麻酔をしてしこりを包む部分ごと取り出す手術になります。上の皮膚とくっついていることがあるため、その部分の皮膚を一緒に小さく切除して縫うことがあります。
- 痛みはどうか — 痛みを感じるのは麻酔の注射のときが中心で、効いた後の処置中はほとんど感じないのが一般的です
- 傷あとは残るか — 皮膚を切る以上、線状の跡は残ります。時間とともに目立ちにくくなることが多い一方、体質や部位により赤みや盛り上がりが続くことがあります
- 学校・保育園はどうするか — 多くは翌日から通えます。プールや激しい運動は、傷が落ち着くまで指示に従ってください。傷が動くと治りが遅れ、跡が広がりやすくなるためです
- 小さい子どもでもできるか — 年齢・場所・じっとしていられるかによります。局所麻酔での処置が難しい場合は、全身麻酔で対応できる病院へご紹介する形になります
- 保険は使えるか — 診断と治療を目的とした切除なので、保険診療の対象となる治療です
受診・相談の目安
- 硬いしこりが数か月のうちに大きくなってきた
- 赤み・痛み・熱っぽさが出てきた
- 皮膚が薄くなって破れそう、または内容が出てきた
- 短期間で急に大きくなった、出血する、色が変わってきた
- 診断がはっきりせず、何のできものか確かめたい
赤みが広がって発熱を伴うときは、感染を起こしている可能性があるため早めに受診してください。夜間・休日で判断に迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 粉瘤(確認日: 2026-09-11)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-11)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

