医療機関でピアスを開ける利点は、位置や体質の確認、清潔な施術、トラブル時の治療まで相談できることです。特に軟骨やへそ、金属アレルギー・ケロイドが心配な方は、開ける前の相談が大切です。
「自分で開けて腫れてしまった」「軟骨に開けたいけれど痛みが不安」「金属アレルギーがあるかもしれない」——ピアスは、穴を開ける瞬間だけでなく、その後のケアや生活との相性まで考えておきたいものです。
ここでは、医療機関で開ける利点と、部位ごとの注意点を整理します。
医療機関で開けるとき、何が違うのか
医療機関では、穴を開ける処置だけでなく、開ける前の確認からトラブルへの対応まで相談できます。
- 位置決め
耳たぶの厚みや形、左右のバランス、耳の縁からの距離などを確認します。将来ピアスを増やしたい場合も、最初に伝えておきましょう。 - 清潔な環境と器具
滅菌された器具やファーストピアスを適切に扱い、感染のリスクを減らします。 - 体質や皮膚の状態の確認
金属アレルギー、ケロイドの既往、開けたい場所の湿疹などを確認します。体質や状態によっては、開けるのを延期したり、見送ったりすることもあります。 - 部位に合った方法と、トラブル時の対応
軟骨などでは、位置や角度、ピアスの形状も重要です。開けた後に腫れや膿、しこりが生じた場合は、原因を診断して治療につなげられます。
ただし、医療機関で開けても、感染や金属アレルギーなどのリスクがゼロになるわけではありません。対応している部位や施術方法、アフターケアについて、事前に確認しておくことが大切です。
ピアッサーとニードルの違い
| 見る点 | ピアッサー | ニードル |
|---|---|---|
| 仕組み | 専用の器具でピアスの軸を皮膚に通す | 鋭い針で通り道を作り、ピアスを通す |
| 組織への作用 | ピアスの軸で組織を押し広げる | 針先で組織を切り開く。一般的なニードルは、皮膚を丸く切り抜く器具ではない |
| 主に使われる部位 | 耳たぶ | 耳たぶのほか、軟骨などにも用いられる |
| 位置・角度の調整 | 器具の形による制約がある | 部位の形に合わせて調整しやすい |
| 注意点 | 耳たぶ用の器具を、軟骨などに転用しない | 適切な知識・技術と、滅菌された使い捨ての針が必要 |
大切なのは、器具の名前だけで安全性を判断しないことです。開ける部位に合った方法、清潔な操作、適切なファーストピアスがそろっているかを確認しましょう。
特に、耳たぶ用のピアッサーを耳の軟骨に使うことは避けてください。
部位ごとの難しさと、治るまでの目安
「赤みや痛みが引く時期」「最初のピアス交換を検討できる時期」「穴が十分に丈夫になる時期」は、同じではありません。
耳たぶでは、順調であれば6〜8週間前後で最初の交換を検討できます。ただし、見た目が落ち着いていても内部は傷つきやすく、交換できることと、外したまま過ごせることは別です。
| 部位 | 一般的な治癒期間の目安 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 耳たぶ | 6〜8週間以上 | 比較的治りやすいが、耳たぶの厚さや炎症の有無によって長引く。交換後も外したままにしない |
| 耳の軟骨 | 6〜9か月以上 | 耳たぶより治るのに時間がかかる。圧迫や引っかかり、感染に注意する |
| へそ | 6〜9か月以上 | 衣服やベルトとの摩擦、姿勢による圧迫が治癒に影響する |
| 口の周り・舌 | 舌は6〜8週間以上、唇は2〜3か月以上が目安 | 歯や歯ぐきを傷めることがある。舌の強い腫れは、飲み込みや呼吸に影響することもある |
| 鼻・眉など | 部位によって数か月以上。鼻翼は3〜4か月以上が目安 | 開ける場所による違いが大きい。目立つ場所に跡が残る可能性も考えて決める |
いずれも目安であり、その期間が過ぎれば必ず治っているわけではありません。軟骨やへそでは、さらに長い期間が必要になることもあります。
最初の交換は、経過した日数だけでなく、赤み・痛み・腫れ・分泌物がないかを確認して判断します。腫れに合わせた軸の長さの調整など、治癒途中の交換が必要な場合は、自分で行わず施術した医療機関に相談してください。
ファーストピアスの素材選び
ファーストピアスは、治りかけの傷に長く接するものです。デザインだけでなく、素材・品質・形状を確認しましょう。
- 素材
金属アレルギーが心配な方では、品質が確認できるチタン製などを検討します。「チタン製」「サージカルステンレス製」という表示だけで、アレルギーが起こらないと保証されるわけではありません。 - ニッケルやメッキへの注意
ニッケルは、金属アレルギーの原因になりやすい金属です。素材の分からない合金や、表面のメッキが剝がれるものは、開けたばかりの穴には適しません。 - 軸の長さとキャッチ
短すぎると、腫れたときにピアスが皮膚に埋まり込むことがあります。腫れる余地は必要ですが、長すぎても引っかかりやすいため、部位に合ったサイズを選びます。キャッチを皮膚に押しつけすぎないことも大切です。 - 装飾
重いものや、衣服・髪に引っかかりやすいデザインは、十分に治るまで避けましょう。
ネックレスや時計、ベルトの金具などでかぶれた経験がある方は、開ける前に伝えてください。必要に応じて、パッチテストなどで原因を調べることもあります。
開けた後にやってはいけないこと
耳たぶやへそなど、皮膚に開けたピアスのケアは、やさしい洗浄が基本です。低刺激の石けんと流水、または洗浄用の滅菌生理食塩水などで清潔にし、洗った後は清潔なガーゼなどで水分をそっと取り除きます。口の中のピアスはケアが異なるため、個別の指示に従ってください。
- 早い時期に外す、頻繁に付け替える
穴が狭くなったり、内部を傷つけたりする原因になります。 - むやみに回す、動かす
癒着を防ぐために回す必要はありません。無理に動かすと、治りかけの組織を傷つけます。 - 強い消毒や、洗いすぎを続ける
