「薬を続けているけれど、生え際がこれ以上戻らない」「植毛ってどのくらい自然になるの?」。自毛植毛は、日本皮膚科学会のガイドラインでも、男性型脱毛症の治療の選択肢の一つとして位置づけられています。どんな人に向き、どんなことに注意が必要かを整理します。
自毛植毛とは(仕組み)
男性型脱毛症(AGA)では、頭頂部や生え際の毛が男性ホルモンの影響を受けて、毛の成長する期間が短くなり、細く短い毛になっていきます。一方、後頭部や側頭部の毛は、この影響を受けにくい性質を持っています。
自毛植毛では、この後頭部の毛を毛根ごと採取して薄い部分に移します。移した毛は後頭部の性質を保つため、移植先でも抜けにくいと考えられています。
採取の方法には、後頭部の皮膚を帯状に切り取って株に分ける方法(FUT)と、毛根を一つずつくり抜く方法(FUE)があります。前者は線状の傷あとが残り、後者は小さな点状の傷あとが散らばります。
向いている人・向いていない人(見分け)
| 状態 | 植毛との相性 |
|---|---|
| 薬の治療で進行が落ち着き、生え際や頭頂部の一部を補いたい | 向いていることが多い |
| 後頭部の毛が十分にある | 移せる毛の量が確保しやすい |
| まだ若く、薄毛が進行中で薬の治療をしていない | 植毛後も周りの毛が抜け、不自然になりやすい。まず薬の治療 |
| 円形脱毛症など、免疫が関わる脱毛 | 向いていない。まず病気の治療 |
| 頭全体が均一に薄い(女性に多いタイプ) | 移す毛の確保が難しいことがあり、慎重に判断 |
なお、人工の毛を植える「人工毛植毛」は、感染や炎症などのトラブルが多いことから、ガイドラインでは勧められていません。
治療の流れ・術後の経過・リスク
手術は局所麻酔で行い、移す本数によって時間がかかります。術後の経過として、多くの方が経験するのは次のような流れです。
- 術後数日: 腫れ、かさぶた、軽い痛み。額のむくみが出ることもある
- 術後1〜3か月ごろ: 移した毛がいったん抜ける(毛根は残っている)
- その後: 新しい毛が少しずつ伸び始め、変化を実感するまでには半年〜1年ほどかかるとされています
主なリスクは、感染、傷あと、移植部の毛の生え方のばらつき、周りの毛が一時的に抜けること、採取部のしびれなどです。
費用は自由診療で、移す本数によって数十万円から百万円を超えることもあるのが目安とされています。医療機関ごとに大きく異なるため、総額と追加の費用を確認してください。
※自毛植毛は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。
薬の治療との組み合わせ・受診の目安
植毛で移した毛は抜けにくい一方、もともと生えている周りの毛は、その後もAGAの影響を受けて細くなっていきます。そのため、植毛の後も飲み薬(フィナステリド・デュタステリド)や、ミノキシジルの塗り薬を続けることが一般的です。なお、フィナステリドとデュタステリドは女性には使用できません。
次のような場合は、まず皮膚科で薄毛の原因を確かめてください。
- 急に抜け毛が増えた、まだら状に抜けている(円形脱毛症など別の病気の可能性)
- 頭皮にかゆみ・赤み・フケが多い
- 女性で、全体的に髪のボリュームが減ってきた
- 薬の治療を始める前に、自分の薄毛のタイプを知りたい
診察室でよく聞かれる質問
植毛すれば、もう薬はやめられますか?
移した毛は抜けにくいとされますが、周りの毛は薄毛が進みます。全体の見た目を保つには、薬を続けることが勧められます。
植毛した毛は、白髪にはなりますか?
移した毛は自分の毛なので、年齢とともに白髪になることもあり、伸びればカットも必要です。
何歳から受けられますか?
若いうちは薄毛がこれからどこまで進むか予測しにくく、植毛の範囲を決めにくい面があります。まず薬で進行を抑え、状態が落ち着いてから検討するのが一般的です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-16)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 脱毛症(確認日: 2026-10-16)
- 日本美容外科学会(JSAPS)(確認日: 2026-10-16)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

