「数日前に畑仕事をしてから、急に熱が出て、手足に赤いブツブツが出てきた」「かぜだと思っていたら発疹が広がってきた」。日本紅斑熱は、初めはかぜのように見えるため見過ごされやすい病気です。けれども治療が遅れると重くなることがあり、早く気づくことで治療につなげられます。
日本紅斑熱とは(仕組み)
日本紅斑熱は、リケッチアという小さな細菌をもったマダニに刺されて起こる感染症です。マダニは山林や草むら、畑のあぜ道などにいて、人の皮膚に食いつくと数日間かけて血を吸います。その間に細菌が体の中に入ります。
人から人にはうつりません。マダニが活発になる春から秋にかけて多く、国内では西日本の太平洋側を中心に報告されていますが、関東を含む広い地域で報告があります。「この地域にはない」と決めつけずに考えることが大切です。
刺されてから症状が出るまでは、数日から1週間ほどとされています。
症状・見分け
日本紅斑熱では、次の3つがそろうことが特徴です。
- 高い熱: 急に38〜40℃前後の熱が出て、寒気やだるさ、頭痛を伴う
- 発疹: 熱と同じころから、手足や体に赤い発疹が出る。手のひらや足の裏にも出やすい。かゆみは少ないことが多い
- 刺し口: マダニに刺された場所に、黒いかさぶたのような跡(刺し口)が残る
刺し口は数ミリ〜1センチほどで、痛みもかゆみもないことが多く、本人が気づいていないこともよくあります。わきの下、足の付け根、ひざの裏、腰回り、髪の中など、やわらかく見えにくい場所にできやすいため、家族に見てもらうと見つかることがあります。
マダニやダニが運ぶ病気には、ほかにもつつが虫病やライム病があります。いずれも診断には医療機関での診察と検査が必要ですが、違いの目安は次のとおりです。
| 見るポイント | 日本紅斑熱 | つつが虫病 | ライム病 |
|---|---|---|---|
| 運ぶ虫 | マダニ | ツツガムシ(ダニの幼虫) | マダニ |
| 多い時期 | 春〜秋 | 秋〜初冬、地域によって春 | 春〜夏 |
| 熱 | 急に高い熱が出る | 高い熱が出る | 微熱程度のことが多い |
| 皮膚の症状 | 手足を中心に赤い発疹。手のひら・足の裏にも出やすい | 体を中心に赤い発疹 | 刺された場所から赤い輪が広がる |
| 刺し口 | 黒いかさぶたのような跡 | 黒いかさぶたのような跡。やや大きめのことが多い | 中心に刺し口、周りに輪状の赤み |
治療・セルフケア
日本紅斑熱は、テトラサイクリン系と呼ばれる抗菌薬で治療します。熱が高い、全身の状態が悪い場合は、入院して点滴で治療することもあります。治療が遅れるほど重くなりやすいため、疑わしい段階で治療を始めることがあります。検査の結果が出るまで待たずに薬を始めるのは、そのためです。
かぜ薬や解熱剤で様子を見るだけでは、この病気は治りません。熱が続くときは「山や畑に行った」「虫に刺されたかもしれない」と医師に伝えることが、診断の大きな手がかりになります。
予防には、マダニに刺されないことが一番です。
- 肌を出さない: 長袖・長ズボン、ズボンのすそを靴下や長靴に入れる
- 虫よけを使う: マダニに効果のある成分の虫よけを、肌と服に使う
- 帰ったらすぐに入浴し、全身を確かめる: 付いて間もないマダニを見つけられることがあるため
- 付いているマダニを無理に引き抜かない: 口の部分が皮膚に残りやすいため、皮膚科で取り除いてもらう
受診の目安
山林・草むら・畑・河川敷などに入ってから2週間以内に、次のような症状が出たら、その日のうちに受診してください。
- 38℃以上の熱が出た
- 熱と一緒に、手足や体に赤い発疹が出てきた
- 体のどこかに、黒いかさぶたのような跡がある
- マダニが体に付いているのを見つけた
次の場合は、急いで救急外来を受診するか、救急車(119)を呼んでください。夜間や休日で迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
- 意識がぼんやりする、受け答えがおかしい
- 息苦しい、ぐったりして動けない
- 尿の量が極端に少ない
- 皮膚に紫色の内出血のような斑点が広がる
診察室でよく聞かれる質問
マダニに刺された覚えがないのですが、日本紅斑熱の可能性はありますか?
あります。マダニに刺されても痛みやかゆみがほとんどないため、刺されたことに気づかない方が多いです。刺された覚えがなくても、屋外での作業や山歩きのあとに熱と発疹が出たら、そのことを伝えてください。
家の庭や近所の草むらでもかかりますか?
マダニは山の中だけでなく、草の多い場所や、野生動物が通る場所にもいます。庭の草取り、畑仕事、ペットの散歩のあとも、体を確かめる習慣をつけておくと安心です。
一度かかれば、もうかかりませんか?
くり返しかかることもあるとされています。治ったあとも、屋外での予防は続けてください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ダニ類による感染症(確認日: 2026-10-19)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 虫さされ(確認日: 2026-10-19)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