アルコールなどによる刺激で、かぶれたり治癒が遅れたりすることがあります。医師から指示がある場合を除き、消毒液を使う必要はありません。 - 汚れた手で触る、しこりや膿を自分でつぶす
感染や炎症を悪化させ、傷跡につながることがあります。 - 圧迫や摩擦を繰り返す
ピアスを開けた側を下にして寝る、ヘッドホンを強く当てる、衣服に引っかけるといった刺激に注意しましょう。治癒途中の穴をプール・海・温泉などの水に浸すことも避けてください。
費用の考え方
おしゃれを目的とするピアスの穴あけは、公的医療保険の対象外となる自由診療です。費用は、部位・本数・使用するファーストピアス・麻酔の有無などによって異なります。
表示されている料金に、診察料、ファーストピアス代、麻酔代、施術後の診察が含まれるかを確認しておくと安心です。
主なリスクには、出血、感染、腫れ、金属アレルギー、しこりやケロイド、位置のずれ、皮膚の裂けなどがあります。ケロイドができた経験のある方は、耳たぶであっても慎重な判断が必要です。
受診の目安
次のような場合は、皮膚科などの医療機関に相談してください。
- 赤みや腫れ、熱感が強くなり、痛みが増している。
- 膿が出る、赤みが周囲に広がる、発熱や悪寒がある。
- ピアスやキャッチが皮膚に埋まり込んでいる。
- 穴の周りのしこりが大きくなってきた。
- ピアスを着けるとかゆみやじくじくが出る。
特に、耳の軟骨に強い痛み・赤み・腫れ・熱感が出ている場合は、数週間様子を見るのではなく、できるだけ当日中に受診してください。
舌や口の中が急に腫れ、息苦しい、唾液を飲み込めないといった症状がある場合は、救急受診が必要です。
腫れたり膿んだりしたとき、ピアスを外すべきかどうかは、感染・埋まり込み・アレルギーなどの状態によって判断します。自分で無理に引き抜かず、医療機関に相談しましょう。
よくある質問
Q.学校や仕事の間だけ外して、帰宅後に着け直してもいいですか?
開けたばかりの時期にはおすすめできません。数時間でも穴が狭くなり、着け直すたびに内部を傷つけることがあります。
「休みの間に開けて、学校や仕事が始まったら日中だけ外す」という計画では、十分に治る前に着脱を繰り返すことになりがちです。一定期間は着け続けられる時期を選びましょう。透明ピアスへの交換も、早い時期なら問題ないというわけではありません。
Q.近いうちにMRI検査を受ける予定があります。先に開けても大丈夫ですか?
これから開けるのであれば、検査が終わってからにする方が無理のない選択です。MRI検査では、ピアスを外すよう求められます。
すでに開けている場合は、予約時に「開けたばかりであること」「外せるかどうか」を伝えてください。「チタンだから着けたままで大丈夫」と自己判断せず、検査施設の指示に従いましょう。
Q.以前の穴が塞がりました。同じ場所に開け直せますか?
開け直せる場合はありますが、穴が狭くなっているだけなのか、完全に閉じているのか、しこりや傷跡が残っているのかによって対応が異なります。
無理にピアスを押し込んだり、自分で針を通したりせず、まず状態を確認してもらいましょう。前回、強い炎症やケロイドができた場合は、単に開け直すのではなく、その原因や再発のリスクを考えることが大切です。
Q.ピアスを開けた後は、献血できますか?
日本赤十字社では、耳たぶなどに医療機関や使い捨ての器具で開けた場合でも、最低1か月間は献血を控える扱いです。器具を共用して開けた場合などは、6か月間の制限があります。
また、口唇・口腔・鼻腔などの粘膜を貫通するピアスは、装着中も献血できません。外した後も、開けてからの制限期間に加え、取り外し後の待機期間があります。開けた方法や部位、炎症の有無を伝え、献血前に日本赤十字社へ確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。皮膚の病気や治療中の症状がある場合は、個別に医師へご相談ください。
関連ページ
参考文献・参考情報
- American Academy of Dermatology. Caring for new piercings.
初期の装着期間、洗浄、感染やケロイドへの注意について。(アメリカ皮膚科学会) - Association of Professional Piercers. Procedure Manual, 2013 Edition, p.27:Piercing Healing Times.
部位別の治癒期間の目安について。(セーフピアシング) - Association of Professional Piercers. Suggested Aftercare for Body Piercings/Jewelry for Initial Piercings.
治癒途中の着脱、圧迫・摩擦、素材やサイズの選び方について。(セーフピアシング) - Government of Western Australia, Department of Health. Using ear and nose piercing guns.
ピアッサーの使用部位と、耳たぶ用器具を軟骨などに転用しないことについて。(ベントレー健康サービス) - NHS. Infected piercings/Mayo Clinic. Piercings: How to prevent complications.
感染の症状、受診の必要性、口腔ピアスなどの合併症について。(nhs.uk) - 日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「かぶれ」Q13・Q15、「ケロイド」Q10.
金属アレルギーとニッケル、ケロイドができやすい方の注意点について。(公益社団法人日本皮膚科学会) - 国立病院機構 東京病院.放射線診療センター「MRI検査」.
検査時のピアスなどの取り扱いについて。(東京病院) - 日本赤十字社.献血について「よくあるご質問:ピアスをしている場合、献血は可能ですか」.
穴あけ後や、粘膜を貫通するピアスの献血制限について。(jrc.or.jp)

