いんきんたむし(股部白癬)とは?股のかゆみの原因・治療と、市販薬で悪化させないための注意点

いんきんたむし(股部白癬)とは?股のかゆみの原因・治療と、市販薬で悪化させないための注意点
DERMATOLOGY GUIDE | GENERAL DERMATOLOGY
更新日: 2026年10月14日執筆: あび皮膚科クリニック編集部監修: アマデアル亜琵医師(日本専門医機構認定 皮膚科専門医)医師紹介

いんきんたむしは、水虫と同じ仲間の白癬菌が股の皮膚に感染する病気です。かゆみを伴う赤みが輪のように広がりますが、湿疹などとの区別には検査が大切です。抗真菌薬で治療し、自己判断でのステロイド使用は避けましょう。

「股の付け根がかゆい」「赤い部分が少しずつ広がっている」「かゆみ止めを塗っても繰り返す」

こうした症状の原因のひとつが、いんきんたむしです。医学的には「股部白癬(こぶはくせん)」と呼びます。

ただし、股や陰部のかゆみがすべて白癬というわけではありません。湿疹やかぶれ、カンジダ症などでも似た症状が出るため、見た目だけで判断して薬を使い続けると、かえって治りにくくなることがあります。

相談しにくい場所だからこそ、自己流の対処を長引かせず、原因を確かめることが大切です。

目次

いんきんたむしとは?

いんきんたむしは、白癬菌というカビの一種が、股の付け根や太ももの内側などの皮膚に感染して起こる病気です。菌は主に、皮膚の最も外側にある角層で増えます。

同じ白癬でも、足にできれば足白癬(水虫)、爪にできれば爪白癬、股以外の体の皮膚にできれば体部白癬と呼ばれます。

男性に多い病気ですが、女性にも起こります。「男性だけの病気」「不潔にしている人だけの病気」ではありません。

自分の足の水虫が感染源になることがあります

股部白癬では、自分の足の水虫から菌が運ばれて感染するケースが多いと考えられています。足に触れた手やタオルなどを介して、別の場所に菌が広がることがあります。

一方で、感染した人との皮膚の接触や、タオル・衣類などの共用が関係する場合もあり、すべてが自分の足からうつったものとは限りません。

汗や蒸れ、皮膚どうしの摩擦が生じやすい股は、感染が成立しやすい環境です。汗をかいた衣類を着続ける、締め付けの強い下着を使うといった状況にも注意が必要です。

どんな症状が出る?湿疹などとの違い

典型的には、股の付け根にかゆみを伴う赤い発疹が現れ、太ももの内側などへ広がります。

特徴は、広がっていく外側の縁で赤みや盛り上がり、細かな皮むけが目立ち、中央は少し落ち着いて見えることです。そのため、輪や弧を描くような形になります。

片側から始まることもありますが、両側に出ることもあります。また、ステロイドなどの影響で、典型的な輪の形が分かりにくくなる場合もあります。

陰嚢、いわゆる睾丸を包む袋の皮膚そのものは、通常の股部白癬では比較的侵されにくい部位です。陰嚢を中心にかゆみや赤みがある場合には、湿疹やカンジダ症なども考えます。ただし、部位だけで白癬を完全に否定できるわけではありません。

股のかゆみを起こす主な病気

病気 よくみられる症状 診断の手がかり
股部白癬(いんきんたむし) 縁に赤みや皮むけがある発疹が、輪状・弧状に広がる 患部の皮膚を採取し、顕微鏡で菌を確認する
皮膚カンジダ症 湿った赤みやただれがあり、周囲に小さな赤い発疹や膿をもった発疹が散らばる 陰嚢や外陰部にも起こり、顕微鏡検査などで確認する
湿疹・接触皮膚炎(かぶれ) かゆみ、赤み、カサつき、場合によってはジュクジュクする 洗浄剤、塗り薬、下着、ナプキンなどとの関連を確認する
間擦疹 皮膚がこすれ合う部分に赤みやヒリヒリ感が出る 蒸れや摩擦との関連があり、感染が重なることもある
紅色陰癬(こうしょくいんせん) 股の付け根などに赤褐色〜茶色の斑が広がる。かゆみが軽いこともある 細菌による感染症。特殊な光を当てる検査が役立つことがある
逆性乾癬 皮膚のしわに、境界のはっきりしたつやのある赤みが出る 頭皮やほかの部位の発疹、爪の変化なども確認する
ケジラミ症 陰毛のある部分を中心に強いかゆみが出る 毛に付着した虫や卵を確認する

