「田植えや草取りのあと、すねがチクチクしてきた」「子どもが池で遊んだ翌日、足にブツブツがたくさん出た」。水に入った部分だけに出るのが大きな手がかりです。名前に「寄生虫」と聞くと驚かれるかもしれませんが、正体を知れば落ち着いて対処できます。
水田皮膚炎とは(仕組み)
カモなどの水鳥に寄生する住血吸虫という寄生虫は、卵が水の中でかえり、小さな巻き貝の体の中で育ったあと、セルカリアと呼ばれる目に見えないほど小さな幼虫になって水中に出てきます。セルカリアは本来、鳥の皮膚に入りこんで成長します。
ところが、水に入った人の皮膚にも間違って入りこむことがあります。人の体の中では育つことができず、皮膚の中で死んでしまいます。このとき、体がその幼虫に反応して、かゆみと赤いブツブツが出るのです。
田んぼ・用水路・池・湖など、貝と水鳥がいる淡水で起こりやすく、田植えや草取りの時期(春〜初夏)、水遊びの季節に多くみられます。農作業で水に入る機会が多い方では、毎年のようにくり返すこともあります。
症状・見分け
水に入っている最中や上がった直後にチクチク・ピリピリした感じがし、数時間後から赤い小さなブツブツが出てきます。かゆみは翌日〜2日目ごろにもっとも強くなり、その後1〜2週間で落ち着いていきます。くり返しかかるたびに、反応が強くなる傾向があります。
| 見るところ | 水田皮膚炎 | 虫刺され(ブヨ・蚊など) | かぶれ(農薬・植物) |
|---|---|---|---|
| 出る場所 | 水に浸かっていた部分だけ(すね・足・手・腕) | 服から出ている部分。数か所 | 触れた部分 |
| 出るまで | 数時間 | すぐ〜翌日 | 数時間〜2日 |
| 見た目 | 小さな赤いブツブツが多数 | 1つずつ大きめに腫れる | 赤み・ブツブツ・水ぶくれが面で広がる |
| 水との関係 | 淡水に入ったあと | 関係なし | 作業内容による |
胸や背中など、水に浸かっていない場所に広がる場合や、熱が出る場合は、ほかの原因を考えます。
治療・セルフケア
体の中に寄生虫が残るわけではないので、駆虫薬(虫下し)は必要ありません。治療は、かゆみと炎症をおさえることです。
- ステロイドの塗り薬: 炎症とかゆみをおさえる基本の治療。ブツブツが多い場合は、市販品より強さの合ったものを処方します
- かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬): かゆみで眠れないときに併用する
- 冷やす: 保冷剤をタオルで包んで当てると、かゆみが一時的に和らぐ
大切なのは、かき壊さないことです。理由は、かき壊した傷から細菌が入り、とびひや化膿の原因になったり、色素沈着が残ったりするためです。爪を短く切っておくのも役立ちます。
予防としては、次のことが知られています。
- 田んぼや池に入るときは、長靴・胴長・長手袋で皮膚を水に直接触れさせない
- 水から上がったら、すぐにタオルでしっかり拭き取る(幼虫は水が乾く前に皮膚に入るといわれる)
- 作業のあとは、きれいな水で洗い流す
受診の目安
- かゆみが強く、市販の塗り薬で良くならない
- ブツブツが広い範囲に出ている、眠れないほどかゆい
- かき壊した場所がジクジクする、膿が出る、赤く腫れて痛い
- 2週間以上たっても治らない、水に入っていない場所にも広がってきた
診察室でよく聞かれる質問
家族や周りの人にうつりますか?
うつりません。皮膚に入った幼虫は皮膚の中で死んでしまうため、ほかの人に移ることはありません。同じ水に入った人が同じ症状になることはあります。
お風呂に入ってもいいですか?
入って大丈夫です。ただ、熱いお湯や長湯は、かゆみを強くします。ぬるめのお湯で短めにし、上がったら薬を塗ってください。
毎年なるのですが、防ぐ方法はありますか?
皮膚を水に直接触れさせない装備が、もっとも確実な方法です。くり返すほど反応が強くなることがあるため、作業の前に装備を見直しておくことをおすすめします。症状が出たら、早めに塗り薬を使うとかき壊しを防げます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 虫さされ(確認日: 2026-10-10)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-10)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

