「ピアスホールの横に赤い玉ができた」「触ると出血する」「消毒しているのに小さくならない」——ピアスのトラブルのなかで、腫れや膿と並んで多いのがこの肉芽(にくげ)です。悪いものではありませんが、放っておいて自然に消えることは少なく、原因を取り除かないと居座り続けるという性質があります。
肉芽とは: 治ろうとする反応が行きすぎた状態
皮膚は傷つくと、修復のために新しい血管と細胞のかたまりを作ります。これは本来治るための正しい反応です。ところが、傷口に刺激が加わり続けると、この修復の反応が止まるタイミングを失い、赤くもり上がったかたまりとして残ります。これが肉芽です。
ピアス穴で肉芽ができやすい理由ははっきりしています。穴の中にずっと異物(ピアス)が入っており、かつ動き続けているからです。
- ピアスの軸が短く、腫れた皮膚に食い込んでいる — もっとも多い原因です
- キャッチの締めすぎ — 前後から挟まれて血のめぐりが悪くなります
- 頻繁に着け外しする・寝るときに引っかける — 傷が固まる暇がありません
- 金属アレルギー — 慢性の炎症が続きます
- 消毒のしすぎ — アルコールや消毒薬は、細菌だけでなく治ろうとしている細胞も傷めます
肉芽・ケロイド・感染の見分け
| 肉芽 | ケロイド・肥厚性瘢痕 | 細菌感染 | |
|---|---|---|---|
| 見た目 | 赤く、つやがあり、ぶよぶよ | 硬く、皮膚色〜赤褐色、盛り上がる | 赤く腫れ、熱を持つ |
| 出るもの | 触るとにじむような出血 | 基本的に出ない | 黄色い膿 |
| 痛み | あまりない(触ると痛い程度) | ちくちく・かゆみを伴うことがある | ずきずきと痛む |
| できる時期 | 穴を開けて数週〜数か月 | 数か月〜年単位で徐々に大きくなる | 急に、1〜数日で |
| 硬さ | やわらかい | 硬い | やわらかく波打つ(膿) |
| 対応 | 刺激を止める+外用 | 注射・圧迫・手術を検討 | 抗菌薬。ピアスを外すか判断が必要 |
この3つは治療の方向がまったく違います。特にケロイドは「大きくなり続けるかどうか」が肉芽との分かれ目で、耳の軟骨部(耳の上のほう)に開けた穴で起こりやすい傾向があります(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕とは)。硬いしこりが月単位で育っているなら、肉芽の対処では足りません。
治療: 順番がある
① 刺激を取り除く——これが最優先です。多くの肉芽は、原因が続いている限り何を塗っても改善しません。
- 軸が長く、太さの合ったピアスに替える — 腫れを逃がすためのゆとりが必要です
- キャッチをきつく締めない — 前後に少し余裕がある状態にします
- 素材を見直す — サージカルステンレス、チタンなど、アレルギーの起きにくいものへ
- 触らない・回さない — 「動かして癒着を防ぐ」は不要です。動かすほど治りません
- 消毒薬をやめ、洗浄に切り替える — シャワーで石けんを泡立てて流す程度で十分です。消毒薬は治りかけの組織を壊し、かえって肉芽を育てます
② 外用薬・圧迫——刺激を取り除いても残る場合、ステロイドの外用薬で炎症を抑える方法があります。小さくなるまで数週間かかることがあります。平らな金属板などで軽く押さえる圧迫を併用することもあります。
③ 処置——大きい、繰り返す、出血が続くといった場合は、液体窒素による凍結、電気メスやレーザーでの切除、ステロイドの局所注射などが選択肢になります。いずれも原因となる刺激を止めたうえで行わないと、同じ場所に再びできます。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| ピアスは外すべき? | 肉芽だけなら、外さずサイズを替えるほうがよいことが多い | 外すと穴が閉じかけ、再び入れるときに同じ傷をつけるため。ただし感染を伴うときは外す判断になることがある |
| 糸で縛って取れると聞いた | やらないでください | 途中で壊死・感染し、より大きな傷と肉芽になるため。出血も止めにくい |
| 市販の傷薬を塗っていい? | 効果は期待しにくい | 肉芽は感染ではなく増えすぎた組織。抗菌成分では小さくならないため |
| プール・温泉は? | 治るまでは避けるのが無難 | 表面がむき出しで出血しやすく、雑菌が入りやすいため |
| 小さくなるまでどのくらい? | 刺激を止めてから数週間が目安 | 変化が乏しければ別の診断(ケロイド等)を考える時期 |
| また開け直したい | 完全に落ち着いてから、位置をずらして | 同じ場所は組織が変化しており、繰り返しやすいため |
受診の目安
- 2〜3週間セルフケアをしても小さくならない
- 硬いしこりが月単位で大きくなっている — ケロイドの可能性を考えます
- 黄色い膿が出る、ずきずき痛む、熱を持つ — 感染です。早めに受診してください
- 耳の軟骨部が赤く腫れて痛い — 軟骨の感染は広がると形が変わることがあるため、早めの受診をおすすめします
- 発熱を伴う、腫れが顔や首へ広がる — その日のうちに受診してください。夜間・休日で迷うときは救急安心センター(#7119)が利用できます
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイドと肥厚性瘢痕(確認日: 2026-09-12)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-12)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