これらは見分けるための手がかりであり、表だけで自己診断するためのものではありません。同じ場所に複数の原因が重なっていることもあります。

診断は、皮膚を少量採って顕微鏡で確認します

白癬が疑われる場合には、発疹の縁などから表面の皮膚を少量採取し、顕微鏡で菌の有無を調べます。これを「KOH直接鏡検」といいます。

通常は皮膚を深く切る検査ではなく、早ければ数分で結果が分かります。見た目が似ている湿疹と白癬では治療が異なるため、この確認が重要です。

症状や経過によっては、再検査や、菌を育てて調べる真菌培養を追加することもあります。

受診時には、これまで使った市販薬や処方薬の名前、塗っていた期間を伝えてください。薬の現物やパッケージの写真があると、診断や治療を考えるうえで役立ちます。

市販薬で悪化させないために知っておきたいこと

ステロイドは白癬菌を退治する薬ではありません

市販のかゆみ止めや湿疹の薬には、ステロイドが含まれるものがあります。

白癬にステロイドを自己判断で塗ると、かゆみや赤みが一時的に軽くなっても、菌が増えて病変が広がることがあります。さらに、発疹の形が変わり、白癬と分かりにくくなることもあります。このような状態は「異型白癬」と呼ばれます。

「塗ると少し楽になるのに、範囲は広がっている」という経過は、治療の見直しが必要なサインです。

ステロイド自体が悪い薬なのではなく、白癬なのか湿疹なのかを確かめずに使い続けることが問題です。

「いんきんたむしに効く薬」でも、陰部のどこにでも使えるわけではありません

市販の抗真菌薬にも、股部白癬に有効なものがあります。ただし、製品によって使える部位や注意事項が異なります。

効能に「いんきんたむし」と書かれていても、陰嚢・外陰部・粘膜などへの使用が禁止されている製品があります。「股の付け根の皮膚」と「性器や粘膜」は、同じように扱えません。

症状がある場所に使ってよいか分からない場合や、湿疹との区別がつかない場合は、購入前に医師や薬剤師へ相談してください。

治療は抗真菌薬の塗り薬が基本です

股部白癬と確認できたら、白癬菌に作用する抗真菌薬で治療します。多くは塗り薬が基本です。

赤い部分だけでなく、その周囲にも塗ります

薬は、目に見える発疹だけでなく、その周囲も含めて塗ります。かゆい場所にだけ点々と塗るのではなく、診察で確認した範囲に薄く均一に広げることが大切です。

塗る回数や範囲は、処方や製品の指示に従ってください。たくさん塗ったり、回数を増やしたりすれば早く治るわけではありません。

かゆみがなくなっても、自己判断で終了しないことが大切です

治療期間は薬や症状によって異なりますが、一般的には数週間、目安として2〜4週間程度の外用が行われます。状態によって、より長い治療が必要になることもあります。

かゆみや赤みが先に軽くなっても、治療が完了したとは限りません。医師に指示された期間、または製品に定められた期間は継続しましょう。

一方で、決められた治療を続けても改善しない場合に、同じ薬を漫然と塗り続けるのは適切ではありません。診断や薬によるかぶれ、塗り方などを見直します。

広範囲の場合や繰り返す場合は、飲み薬を検討します

病変が広い、塗り薬を十分に使うことが難しい、再発を繰り返すといった場合には、抗真菌薬の内服を検討します。

飲み薬には、肝機能への影響やほかの薬との飲み合わせに注意が必要なものがあります。持病や内服薬を確認し、必要な血液検査を行いながら治療します。

足や爪に水虫があれば、そちらも治療します

股だけがよくなっても、足や爪に白癬が残っていれば、再び感染する原因になり得ます。

足の皮むけ、指の間のふやけ、爪の白濁や厚みなどがある場合は、股とあわせて診察を受けましょう。爪白癬では、皮膚の白癬とは治療方法や期間が異なります。

日常生活では「蒸れを減らす・こすらない・共用しない」

治療中は、薬に加えて、皮膚の環境を整えることも大切です。

  • 汗をかいた下着や運動着は早めに着替え、締め付けが少なく通気性のよいものを選びます。
  • 患部はやさしく洗い、こすらずに水分を拭き取ります。足などの白癬がある部分を拭いたタオルで、ほかの部位を続けて拭かないようにします。
  • タオルや下着は共用せず、患部や水虫のある足に触れた後は手を洗います。バスマットや床なども清潔に保ちましょう。

