「生え際が少しずつ後ろに下がってきた」「頭皮の一部がツルツルになり、毛穴が見えなくなった」「抜けたところがかゆい・ヒリヒリする」。脱毛症の多くは毛根が残っていて、治療で毛が戻る可能性があります。一方で、瘢痕性脱毛症は性質が違い、気づくのが遅れるほど不利になる脱毛症です。見分け方と治療の考え方を整理します。
瘢痕性脱毛症とは(仕組み)
髪の毛は、毛根の中にある「毛をつくる元になる細胞(幹細胞)」が働くことで、抜けてもまた生えてきます。円形脱毛症やAGA(男性型脱毛症)では、この幹細胞は残っているため、毛が戻る可能性があります。
瘢痕性脱毛症では、毛根のまわりに炎症が起きて幹細胞そのものが壊され、その場所が傷あとのような組織に置きかわります。そのため、毛穴がなくなり、毛が生えてこなくなります。
原因によって、いくつかの種類があります。
- 毛孔性扁平苔癬・前頭部線維化脱毛症: 毛穴のまわりの炎症で起こります。前頭部線維化脱毛症は、生え際が帯状に少しずつ後退していき、眉毛が薄くなることもあります。中高年の女性に多いとされています
- 円板状エリテマトーデス: 膠原病の一種で、頭皮に赤くうろこ状の斑ができ、そこが脱毛します
- 禿髪性毛包炎・解離性毛包炎: 膿をもったブツブツやしこりをくり返しながら脱毛が広がります
- ほかの原因: やけど・けが・放射線治療、強い牽引(きつい髪型)を長く続けたことによるものもあります
症状・見分け方
| ポイント | 瘢痕性脱毛症 | 円形脱毛症・AGAなど |
|---|---|---|
| 抜けた部分の頭皮 | ツルツルして光沢がある。毛穴が見えない | 毛穴が残っている |
| 境目 | 毛穴のまわりの赤み・皮むけ・膿をもったブツブツ | 赤みは少ない(円形脱毛症ではほぼない) |
| 自覚症状 | かゆみ・ヒリヒリ・痛みを伴うことがある | 症状がないことが多い |
| 経過 | ゆっくり、または少しずつ広がる。戻りにくい | 円形脱毛症は自然に生えることも。AGAはゆっくり進む |
初期には、通常の抜け毛や加齢による生え際の変化と区別がつきにくいことがあります。皮膚科では、ダーモスコピー(拡大鏡)で毛穴が残っているか、毛穴のまわりに炎症があるかを確かめ、必要に応じて頭皮の一部を取って顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行います。
治療
治療の目標は、炎症を抑えて、脱毛がこれ以上広がらないようにすることです。すでに瘢痕になった部分の毛を薬で生やすことは難しいため、まだ毛が残っている境目の炎症を止めることに力を入れます。
- 塗り薬: ステロイドの塗り薬・ローションで、頭皮の炎症を抑えます
- 局所注射: 炎症のある境目にステロイドを注射することがあります
- 飲み薬: 種類や広がり方によって、炎症を抑える飲み薬を組み合わせることがあります。病気によっては、その一部が適応外使用(その病気に対して国の承認を受けていない使い方)になるため、使う場合は理由とリスクの説明を受けたうえで決めます
- 感染の治療: 膿をもったブツブツをくり返すタイプでは、細菌への治療を合わせて行います
炎症が落ち着いて広がりが止まったあとは、残った脱毛の範囲によって、髪型やウィッグでのカバー、医療機関によっては植毛を検討することもあります。
治療は長く続けることが多く、効果は「生えてきた」ではなく「広がっていない」で判断します。写真で経過を記録しておくと、変化が分かりやすくなります。
受診の目安
- 脱毛した部分の頭皮がツルツルして、毛穴が見えない
- 抜けている部分の境目が赤い、かゆい、ヒリヒリする
- 生え際が少しずつ後退し、眉毛も薄くなってきた
- 頭皮に膿をもったブツブツやしこりをくり返す
- 円形脱毛症として治療しているが、毛が生えてこない
診察室でよく聞かれる質問
抜けた毛は、もう生えてこないのですか?
すでに瘢痕になった部分は、毛が戻りにくいのが現状です。ただし、境目にはまだ毛根が残っていることがあり、早く炎症を抑えれば、残っている毛を守ることができます。
うつる病気ですか?
瘢痕性脱毛症は、人にうつる病気ではありません。
受診前にやっておくといいことはありますか?
同じ明るさ・同じ角度で、生え際や脱毛部分の写真を撮っておいてください。いつから・どのくらいの速さで広がったかが、診断と治療の効果判定に役立ちます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 脱毛症(確認日: 2026-10-07)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-07)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

