「重いピアスを付けていたら穴が下に伸びてきた」「引っかけて耳たぶが真っ二つに裂けた」「裂けた部分がそのままくっつかない」——ピアスのトラブルのなかでも、耳たぶの裂け(裂傷)と伸び(拡大)は相談の多いものです。見た目の問題であると同時に、放っておくと元に戻しにくくなるという時間の問題でもあります。
なぜ伸びる・裂けるのか
耳たぶには軟骨がなく、やわらかい脂肪と皮膚でできています。支えが少ないぶん、穴に持続的に力がかかると、その方向へ少しずつ形が変わっていきます。
- 重いピアスの長期使用 — 下向きに引っ張られ続け、穴が涙のしずく型に伸びていきます
- 穴の位置が耳たぶの縁に近い — 縁までの皮膚が薄いほど、裂けるまでの距離が短くなります
- 引っかけ事故 — 髪をとかす、服の脱ぎ着、寝返り、子どもに引っぱられる。これがいちばん多い原因です
- 炎症を繰り返した穴 — 内側の皮膚が薄くもろくなり、裂けやすくなります
伸びの段階では痛みがないため、気づいたときにはかなり進んでいることが少なくありません。
段階別に、何ができるか
| 状態 | 見分け方 | 対応 |
|---|---|---|
| 伸びてきた(拡大) | 穴が縦長になっているが、縁まではつながっている | ピアスを軽量・小さいものに替え、期間を空ける。これ以上進ませないことが目的 |
| 切れかけ | 穴と耳たぶの縁の間の皮膚が、糸のように薄くなっている | そのピアス穴の使用は中止。形を整える手術の相談を |
| 完全に裂けた(裂傷) | 耳たぶが縁まで割れ、2つに分かれている | 手術でしか元に戻らない |
| 裂けた直後(受傷当日) | 出血している、痛みがある | その日のうちに受診。新鮮な傷はそのまま縫える場合がある |
「切れかけ」と「完全に裂けた」で対応が変わるのは、皮膚の縁が上皮化しているかどうかが理由です。裂けてから時間が経つと、割れた断面それぞれが皮膚で覆われて完成してしまいます。皮膚同士は、押し当てても互いにくっつきません。絆創膏でとめても戻らないのはこのためで、だからこそ縁を新しく切り直す必要があります。
手術: 縁を切り直して縫い合わせる
局所麻酔で行う短時間の処置です。裂けた両側の縁を細く切除して新しい傷の面を作り、丁寧に縫い合わせます。単純に直線で縫うと、治る過程で縁がへこんで切れ込み(ノッチ)が残ることがあるため、縫い方を工夫して段差を作らないようにします。
- 麻酔 — 局所麻酔。注射のときの痛みが中心で、処置中の痛みはほとんどありません
- 抜糸 — おおむね1週間前後が目安です
- 傷あと — 細い線として残ります。時間とともに目立たなくなっていきますが、完全に消えるわけではありません
- ピアスの開け直し — 同時にはできません。傷がしっかり固まるまで数か月は空けます。急いで開けると、同じところからまた裂けます
耳たぶの裂傷を修復する手術は、けがや変形を治す目的であれば保険診療の対象となることが一般的です。一方、穴を小さくしたい・形を整えたいという美容目的の場合は自由診療となることがあります。どちらに当たるかは症状と目的によって変わるため、診察時にご確認ください。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 裂けた直後、どうすればいい? | 清潔なガーゼで押さえて止血し、当日中に受診 | 新鮮な傷は縁を切らずに縫えることがあり、仕上がりで有利なため |
| ピアスを外せば伸びは戻る? | 多少は戻るが、元通りにはならない | 皮膚が伸びて定着しているため。進行を止める効果は十分ある |
| 裂けたところにしこりがある | 肉芽やケロイドの可能性。診察を | しこりの種類で治療が変わるため(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕とは) |
| 手術後、また同じ場所に開けられる? | 数か月あけてから、位置をずらして | 傷あとの真上は組織が弱く、再び裂けやすいため |
| 両耳とも裂けている | 同時に行えることが多い | 片側ずつ行う理由が特にないため。ただし術後は両耳とも触れないよう注意 |
| 放っておくと悪くなる? | 裂けた状態自体は急がない | 命に関わるものではない。ただし赤み・膿・痛みがあるときは別で、早めの受診を |
再び裂けないために
- 重いピアスは短時間に — 日常的に着けるものは軽いスタッドを基本にします
- 寝るときは外す — 寝具への引っかけは、本人が気づかないうちに毎晩力がかかります
- 穴の位置は縁から十分離す — 開け直すときは位置を見直す機会です
- 赤み・膿を繰り返す穴は使わない — 炎症のたびに組織がもろくなります(関連記事: ピアスホールが安定するまでのケア)
受診の目安
- 耳たぶが完全に裂けた — 特に受傷当日は、その日のうちの受診が仕上がりを左右します
- 穴と縁の間が糸のように薄い — 裂ける前に相談してください
- 赤く腫れて痛む、膿が出る、熱を持っている — 感染の可能性があります。早めに受診してください
- 金属に触れると必ずかゆくなる — 金属アレルギーの検査を含めた相談ができます
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイドと肥厚性瘢痕(確認日: 2026-09-12)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-12)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