強く洗ったり、皮膚をこすって剥がしたりして菌を落とそうとする必要はありません。皮膚に刺激を与えず、処方された治療を続けることを優先してください。

皮膚科を受診したほうがよいタイミング

初めての症状で原因が分からない場合は、市販薬を試す前の受診がおすすめです。特に、次のような場合は自己判断での治療を長引かせないようにしましょう。

  • 市販薬を2週間程度使っても改善しない、または塗り始めてから悪化・拡大した場合。
  • 陰嚢や外陰部を中心に症状がある、ただれが強い、何度も繰り返す場合。
  • 糖尿病がある、免疫を抑える治療を受けている、発疹が広い範囲に及んでいる場合。

なお、強い痛み、急な腫れ、発熱、赤みの急速な拡大がある場合は、白癬だけでは説明できない感染症なども考える必要があります。市販薬で様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。

あび皮膚科クリニックは2027年につくば市での開業を予定しており、開業後は股部白癬をはじめとする皮膚感染症の診療に対応する予定です。

よくある質問

Q.いんきんたむしは性病ですか?パートナーにうつりますか?

股部白癬と診断されたからといって、性行為で感染したとは限りません。自分の足の水虫から感染することも多く、診断だけで感染経路を決めつけることはできません。

ただし、患部との直接の皮膚接触でうつる可能性があるため、性行為も感染の機会になります。治療中は患部が相手の皮膚に直接触れる行為を避け、再開の目安を医師に確認してください。コンドームで覆われない部分も接触するため、コンドームだけでは感染を防ぎきれません。

Q.家族と洗濯を分けたり、下着を捨てたりする必要はありますか?

一般的な家庭での対策としては、衣類やタオルを通常どおり洗濯し、十分に乾かすことが基本です。衣類を捨てたり、洗濯機を別にしたりする必要はありません。

気を付けたいのは、洗っていないタオルや下着を共用することです。洗濯物を過度に心配するより、治療をきちんと行い、使用済みのものを使い回さないようにしましょう。

Q.治療後に茶色い跡が残っています。まだ菌がいるのでしょうか?

白癬による炎症が落ち着いた後も、炎症後色素沈着として茶色い跡が残ることがあります。色が残っているだけで、菌が残っているとは限りません。

一方で、発疹の縁に赤みや皮むけが続く、範囲が広がるといった場合には、感染が続いている可能性も考えます。黒ずみが消えるまで薬を塗り続けるのではなく、診察や必要に応じた検査で、治療を終えてよいか確認しましょう。

関連ページ

参考文献・参考情報

  • 1.日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会.皮膚真菌症診療ガイドライン2025.日本皮膚科学会雑誌.2025;135(13):2511–2566.股部白癬の診断、抗真菌薬による外用・内服治療などを参照。(公益社団法人日本皮膚科学会)
  • 2.日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「白癬(水虫・たむしなど)」Q7、Q30.白癬の検査、股部白癬の症状と感染源を参照。(公益社団法人日本皮膚科学会)
  • 3.日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「白癬(水虫・たむしなど)」Q19、Q21.抗真菌薬によるかぶれ、市販薬と処方薬の違いを参照。(公益社団法人日本皮膚科学会)
  • 4.日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「白癬(水虫・たむしなど)」Q27.家庭内での洗濯・清掃などの対策を参照。(公益社団法人日本皮膚科学会)
  • 5.米国疾病予防管理センター(CDC).Treatment of Ringworm/Ringworm Prevention.治療期間、ステロイドへの注意、接触による感染の予防を参照。(CDC)
  • 6.米国皮膚科学会(AAD).Ringworm: 12 tips for getting the best results from treatment.治療の継続、ほかの部位の白癬の同時治療、タオルや日常ケアについて参照。(皮膚科アカデミー)
  • 7.英国Primary Care Dermatology Society.Tinea corporis, cruris and incognito/Intertrigo.異型白癬、間擦疹、カンジダ症、逆性乾癬などの鑑別を参照。(Primary Care Dermatology Society)
  • 8.英国Primary Care Dermatology Society.Erythrasma/Genital conditions – an overview.紅色陰癬および陰部の皮膚疾患の鑑別を参照。(Primary Care Dermatology Society)
  • 9.医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載「ラミシールATクリーム」添付文書.市販抗真菌薬の使用できない部位、副作用、受診・相談の目安の一例として参照。実際の使用時は、手元の製品の説明書を確認してください。(pmda.go.jp)

本記事は一般的な情報をまとめたものであり、個別の診断に代わるものではありません。症状や治療については、医療機関でご相談ください。

アマデアル亜琵医師(日本専門医機構認定 皮膚科専門医)

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