「前にもらった抗生物質が残っているので飲んでいいですか」「よくなったから途中でやめました」——診察室で毎日のように出てくる話です。抗菌薬は皮膚科でもよく使う薬ですが、使いどころが限られていて、使い方を間違えると損をする薬でもあります。ここを分けて理解しておくと、受診したときの説明が腑に落ちます。
まず: 皮膚の感染には3種類ある
皮膚に入り込んで悪さをするものは、細菌・ウイルス・カビ(真菌)の3つに大きく分かれます。それぞれ効く薬がまったく違います。
| 原因 | 代表的な病気 | 抗菌薬(抗生物質) | 使う薬 |
|---|---|---|---|
| 細菌 | とびひ、毛のう炎・おでき、蜂窩織炎、ひょう疽 | 効く | 抗菌薬の飲み薬・塗り薬 |
| ウイルス | ヘルペス、帯状疱疹、みずぼうそう、イボ、水いぼ | 効かない | 抗ウイルス薬、処置 |
| カビ(真菌) | 水虫、たむし、カンジダ、癜風 | 効かない | 抗真菌薬 |
| 感染ではない | 湿疹、かぶれ、じんましん、乾癬 | 効かない | ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬など |
「赤く腫れている=抗生物質」ではありません。かぶれもじんましんも赤く腫れます。抗菌薬を出さなかった診察は、手を抜いたのではなく「細菌ではないと判断した」ということです。
飲みきる理由
抗菌薬を飲むと、弱い菌から先に倒れます。そのため症状は2〜3日で目に見えて軽くなります。しかし、この時点で残っているのは「比較的しぶとい菌」です。ここでやめると、残った菌が再び増えて症状がぶり返します。
さらに、中途半端な量の薬にさらされた菌は、その薬に耐える性質を身につけやすくなります。次に同じ感染を起こしたとき、以前は効いた薬が効かない——これが耐性菌の問題です。「飲みきる」は、自分の次の治療を守る行為でもあります。
塗り薬と飲み薬の使い分け
- 塗り薬で足りる場面 — 範囲がごく狭いとびひ、浅い毛のう炎など。局所で済むなら、体全体に薬を巡らせる必要はありません
- 飲み薬が要る場面 — 範囲が広い、発熱を伴う、深いところまで炎症が及んでいる(蜂窩織炎など)、糖尿病など感染が広がりやすい条件がある場合(関連記事: 蜂窩織炎)
- 市販の化膿止め軟膏だけで粘らない — 3日ほど使って改善しないなら受診してください。細菌ではない病気を、感染として扱っている可能性があります
- 残った薬を飲まない — 前回と原因菌が同じとは限らず、量も日数も足りません。中途半端な服用は耐性菌を育てる典型例です
「抗菌薬が効かない」ときに考えること
指示どおり飲んでも2〜3日で改善しない場合、次のどれかを考えます。薬が弱いから、とは限りません。
- そもそも細菌ではなかった — 湿疹やかぶれ、痛風や虫刺されの反応だった
- その菌に効きにくい薬だった — 必要に応じて培養検査で菌と効く薬を調べます
- 膿がたまっている — 袋の中に膿がたまっている場合、薬だけでは届きません。切開して出す処置が要ります(関連記事: 粉瘤が腫れて痛いとき)
- 薬疹が重なった — 治りかけに全身へ発疹が広がったときは、薬そのものへの反応を疑います(関連記事: 薬疹)
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 飲み忘れた。2回分まとめて飲む? | まとめない。気づいた時点で1回分を | まとめ飲みは副作用だけが強まり、効果は上がらないため |
| お酒を飲んでいい? | 薬による。処方時に確認を | 薬によっては強い悪心・動悸を起こす組み合わせがあるため |
| 下痢をしてきた | 続けてよいか相談を。自己判断で止めない | 腸内の菌のバランスが崩れて起こる下痢が多い一方、まれに重い腸炎もあるため |
| ヨーグルトや整腸剤は飲んでいい? | 併用してよいことが多い | 処方で整腸剤が一緒に出ることもあります。念のため薬剤師に伝えてください |
| 子どもが薬を嫌がって飲めない | 剤形を変えられます。相談を | 粉・シロップ・味の違いで飲めることが多く、途中でやめるより確実だからです |
受診の目安
- すぐに受診・救急要請 — 服用後に息苦しさ・唇や顔の腫れ・全身のじんましん・ぐったりする。薬に対する全身の反応が疑われます(迷うときは#7119)
- すぐに受診 — 赤みが時間単位で広がる/強い痛み/高熱/患部が黒ずむ
- 早めに受診 — 飲み始めて3日たっても改善しない/いったん良くなったのに再燃した
- 受診 — 飲み始めてから全身に発疹が出た、粘膜(口・目・陰部)にも症状が出た。この場合は自己判断で飲み続けないでください
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A とびひ(確認日: 2026-09-14)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

